DX推進とは？いまさら聞けない基礎知識と成功のポイント8選

デジタル化が加速する現代において、企業の成長戦略として「DX推進」が注目されています。経済産業省が発表した「デジタルガバナンス・コード3.0」では、企業のDXの自主的な取り組みを促すために、経営者に求める対応をまとめています 。しかし、DX推進とは具体的に何を指すのか、どのように進めていけば良いのか、疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、DX推進の基礎知識から成功のポイントまでをわかりやすく解説します。DX推進の重要性、メリット、そして具体的な事例を交えながら、企業がDXを成功させるための道筋を明らかにします。

DX推進とは？基本概念をわかりやすく解説

DX（デジタルトランスフォーメーション）とは、デジタル技術を活用して、企業のビジネスモデルや業務プロセス、組織文化などを根本的に変革し、競争優位性を確立することです 。

これは、単にIT化やデジタル化を進めることとは異なります。IT化やデジタル化は、既存の業務プロセスを効率化するためにデジタル技術を導入することを指します。たとえば、紙の書類を電子化したり、FAXをメールに置き換えたりすることが挙げられます。一方、DXは、デジタル技術を駆使することで、ビジネスモデルそのものを変革し、新たな価値を創造することを目指します 。

たとえば、従来は実店舗での販売が中心だった企業が、ECサイトを構築してオンライン販売を開始したり、顧客データを分析してパーソナライズされたサービスを提供したりするといったことが挙げられます。DXは、IT化やデジタル化をさらに進化させ、企業の競争力を強化するための取り組みと言えるでしょう。

なぜDXが推進されているのか？その背景と重要性

DX推進は、現代社会におけるさまざまな変化に対応するために、企業にとって必要不可欠な取り組みとなっています。その背景には、社会・経済的な変化と、DXを推進しないことによるリスクが挙げられます。

社会的・経済的な背景

DX推進が加速している背景には、日本社会が直面するさまざまな課題や経済環境の変化があります。これらの背景を理解することで、なぜ今DXが重要なのかが明確になります。

以下は主な社会的・経済的なDX推進の背景となります。

• 少子高齢化による労働力不足: 日本では少子高齢化が進行しており、労働力不足が深刻化しています。DX推進によって業務を変革し、生産性を向上させることで、限られた労働力でより多くの成果を上げることが期待できます。
• グローバル競争の激化: グローバル化が加速する中、企業は世界中の企業と競争を繰り広げなければなりません。デジタル技術を活用したビジネスモデルの変革は、競争力を強化し、グローバル市場で生き残るために不可欠です。
• コロナ禍をきっかけにデジタル化が加速: 新型コロナウイルスの感染拡大は、社会全体のデジタル化を加速させました。リモートワークやオンライン商談など、デジタル技術を活用した働き方やビジネスの進め方が急速に普及しています。

また日本国内だけでなく日本企業がグローバル競争で勝ち残るためには、デジタル技術を活用した迅速な意思決定や顧客体験の向上が不可欠になっています。これらの社会的・経済的な変化に対応するため、DX推進は「時代の流れ」として避けられないものとなっています。

DXを進めない企業が直面するリスク

デジタル技術が急速に発展する現代社会において、DXへの取り組みの遅れは企業の存続自体を脅かす深刻な問題となりえます。経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」という概念は、日本企業のデジタル化の遅れによって多大な経済損失が生じる可能性を指摘しています。

以下はDXを推進しなかった場合の主なリスクになります。

• 競争力の低下: デジタル技術を活用した競合他社に後れを取り、市場シェアを失う可能性があります。
• 顧客離れ: 顧客ニーズの変化に対応できず、顧客満足度が低下する可能性があります。
• 事業の衰退リスク: 新規事業の創出や既存事業の変革が遅れ、事業の成長が停滞する可能性があります。

特に注目すべき点は、レガシーシステムの維持コスト増大です。古いシステムを延命させるためのコストは年々増加し、IT予算の多くがメンテナンスに費やされてしまいます。

また、デジタル人材の確保も深刻な課題です。DXに積極的に取り組む企業にデジタル人材が集中することで、DX後進企業は必要な人材を確保できなくなるという悪循環に陥りやすくなります。

セキュリティ面でも、古いシステムはサイバー攻撃に対して脆弱であり、データ漏洩やシステム障害のリスクが高まります。情報処理推進機構（IPA）の報告によれば、サポート終了したOSやソフトウェアを使用している企業のセキュリティインシデント発生率は高いとされています。DXを進める企業との差は、時間と共に広がり、取り返しがつかなくなる可能性もあります。そのため、早急なDX推進が求められます。

