【転職事例】フリーコンサルに転身後、ファーム復帰を経て、再び独立の道へ。会計×システムの専門性で切り開いたキャリアと働き方

【転職事例】フリーコンサルに転身後、ファーム復帰を経て、再び独立の道へ。会計×システムの専門性で切り開いたキャリアと働き方

今回は、会計業務とシステムの専門性を軸に、フリーランスと正社員の両方の立場でキャリアを築いてこられたN様のケースをご紹介します。

N様は大学卒業後、IT系ファームにてコンサルタントとしてキャリアをスタートします。連結会計のBPRプロジェクトを経験後、国内総合系ファームを経て、30代前半で独立を決断。総合商社のグローバル案件など大型プロジェクトで中核を担い、その後別の国内総合系ファームに転職。さらに、コロナを機に再度独立し、現在は完全リモートワークで九州在住のフリーコンサルタントとして活躍されています。

会計業務とシステムの両面での専門性を追求しながら、正社員とフリーランス、それぞれの立場でキャリアを選択してきた経緯や、地方在住×フルリモートという新しい働き方を実現できた理由について、今回キャリアをサポートしたアクシスコンサルティングの河東が伺いました。
※2024年12月時点での情報です

会計システムとERPへの関心から始まったコンサルタントへの道筋と会計領域でのキャリアの確立

河東
新卒から現在までコンサル業界で長年ご活躍されていますが、どのような思いを持ってこの業界に入られたのでしょうか。

N様
大学の就職活動時期、私が通っていた大学では大企業に就職するのが一般的でしたが、私は「これは違う」という思いを持ちました。特に専門性を身につけたいという思いがあり、当時の経済学部では公認会計士を目指す人が多かったため、その勉強を始めました。
会計士の勉強をする中で、電卓での簿記の計算が肌に合わないと感じていました。そんな時、会計事務所でアルバイトをする機会があり、そこで会計システムやERPの世界を知りました。この経験から、監査法人への就職ではなく、コンサル業界への入職を決意しました。

河東
新卒で入社されたIT系ファームでは、どのようなプロジェクトを経験されましたか。

N様
入社後BI導入など会計・経営管理領域のプロジェクトを経験しましたが、縁あって連結会計の分野に携わることになりました。たとえば、SIerと協働で、日本を代表する大手銀行の連結会計のBPR案件に参画しました。約3年にわたるプロジェクトで、システムサイドの立場から主計業務の改革に取り組みました。複数のコンサル会社が参画する大規模なプロジェクトでした。主にSIerの立場で、システム面からの業務改革を担当し、連結会計システムを活用した主計業務のBPRを推進しました。この経験を通じて、システムと業務の両面を理解することの重要性を実感し、その後のキャリアの基盤となりました。

顧客価値の追求とロールモデルの存在が後押しした独立への決断

河東
その後、国内総合系ファームに転職されましたが、どのようなプロジェクトを経験されましたか。

N様
ERPの導入の構想策定から要件定義までを担当するプロジェクト、ERPリプレース案件のPMOなどに携わりました。特に後者は1000人規模のプロジェクトの統合PMO業務という大規模なものでした。

河東
独立のきっかけについて教えていただけますか。

N様
在職中から、1社目の時から親しくしていた方から声をかけていただいていました。その方は独立してベンチャー企業を立ち上げており、総合商社の大型案件などの機会を提示してくださいました。
この方との出会いは、私のキャリアの転換点となりました。以前は同じように会社員をしていましたが、独立してベンチャーを立ち上げ、成功を収めていました。その姿を間近で見られたことが、独立という選択肢を現実的なものにしてくださいました。
30代前半という比較的若い年齢でしたが、具体的な仕事内容が見えていたことと、近くにロールモデルとなる独立コンサルタントがいたことが、大きな決断の後押しとなりました。

