PEファンドの仕組みを解説【ビジネスモデルから収益・キャリーまで】

今回はプライベートエクイティファンド(PEファンド)の基本的なビジネスモデル・収益モデルについてお伝えします。
外資系投資銀行やコンサルティングファームのプロフェッショナルの転職先として非常に人気が高い職種ではありますが、実際にどのような業務やビジネスモデルなのかはやや分かりづらいという声をお聞きします。今回は、順を追って説明・解説します。
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PEファンドのビジネス概論
PEファンドとは、主に未上場企業に対し投資を行い3年から5年の投資期間で企業価値の向上(バリューアップ)を行い、その後ファンドにとってのリターンが十分に取れると判断されるほどに業績や財政状態、ビジネスが安定してきた場合は、第三者に売却(トレードセール)、ないしは株式公開(IPO)により投資の回収、すなわちエグジットを行います。
日本では1990年台後半からいくつかのファンド(アドバンテージパートナーズ、MKSパートナーズ・ユニゾンキャピタル)などが表舞台に出てきましたが、米国では1980年台以降からKKRやブラックストーン、カーライル、アポロなどのメインプレーヤーが出現し、大規模な企業買収の舞台で活躍していたという歴史があります。
KKRによるRJRナビスコの買収はLBOを使用した買収としては過去最大規模として非常に有名です。
PEファンドは、未上場企業(プライベートカンパニー)に対して投資をするわけですが、このような株式市場に上場していない企業でなくても、現在上場している企業を非公開化させ、再度上場させるというストーリーで投資する事も多いです。他にも大企業のグループのセグメントで不採算事業やノンコア事業を切り離す際に、その受け皿としてPEファンドが必要とされるケースが非常に多いです。
近年では経営者の高齢化による事業承継や、業績悪化によるスポンサー募集や非公開化の検討等様々なニーズがあり、スモールからミッドキャップと言われるファンドが活躍する事が多くなっています。
PEファンドが企業に投資する際はこのような投資対象を多く認識する事から始まりますが、基本的にはPEファンドが独自で動くというよりも投資銀行やM&A仲介業者、会計事務所系のアドバイザリーファームが、売り案件をPEファンドに紹介する事が多いです。
実際に投資するに見合う案件とファンド側が判断する場合に、相対で交渉、もしくはオークション形式の案件であれば複数の買い手候補のファンドや事業会社と競って対象企業を買収する事になります。
なお、後述しますが買収時はPEファンドが全額株式で出資するのではなく、LBOローン(LBO: Leveraged Buyout)を組んで借り入れと資本(エクイティ)の両建てで買収する事が多いです。
日本では間接金融が発達しているので、LBOローンの出し手であるメガバンクや地方銀行もLBOファイナンスチームを設けています。
資金をどのようにして集めるか
ここでは、PEファンドがどのように資金を集めているかについて書いていきます。PEファンドが資金を集める際は、Limited Partner(LP)という機関投資家や個人富裕層など、資金の出し手の存在が重要になります。
そのためPEファンドの第一義的な責任は、LP投資家に対してリターンを分配金として還元する事になります。
LP投資家には、政府系の金融機関・年金基金・保険会社・大学基金など様々なものがいますが、基本的にはPEファンドというオルタナティブ投資の商品に対して高いリターンを実現する事を期待しています。そのためPEファンドではIRR20 %、MOIC2倍という高い水準のリターン目標が課されています。
また、もう一つ大事な主体がプレースメントエージェント(Placement Agent)です。プレースメントエージェントは、PEファンドがファンドレイジング(ファンドの募集)を行う際に、効率的に資金募集を行えるようにする仲介役の存在で、PEファンドではLP投資家およびプレースメントエージェントと良好な関係を築きリターンを還元できるようにする事が中長期的なビジネス成功のカギになります。
集めた資金をどのように運用するか
実際にPEファンドが集めた資金を運用する際は、株式や債券トレーダーのように、短期的な値上がり益等を狙うのではなく、未上場株式ですので企業価値の向上を3から5年という中長期で実現させ、リターンを稼ぐ事で運用しています。