企業がDXを推進するメリットとは？

DXは単なるIT化ではなく、企業のビジネスモデル自体を変革し、競争力を高める取り組みです。DXを効果的に推進することで、企業は複数の面で大きなメリットを享受できます。

• 業務効率化とコスト削減: RPA（ロボティック・プロセス・オートメーション）やAIなどのデジタル技術を導入することで、業務を自動化・効率化し、人為的なミスを削減できます。また、クラウドサービスの活用により、ITコストを削減することも可能です。
• 売上向上と顧客体験の改善: AIやビッグデータ分析を活用することで、顧客のニーズを的確に把握し、パーソナライズされたサービスを提供できます。これにより、顧客満足度を高め、売上向上につなげることが可能となります。
• 新規事業創出: デジタル技術を活用することで、これまでにない新しいビジネスモデルやサービスを創出し、新たな収益源を獲得できます。
• 競争優位性の確保: DXを推進することで、他社との差別化を図り、市場における競争力を強化できます。
• 働き方改革の実現: DXによる生産性向上は、従業員の負担を軽減し、労働時間の短縮につながります。また、場所や時間に縛られない柔軟な働き方を実現できるため、従業員満足度向上につながり、優秀な人材の確保にも役立ちます。

これらのメリットは相互に関連しており、業務効率化によって生まれたリソースを新規事業開発に投入したり、データ分析による顧客理解が競争優位性につながったりします。

また、DXは短期的なコスト削減だけでなく、長期的な企業価値向上をもたらします。たとえば、データ駆動型の意思決定により、市場の変化に迅速に対応できる俊敏性が高まります。さらに、社内のサイロ化を解消し、部門間の連携が強化されることで、組織全体の生産性と創造性が向上します。

DXによって実現する働き方改革は、従業員のワークライフバランス向上だけでなく、地理的制約なく優秀な人材を確保できるという採用面でのメリットももたらします。コロナ禍を経て、こうした柔軟な働き方の重要性はますます高まっており、DXはその基盤となる重要な経営戦略となっています。

業務効率化とコスト削減

デジタルトランスフォーメーション（DX）の最もわかりやすい効果の1つが、業務効率化とコスト削減です。多くの企業ではまずこの側面からDX推進を始めることが多く、具体的な成果が見えやすい領域でもあります。特に注目すべきは、単純作業の自動化による業務効率の飛躍的な向上です。

以下はDXによる業務効率化とコスト削減の主な内容です。

• RPA導入による単純作業の自動化
• AIによる高度な判断業務の効率化
• クラウドサービス活用によるインフラコスト削減
• ペーパーレス化によるコスト・時間の削減

たとえば、これまで手作業で行っていた請求書処理に対してRPAを導入することで、従来は1件あたり15分かかっていた作業が半自動化によって、約30秒に短縮され、社員がより創造的な業務に集中できる環境がつくれます。

売上向上と顧客体験の改善

DX推進のメリットは業務効率化だけではありません。顧客データを活用した売上向上と顧客体験の改善もDXがもたらす重要な価値です。デジタル技術を活用することで、顧客1人ひとりのニーズや行動パターンを詳細に分析し、パーソナライズされたサービスを提供できるようになります。

• ビッグデータ分析による顧客理解の深化：購買履歴や行動データを分析し、顧客の潜在ニーズを発見
• AIを活用した購買予測：過去の購買パターンから次の購入タイミングや商品を予測
• オムニチャネル戦略の実現：実店舗とオンラインの垣根を越えた一貫した顧客体験の提供
• リアルタイムマーケティングの展開：顧客の状況に応じた最適なタイミングでの情報提供

たとえば、ある小売チェーンでは顧客の購買データを分析し、個々の顧客に合わせた商品レコメンデーションをアプリで提供することで、平均購入金額が1.5倍に増加しました。また、ECサイトでは訪問者の閲覧履歴に基づいてトップページをカスタマイズすることで、コンバージョン率が大幅に向上しています。このようにDXは単なる業務の効率化ではなく、売上や利益に直結する顧客価値の創造を可能にします。

競争優位性の確保

ビジネス環境が急速に変化する現代において、DX推進は競争優位性を確保するための重要な戦略となっています。デジタル技術を活用した新たなビジネスモデルの構築やサービスの提供は、競合他社との差別化を図る強力な手段となります。特にグローバル市場での競争では、DXの推進が企業の生存戦略として不可欠です。