河東
転職ではなく独立を選択されたのは、どのような理由からでしょうか。

N様
やりたいことができそうだという思いがありました。フラットな関係で、社員という立場ではなく、独立したコンサルタントとして契約していただけるという、ありがたいオファーでした。
システムの要件定義から設計、実装まで一貫して携われる可能性があることが魅力でした。これは、前職で感じていた「実装フェーズまで関われない」というもどかしさを解消できる機会だと考えました。
また、フリーランスという働き方を選んだ背景には、顧客への貢献に集中したいという思いがありました。会社員として働く場合、会社の評価軸や上下関係を意識せざるを得ませんが、フリーランスであれば、純粋にお客さまへの価値提供に集中できると考えました。

顧客志向の徹底で続く案件依頼、グローバルプロジェクトでの中核的役割で信頼を確立

河東
独立された後の仕事内容や、キャリア観を伺っていければと思います。具体的なプロジェクトについて教えていただけますか。

N様
独立期間の半分以上を占める3年ほどは、総合商社でグローバル連結業績管理システムをスクラッチ開発するプロジェクトで中核を担う経験しました。
一般的には連結会計のパッケージを導入するところを、総合商社特有の複雑な要件があったため、スクラッチ開発を選択しました。要件を取りまとめ、システム設計を行い、開発者への仕様の伝達、お客さまとの綿密な議論、海外拠点との調整など、毎日何時間も議論を重ねました。特に海外拠点との仕様調整は、時差のある中での綿密なコミュニケーションが必要でした。

河東
そういった大規模プロジェクトを進める中で、苦労されたことはありましたか。

N様
苦労というほどの苦労は正直そんなになかったかもしれません。前職の国内総合系ファームでの経験もあり、システムを作るという点で、特に連結会計のパッケージではなくスクラッチ開発を選択したことで、非常にやりがいのある仕事でした。システム導入の生々しい部分を経験できたことは、その後のキャリアでも大きな強みとなりました。
ただ、このプロジェクトが非常に充実していただけに、「このプロジェクトが終わった後、次のステップはどうなるのか」という漠然とした不安は多少ありました。

河東
プロジェクトへの関わり方や、周りのメンバーとの関係構築について、フリーランスならではの苦労はありましたか。

N様
特にありませんでした。一生懸命お客さまのために尽くして成果を出すことが私にとっての喜びという部分が強いので、会社員として上との関係や下との関係に気を使うよりも純粋にデリバリーに集中できる環境の方が合っていました。
コンサルティングファームでは、スペシャリストパスとマネジメントパスがありますが、私は明らかにスペシャリストを志向していました。上に行けば行くほど、下のマネジメントをどうするかという課題が増えます。コンサルティングファームでは激しい競争もある中で、純粋にお客さまのために働くという部分が私の中で強かったため、独立してからの方が戸惑いは少なく、専門性の追求に集中できました。

河東
商社以外の案件はどのように獲得されていたのでしょうか。

N様
私が直接案件を獲得するわけではなく、声をかけていただいたり、知り合いを通じて紹介いただいたりすることが多かったです。現在お世話になっている経営会計系ファームとも、当時から関係があり、大手保険会社の案件に入らせていただきました。
当時はフリーランスのプラットホームもあまり一般的ではなく、知り合い経由でプロジェクトに入ることがほとんどでした。

河東
なぜ次々と案件の声がかかるのでしょうか。

N様
得意とする分野で強みを生かせたことにより、きちんと結果を出してきた点はあると思います。フリーランスだからといって与えられた仕事だけをこなすのではなく、積極的に能動的に関わってきました。多くの案件でプロジェクトの中核のポジションで関わらせていただきました。基本的にはそういった姿勢を続けてきた結果、お声がけいただける状況になったのだと思います。

河東
目の前のプロジェクトにプロフェッショナルとして確実に成果を出していく、その姿勢がポイントになっているということですね。

N様
そうですね。また、業務もシステムも分かるという点が強みになっていると思います。要件定義もして、システム設計・実装もするということは、みんながみんなできるわけではないということをこれまでの経験から感じています。

自己成長の機会を求めて再び国内総合系ファームへ、会計分野での専門性を生かせる環境を選択

河東
フリーランスから再び正社員として国内総合系ファームに入社された理由をお聞かせください。

N様
端的に言えば、もう1段階成長したいという思いが強くありました。フリーランスでは既存の経験の切り売りという側面が強く、未経験の人を育てることはまずありません。そういう意味で、自分の成長が止まってしまう側面があると感じていました。
当時はRPAやビッグデータなど新しい技術への関心も高まっていました。新たな外資ベンダーが日本に進出してきており、コンサルティングファームがベンダーと組んで新しいソリューションを展開する動きが活発化していました。