リターンの測定指標は後述するように内部収益率(IRR)と、キャッシュマルチプル(MOIC:Money on Invested Capital)になりますが、端的に言えば、投資後にファンドが投資先の企業に入っていき業績改善や、企業規模拡大を実現できるような追加的な買収により売上高とEBITDAの拡大、そして業績改善に伴う潤沢なキャッシュフロー創出によりLBOローンの返済をしてリターン向上を目指すのがPEファンドの基本的なビジネスモデル・資金運用方法です。このように純粋に上場株式のポートフォリオを組んで投資する資産運用会社に比べると企業内部に入り込んでいく点でコンサルティングファーム的な要素もある事も事実です。
実際に投資した後は、継続的なビジネスモデルの改善およびパフォーマンス(ここでは業績)の向上にコミットする事になりますので、財務的な面で問題を洗い出しファンドとしてリターンを上げられるような収益性・キャッシュフロー創出能力の高いような優良企業に仕上げていくための戦略を練ります。そのためPEファンドで働く投資プロフェッショナルの第一義的な責任は、投資後のバリューアップも大事ですが、リターンが出そうな投資先を見つけるための目利きが必要になります。
リターンをどのように分配するか
PEファンドのビジネスモデルでは、ファンドに出資してくださった投資家に対し分配を行います。分配は投資した資金を回収した後に、残余分を投資家に分配する段階を指します。
原則としてPEファンドはLP投資家から調達した資金を一定期間(大体10年)運用した後に投資家に還元します。ここで、PEファンドからLP投資家に分配される資金は、当該PEファンドが受領する一定のフィー(管理報酬等=マネジメントフィー等)を控除した後の金額です。
ここで、フィーについて簡単に説明しておくと、PEファンドが受領する報酬は管理報酬とキャリードインタレスト(俗に言う、キャリー)になります。管理報酬はマネジメントフィーとも呼ばれ、一般的にはファンドサイズの2%が目安になります。
キャリードインタレストとは、ファンドが一定のリターンのハードルレートを超えた場合に利益の一定割合(多くは20%ほど)を受領する事を言います。キャリー報酬は後ほど詳述します。
リターンはどのように測定するか
ファンドがリターン計算する際はどのように計算するのでしょうか。リターンを計算する際はPEファンドが出資した資本(Sponsor equityと言います)と、エグジット時の株式価値を基礎に内部収益率(IRR)とキャッシュマルチプル(MOIC)を計算し、それぞれハードルレートである20%、2xを超えていればその投資はリターンが出たと言えます。
キャッシュマルチプルはエグジット時の株式価値を、投資時点の株式価値(=Sponsor equity)で除した数値で計算される事になります。
このようなリターンの試算はPEファンドではLBOモデルという財務モデルで計算される事になり、投資対象会社の財務諸表の将来数値から計算される事になります。実際に投資する際は買収時に作成した財務モデルと、投資後の財務上のパフォーマンスを比較しモニタリングに役立てられます。
PEファンド(PEファンド)のキャリー報酬の計算について
キャリー報酬に関しては、ファンドの運用実績に応じたジェネラルパートナー(GP)が受領すべき部分を、GPの出資持分に基づく分配(「キャリードインタレスト」等と呼ばれる)と構成するのが通常であり、国内のPEファンドでも当該考えを採用するところが多いです。運用実績に応じて、超過する部分をキャリー報酬として受領する事になります。
キャリー報酬はファンドによりますが、アソシエイトから支給されるところもありますし、VPやディレクター以上でないと支給されないところもあります。
このような報酬形態の採用について、直接GPとしての分配を受領するのと同様に扱われる事となり、投資メンバーに投資活動に対するインセンティブを付与事できるというメリットがあります。
いくら分配されるかはファンドによって異なりますが、中には一生分に足りるほどの収入を得られるファンドもあるそうで、高額な年収を期待する人はキャリアを検討する価値があるでしょう。
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今回の記事では、PEファンドの基本的なビジネスモデル・収益モデルについてお伝えしました。
PEファンドへのキャリアをお考えの方は、ぜひアクシスコンサルティングにご相談ください。