たとえば、金融業界では従来の銀行に代わり、フィンテック企業がスマートフォンを活用した利便性の高いサービスを展開し、若年層を中心に顧客を獲得しています。製造業でも、IoTやAIを活用したプロダクトの開発や予知保全サービスの提供によって、単なる製品販売からソリューション提供企業へと変革を遂げた企業が新たな市場を創出しています。DXは「やってもやらなくてもよい取り組み」ではなく、企業が市場で生き残るための必須条件となりつつあります。

DX推進で業務効率が向上した有名企業の成功事例

ここでは、DX推進によって業務効率化を実現した企業の成功事例を紹介します。これらの事例は、業種や規模は異なりますが、いずれもデジタル技術を効果的に活用して業務プロセスを根本から見直し、大きな成果を上げています。

たとえば、トヨタ自動車では、「e-TOYOTA」戦略の一環として工場のIoT化を推進し、生産ラインの稼働データをリアルタイムで収集・分析するシステムを構築しました。これにより設備の異常を早期に発見できるようになり、ダウンタイムの短縮と生産効率の向上を実現しています。さらに、デジタルツイン技術を活用して仮想空間で生産ラインのシミュレーションを行うことで、最適な生産計画の立案が可能になりました。

具体的な事例は次項を確認してみてください。

事例① トヨタ自動車のスマート工場化

トヨタ自動車の事例は、IIJが構築したデータ収集システムによる生産ラインの設備稼働情報の見える化と分析が特徴です。

新設されたハイブリッド車用の変速機の加工・組立ラインにデータ収集システムを導入し、各種制御装置から専用のネットワークを通じて情報を集めています。このシステムでは、設備の動作状況や電力使用量などのデータを収集・保存し、リアルタイムでの情報共有による素早い判断や省エネに役立てています。

また、設備の故障を事前に察知したり、部品交換の最適なタイミングを把握したりすることで、機械が自ら問題を検知して対応できる仕組みも目指しています。さらに、抜き取り検査の結果と設備の動作データを比較することで、問題の兆候を早期に発見し、生産ラインの効率アップを計画しています。

安全面では、外部から遮断された専用ネットワークと専用クラウドシステムの利用により、社内サーバーと同じレベルのセキュリティを確保しています。

参考：IIJ、トヨタ自動車北海道が新設した生産ラインのIoTシステムを構築 | IIJについて

事例② 三井住友銀行のRPA導入

三井住友銀行は、RPAを導入し、定型業務の自動化を推進しています。これにより、年間30万時間の業務削減を実現し 、従業員をより高度な業務にシフトさせることができています。また、RPA導入によって、業務の正確性向上とコンプライアンス強化にも貢献しています。

参考：三井住友銀のRPA大作戦、110万時間捻出する成果 – 日本経済新聞

事例③ ファーストリテイリングのAI活用による需要予測

ユニクロを展開するファーストリテイリングはAIを活用し、お客様の買い物体験の向上や商品開発の効率化を実現しています。

AIの技術を用いることで、お客様の過去の購入品や見た商品、カートに入れた商品などの情報を分析し、その方に合った商品を提案します。お客様の好みに合わせて商品の並び順を調整することで、買いたい気持ちを高めています。

また効率的な商品開発は、お客様のデータを分析し、ネットショップでの購入傾向から商品のセット販売やコーディネート提案に活用しています。店舗での試着データやネット購入時に入力された情報を集めて、お客様のニーズや流行を把握し、新商品の開発に役立てています。

上記のように本来は膨大な時間がかかる作業を効率化することによって、マーケティングにかかる時間を削減しています。

参考：ユニクロがDXを活用し、顧客体験の向上や商品開発の効率化を実現！AI技術も活用する革新的な取り組みとは？ – Aeru.me

DX推進の成功のポイント8選

DX推進を成功させるためには、戦略的なアプローチと組織全体の協力が不可欠です。多くの企業がDX推進に取り組んでいますが、成功するためには具体的な方法論とポイントを押さえることが重要です。以下では、DX推進を成功に導く8つの重要なポイントを詳しく見ていきましょう。

それぞれの成功のポイントを次項で詳しく解説していきます。

① 明確なビジョンと経営層のコミットメント

DX推進を成功させるための最も重要な要素の1つが、経営層による明確なビジョンの提示とコミットメントです。DXは単なるIT投資や一時的なプロジェクトではなく、企業の経営戦略そのものであるため、トップダウンの強いリーダーシップが欠かせません。経営層がDXの重要性を理解し、全社的な取り組みとして位置づけることが成功への第一歩となります。