河東
企業選びの軸について教えていただけますか。

N様
コンサルティングファームという軸を重視しました。大手コンサルティングファームでは、最新のソリューションを含めて学べる環境が整っています。特に私が転職した国内総合系ファームは専門性を重視する組織になっており、それが私の希望と合致しました。

河東
転職後の具体的な仕事内容を教えていただけますか。

N様
基本的には上流の仕事が中心でした。会計チームに所属し、ERPのリプレースを含む財務経理改革プロジェクトや、RPA導入、BI導入、グローバル企業の連結経営基盤導入などに携わりました。海外拠点のグローバルメンバーとの協業も経験しました。
コンサルティングファームならではの特徴として、新しい技術やソリューションへのアクセスが容易でした。ベンダーとの関係も築きやすく最新の情報や製品の詳細を直接聞けました。これは独立していては得られない価値だと感じていました。

河東
フリーランスの経験はどのように生かされましたか。

N様
フリーランス時代の経験はどれも生きたと思います。特にシステム構築の現場と密接に関わってきた経験が強みとして生かせたと思います。

過去のフリーランス経験を生かした再独立、地方移住と仕事の両立への確信

河東
次のキャリアを考え始めた理由を教えていただけますか。

N様
コロナがきっかけでした。コロナ禍でリモートワークが進んでいく中で、価値観が大きく変化していきました。さらに、九州に住む親が体調を崩すという個人的な事情も重なりました。
所属していたファームは非常に好きな会社でしたが、思い切って退職し、九州に移住することを決意しました。ファームからはリモート勤務も提案されましたが、ワークライフバランスを考慮すると、その提案を受け入れることは難しいと判断しました。
独立を決断できた背景には、一度フリーランス経験があったことで「なんとかなる」という自信があったことと、自分の専門性への自信がありました。

河東
次の案件はどのように見つけたのでしょうか。

N様
特別な営業活動はせず、最初の独立時と同様に、知人に連絡を取りました。九州に移住することを伝えたところ、総合会計系ファームから連絡をいただき、完全リモートで対応可能な案件に参画することになりました。

コロナ禍で変化した働き方の価値観、収入よりもワークライフバランスを重視する選択

河東
現在のプロジェクトについて教えていただけますか。

N様
日本有数の大企業で、連結会計を軸としたシステム導入や保守を担当しています。その大企業のシステム子会社とお世話になっている総合会計系ファームを通じた契約形態で、長期的に関わらせていただいています。保守フェーズに入っていますが、新しいプロジェクトも立ち上がりつつあります。
完全リモートワークで業務を行っています。クライアントの社員の方々も多くの日はリモートワークで、管理職であってもほとんどリモートワークという方もいらっしゃいます。以前は対面でなければ効率が悪いと考えられていましたが、今では環境が整備され、むしろオフィスではモニターなどの環境も不十分で、周囲の話し声やオンライン会議の音が気になって集中できないという声も多く聞かれます。

河東
リモートワークでの仕事の進め方を教えていただけますか。

N様
基本的な仕事の進め方は出社と変わらない感覚です。打ち合わせはTeamsやZoomで行い、文面でのコミュニケーションはメールとチャット(Teams)を使いますがチャットの方が多用されています。少し話したい場合もTeamsで通話しています。

河東
収入面での変化はいかがでしょうか。

N様
今は個人契約ではなく契約社員という立場ということもあり前職と比べると収入は少々落ちました。ただし、極端な減少ではありませんし、地方在住ということもあり満足しています。また、40代になりワークライフバランスの重要性をより強く感じるようになりました。
フリーランスの場合、稼ぎに行こうと思えば稼げる面もありますが、今は充実感やバランスを重視しています。