成功事例を見ると、経営層のコミットメントおよび社内で推進する課があるとより社内の意識改革にも大きな影響を与えやすいでしょう。旗振り役がDXの重要性を繰り返し発信し、自らデジタルツールを活用する姿を見せることで、社員のマインドセットも変化します。DXは技術導入以上に組織文化の変革が重要であり、その変革を推し進めるのは旗振り役の強いリーダーシップが必要です。

② DXの目的を明確化する

DX推進において多くの企業が陥りがちな失敗は、「なぜDXに取り組むのか」という目的が不明確なまま進めてしまうことです。DXは手段であって目的ではありません。自社のビジネス課題を解決し、競争優位性を高めるためにDXをどう活用するのか、その目的を明確に定義することが成功への重要なステップとなります。

目的を設定する際は、「何のために」を常に問い続けることが大切です。たとえば「業務効率化のためにRPAを導入する」だけでなく、「RPAによる業務効率化で創出した時間を顧客対応に充て、顧客満足度を向上させる」というように、最終的にどのような価値を生み出すのかまで考えることが重要です。

また、目的に応じて適切なKPI（重要業績評価指標）を設定することも欠かせません。「売上〇%アップ」「顧客満足度〇ポイント向上」など、具体的で測定可能な指標を設定することで、DX施策の効果を客観的に評価できるようになります。目的とKPIが明確になれば、優先すべき施策もおのずと見えてきます。

成功するDXは、技術導入そのものを目的にするのではなく、常にビジネス課題の解決や顧客価値の向上といった本質的な目標にフォーカスしています。目的を見失わず、ぶれることなく進めることがDX成功の鍵なのです。

③ 組織文化・マインドセットの変革

DX推進において最も難しく、同時に最も重要な要素の1つが、組織文化やマインドセットの変革です。デジタル技術の導入は比較的容易ですが、それを活用して真の変革を起こすには、組織全体の考え方や行動様式を変える必要があります。特に長年同じやり方で業務を行ってきた企業にとって、この文化的変革は大きな壁となることが少なくありません。

文化変革を促進するためには、小さな成功体験を積み重ねることも効果的です。一部の部署や限定的なプロジェクトでDX施策を実施し、その成果を可視化して共有することで、他部門の意識変革にもつなげられます。さらに、DX推進に貢献した社員を評価・表彰する仕組みを設けることで、組織全体のモチベーション向上も図れるでしょう。

変革には時間がかかるものですが、粘り強く継続的に取り組むことで、少しずつ組織文化は変わります。「デジタルはIT部門の仕事」という意識から脱却し、全社員が当事者意識を持ってDXに取り組む文化を醸成することが、長期的な成功への鍵となります。

④ スモールスタートで進める

DX推進は、最初から完璧を目指すのではなく、小さな一歩から始めることが成功への近道です。多くの企業がDXに取り組む際に陥りがちな失敗は、大規模な改革を一気に進めようとして挫折してしまうことです。限定的な範囲で成功体験を積み重ねる「スモールスタート」の考え方が重要になります。

具体的な進め方としては、最小限の機能を持つ製品（MVP）を短期間で開発し、ユーザーの反応を見ながら改良を重ねるアジャイル開発の手法が効果的です。たとえば、ある製造業では、まず1つの工場の1つのラインだけにIoTセンサーを導入し、データ収集と分析の仕組みを確立した後、他のラインや工場へと展開していきました。また、小売業では、一部店舗でのみデジタルサイネージを試験導入し、効果検証後に全店展開するアプローチを取りました。このように小さな成功体験を積み重ねることで、組織全体のDXに対する理解と受容性が高まり、より大きな変革へとつながります。

⑤ データ活用を重視する

DX推進において、データは新たな競争優位性の源泉となります。多くの企業では膨大なデータが日々生成されていますが、それらを有効に活用できている企業はまだ少数派です。DXを成功させるためには、単にデータを収集するだけでなく、それを分析し、実際のビジネス判断や顧客体験の向上に結び付ける能力が不可欠です。

データ活用を進める際は、まず「何のためにデータを活用するのか」という目的を明確にすることが重要です。たとえば「顧客離反を防ぐため」「製品品質を向上させるため」など、具体的なビジネス課題に紐づけることで、必要なデータや分析手法が見えてきます。

また、データ活用の文化を醸成することも重要です。「勘と経験」ではなく「データとファクト」に基づいて意思決定する習慣を組織に根付かせることで、より合理的で効果的なビジネス判断が可能になります。データリテラシー向上のための教育プログラムを実施したり、データ分析の結果を可視化して共有する仕組みを作ったりすることも、データ活用文化の醸成に役立ちます。