プロジェクトの中核で成果を出し続けることがフリーランス成功の鍵、人間関係構築の重要性

河東
フリーランスとして成功するためのTIPSについて、教えていただけますでしょうか。

N様
最も重要なのは、専門性を持つことだと思います。技術は陳腐化する可能性もありますが、現場で着実に成果を出し続けることで、新しい情報や機会も入ってきます。本質的な価値を提供し続けることが重要と考えています。
また、人間関係も重要と思います。会社員に比べて、人間関係が損なわれると仕事がなくなってしまいやすいので、穏やかに、謙虚に振る舞うことが大切だと思います。私も時には衝突することはありましたが、最終的には良好な関係を築くことを心がけてきました。

河東
専門性の面ではどのような工夫をされていますか。

N様
日頃の最新情報の収集は怠らないよう努力していますが、1番は現場で新しい技術やトレンドをキャッチアップしています。たとえば最近はAI関連のソリューションも多く出てきていますが、そういった新しい技術に関する情報も現場で貢献することで自然と入りやすい立場になれます。

河東
具体的な案件の獲得方法について、教えていただけますでしょうか。

N様
基本的に自分の専門性を生かせる案件を選んでいます。フリーランスだからといって与えられた仕事だけをこなすのではなく、プロジェクトの中核を担う立場で関わることで、自然と次の仕事につながってきました。そこでまた成果を出すことで、さらに新しい案件の相談をいただくという好循環が生まれると思います。
以前と比べると業界の状況も変わってきていますが、お客さまのために全力を尽くすという姿勢は変えていません。会計業務とシステムの両方を理解しているという強みを生かしながら、新しい技術も積極的に取り入れることで、継続的な案件の獲得につながっています。

正社員の安定性とフリーランスの得意領域特化、両立場のメリット・デメリットから導く独立の判断基準

河東
正社員・フリーランス両方をご経験されているということで、両者のメリット・デメリットを教えていただけますでしょうか。

N様
正社員の圧倒的なメリットは安定性です。コンサルティングファームに在籍すると、プロジェクトの待機期間の間も給与が支払われ、その間に新しい技術の学習やスキルアップの時間を確保できます。会社のブランド力を活用して、最新のソリューションに触れる機会も多くあります。一方、フリーランスは基本的に3カ月契約、下手をすると1カ月契約という案件もあり、「2カ月先まで仕事はあるけれどその先はまた考えなきゃいけない」という状況になりがちです。また、新しい技術のキャッチアップは基本的に自己負担となります。
ただし、フリーランスの最大のメリットは、得意なことに特化できる点です。良くも悪くも、自分の責任において専門性を追求できます。会社員の場合、マネジメントに進むなど、必ずしも自分のやりたい仕事だけを選べるわけではありません。
この専門性の追求において重要なのは、市場価値のある分野を見極めることと思います。かつては価値があったスキルも時代とともに評価が変わります。そのため、常に市場価値のある専門性をアップデートし続けることが重要です。 最後に、これは個人的な意見ですが、専門性が定まっていない方は会社員の方が良いかもしれません。フリーランスとして成功するためには、明確な強みと、それを生かせる市場が必要だと考えています。結局のところ、自分の価値を高め続けられるかどうかが、成功を左右するのだと考えています。

Writer 著者情報

河東 孝至
アクシスコンサルティング株式会社

金融機関の営業としてキャリアをスタート。その後、スタートアップの事業立ち上げにチャレンジしたものの失敗。
その後、調査会社では多くの経営層の方とお目にかかり、多くの経営課題は「ヒト」にあり、またその課題を解決するのも「ヒト」であることを痛感し、アクシスコンサルティングに参画いたしました。

 

■転職サポート事例
・52歳 外資系ファーム/パートナー → 大手総合ファーム/パートナー
・49歳 日系事業会社/管理職 → 大手総合ファーム/ディレクター
・42歳 大手ベンダー/部長 → 事業会社/海外現地法人サービス立上げ責任者
・40歳 大手総合ファーム/マネジャー → 日系ファーム/マネジャー
・42歳 ブティック系ファーム/マネジャー → 大手総合ファーム/マネジャー
・32歳 大手戦略ファーム/マネジャー → 事業会社/経営企画

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