⑥ 最新のデジタル技術を適切に活用

DX推進で、最新のデジタル技術を活用することは重要ですが、技術ありきではなく、解決すべき経営課題から出発することが成功の鍵です。技術導入を手段ではなく目的としてしまうと、投資に見合った効果が得られない「デジタル化のための投資」に陥る危険があります。

技術選定は、まず自社の課題を明確にし、その課題解決に最適な技術は何かを検討することが重要です。たとえば、顧客対応の質と効率を高めたい場合は、チャットボットやAIを活用したFAQシステムの導入が効果的かもしれません。製造工程の最適化を図りたい場合は、IoTセンサーを活用したデータ収集と分析が有効でしょう。

また、技術導入の際には、自社の既存システムとの親和性や、社内のIT人材のスキルセットも考慮する必要があります。無理なく運用できる技術を選ぶことで、持続可能なDX推進が可能になります。最新技術に飛び付くのではなく、「この技術で何ができるのか」ではなく「何をすべきか、そのために何が必要か」という視点で技術を選定することが、DX成功への近道です。

⑦ 社内外のDX人材を確保・育成する

DX推進の大きな壁となるのが人材不足です。経済産業省の調査によれば、日本国内のIT人材は2030年には約79万人が不足すると予測されており、特にDX推進に必要なデジタル人材の確保は多くの企業の課題となっています。成功するDXには、技術だけでなく、デジタルを活用して新たなビジネスモデルを構築できる人材が不可欠です。

人材確保の方法としては、まず社内の既存人材の育成があります。デジタルスキルの研修プログラムの実施や、外部セミナーへの参加促進などが効果的です。また、若手社員のデジタルリテラシーを生かし、逆メンター制度を導入する企業も増えています。中途採用でデジタル人材を獲得する場合は、単に技術スキルだけでなく、自社の業界知識や文化との親和性も重視することが大切です。

外部リソースの活用も重要な選択肢です。すべてを自社で賄おうとせず、ベンダーやコンサルティング会社との連携、スタートアップとの協業などを通じて、必要な知見やスキルを補完することも検討すべきです。DX推進は一朝一夕にはいかない長期的な取り組みであるため、人材の確保・育成も長期的な視点で計画的に進めることが重要です。

⑧ 継続的な改善とPDCAサイクルの徹底

DXは一度システムを導入して終わりではなく、継続的な改善が必要な「終わりのないプロジェクト」です。デジタル技術は日々進化し、ビジネス環境や顧客ニーズも常に変化しています。このような変化に対応し続けるためには、PDCAサイクル（Plan-Do-Check-Action）を徹底し、常に改善を続けることが不可欠です。

たとえば、ECサイトを刷新する際に、ユーザーの行動データを分析し、購入完了までのステップを簡略化するなど顧客体験を向上させることで、カート放棄率を削減することも可能です。

PDCAを回す際のポイントは、適切な指標（KPI）の設定です。売上や利益といった最終的な成果だけでなく、プロセス改善の度合いや顧客満足度など、多角的な指標を設定することで、改善すべきポイントが明確になります。また、現場の声を積極的に取り入れ、実際に使う人の視点で改善を進めることも重要です。DXの成功は一朝一夕には実現しませんが、地道なPDCAの積み重ねが、やがて大きな成果として実を結びます。

まとめ｜DX推進は「小さく始めて継続する」ことが成功の鍵

DX推進は、企業が持続的な成長を遂げるために不可欠な取り組みです。DXを推進しないことによるリスクを理解し、積極的に取り組むことで、企業は多くのメリットを得られます。最も重要なポイントは「小さく始めて継続する」という姿勢です。

アクシスコンサルティングでは、この継続的なDX推進をサポートするために、大手コンサルティングファーム出身のフリーコンサルタント約1,000名を擁し、戦略立案から実行、その後のフォローアップまで一貫したサポートを提供しています。特に、専門知識や人材不足に悩む企業に対して、必要なタイミングで最適な人材を柔軟に配置することで、コスト効率の高いDX推進を実現します。

DXは一朝一夕で完了するものではなく、常に進化し続ける取り組みです。アクシスコンサルティングの20年にわたるコンサルティング実績と幅広い支援領域を生かし、新規事業支援やビジネスモデル構築といった上流工程から、システム導入、運用保守まで、企業のDXジャーニー全体をサポートします。

最新の技術トレンドや社会の変化を把握し、柔軟に対応できる人材を旗振り役に、小さな成功を積み重ねていくことがDX成功の鍵です。DX推進を検討されているのであれば、ぜひ弊社へご相談ください。