「戦略コンサルと総合コンサルの違い」とは?身につくスキルや将来のキャリアまで徹底比較

転職を検討されたり情報収集中のコンサルタントの方から、ご相談いただくことの1つが「戦略コンサルと総合コンサルは何が違うのか?」というものです。結論からお伝えすると、戦略コンサルは「企業の頭脳」として経営層と向き合い、根幹的な課題解決に特化しているのに対し、総合コンサルは「実行のパートナー」として戦略立案から業務改善・システム導入までを一気通貫で支援する点に大きな違いがあります。
本記事では、両者の役割、プロジェクトの進め方、求められるスキル、キャリアパスを整理し、さらにキャリアチェンジの可能性について解説します。
Index
「戦略コンサルと総合コンサル」の役割の違い
まず押さえていただきたいのは、戦略コンサルと総合コンサルではそもそも担っている役割が異なるという点です。同じコンサルタントという呼称でも、企業内で期待されるミッションや立ち位置は大きく変わります。本章では、両者が企業に対してどのような価値を提供しているのかを整理します。
戦略コンサル
- 主に経営陣や株主に近い立場で支援を行う。
- 「企業の頭脳」として経営戦略、M&A、新規事業開発など経営の根幹に関わるテーマを担当。
- 抽象度の高いテーマに対して短期で意思決定を支援するため、スピードと精度の高いアウトプットが求められる。
総合コンサル
- 戦略立案に加え、その実現に必要なシステム導入や業務改革など、実行段階までをカバー。
- 経営層だけでなく、現場部門とも密接に関わり「実行のパートナー」として伴走。
- 長期的なプロジェクトを通じて組織変革を支援する。
<実例>
- 戦略コンサル:ある製造業企業の海外子会社再編戦略を3カ月で策定し、CFOに提示。取締役会での意思決定に直結する事案を支援。
- 総合コンサル:同じ企業に対して、再編戦略を実行するためERPシステム導入をリード。3年にわたって現地法人・本社間の業務プロセス統一化を支援。
「戦略コンサルと総合コンサル」の担当プロジェクトや進め方の違い
役割の違いがそのままプロジェクトの進め方に直結します。誰と、どれくらいの期間で、どのようなアウトプットを生み出すのかは、戦略コンサルと総合コンサルで明確に分かれます。本章では、実際のプロジェクト事例を交えながら、その進め方のリアリティを解説していきます。
戦略コンサルのプロジェクト傾向
- 期間:2〜4カ月程度の短期プロジェクトが中心
- テーマ例:M&A戦略、新規事業立案、ポートフォリオ再編、グローバル進出戦略
- 体制:パートナー+マネージャー+アソシエイト数名という少人数精鋭
- 成果物:経営層向けプレゼン資料、投資委員会向けDDレポートなど
<事例1>M&Aデュー・デリジェンス案件
ある製薬企業の欧州買収案件では、戦略コンサルが財務・事業のデュー・デリジェンスから関与。現地で競合インタビューやサプライチェーン調査を行い、3カ月で買収後5年でROIが8%を下回るリスクを特定。最終的に買収価格交渉の材料となり、数十億円規模のディスカウントにつなげた。
<事例2>新規事業立ち上げ
大手小売業の次世代成長戦略案件では、わずか10週間で市場調査・競合ベンチマーク・消費者インタビューを実施。最終的に3つの新業態シナリオを提示し、そのうち1つが採用され、1年後には新ブランドとして実際に店舗展開が始まった。
総合コンサルのプロジェクト傾向
- 期間:半年〜数年といった長期になる案件も多い
- テーマ例:パッケージ導入(ERP、CRMなど)、業務改革、PMI(M&A後の統合)、人事制度設計など
- 体制:数十名規模。クライアント実務担当者やベンダーを巻き込む大規模体制となることも多い
- 成果物:業務フロー、システム稼働、組織設計など具体的な変革
<事例1>基幹システム刷新案件
通信業界のクライアントで、老朽化した基幹システムをERPに刷新。システム化構想策定から導入・テスト・定着化まで3年間伴走。社内のIT部門だけでなく、現場営業担当も巻き込みながら、従来3日かかっていた顧客データ抽出が数時間で完了する仕組みを構築。結果として年間数十億円規模のコスト削減につながった。
<事例2>PMI支援
製造業のクロスボーダーM&Aでは、買収後の統合作業を総合コンサルがリード。財務・人事・ITを横断的に整理し、3,000名規模の社員を対象に人事制度と評価体系を統一。文化の違いによる摩擦が生じたが、チェンジマネジメントを実行することで定着化を支援。買収後2年でシナジー効果を黒字化まで持ち込んだ。
「戦略コンサルと総合コンサル」に求められるスキルセットとキャリアパス
プロジェクトの特性が異なれば、当然求められるスキルも変わります。戦略コンサルには経営層を説得する思考力とプレゼン力、総合コンサルには現場を動かすマネジメント力やITリテラシーが強く求められます。本章では、両者で習得できるスキルの違いと、その後のキャリアの広がり方について具体的に整理します。
戦略コンサルに求められるスキル
- 地頭力:限られた情報から最短距離で解を導く力。抽象的な問いを自ら課題化できる。
- 仮説思考力:限られた時間で仮説を立て、検証を繰り返す。
- 論点整理力:複雑な課題をシンプルに構造化。
- プレゼン力:経営層に対して短時間で意思決定を促す。
総合コンサルに求められるスキル
- プロジェクトマネジメント力:数十名規模の大規模プロジェクトを牽引。
- 業務設計力:現場業務を落とし込み、運用可能な形に変換。
- ITリテラシー:システム導入・クラウド移行などの理解求められるケースが多い。
身につくスキルとキャリアパス
- 戦略コンサル出身者:PEファンド、事業会社の経営企画、新規事業責任者など経営直結型キャリア。
- 総合コンサル出身者:事業会社のDX推進、情報システム部長、人事部長など実行力を武器にするキャリア。
サラリーレンジ
企業により大きく差があるので一概には言えませんが、一般的には戦略コンサルタントの方が総合コンサルよりも高くなる傾向にあります。各社によってレンジが異なりますので、詳細について知りたい方はお問い合わせください。
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「戦略コンサルと総合コンサル」のキャリアシフト
「戦略コンサルから総合コンサルへ」「総合コンサルから戦略コンサルへ」。こうしたキャリアの行き来は可能なのでしょうか?本章では、キャリアシフトの現実性やメリット・注意点を解説します。どちらのキャリアを歩んでいる方にとっても、次のステップを考える上で参考になるはずです。
戦略コンサル → 総合コンサル
戦略コンサルで培った経営課題の構造化や仮説検証力は、総合コンサルの実行支援において大きな武器になります。特にDX案件では、単なるシステム導入や業務効率化ではなく、経営戦略と一体化した変革ストーリーを描ける人材が強く求められています。
たとえば、戦略ファームで中期経営計画におけるデジタル投資戦略を策定した経験があれば、総合コンサルに移った後、その投資を具体的なERPやCRM導入、データ基盤構築プロジェクトに接続する役割を担えます。経営層が求める方向性と、現場が回せる仕組みの両方を理解しているため、クライアントから見ても上流から下流までを一気通貫で理解できる存在として重宝されます。
実際、弊社にご相談いただいた元戦略コンサルの方は、総合コンサルに転職後、大手小売業の全社DX推進プロジェクトで、戦略立案段階で描いたKPIをシステム要件や業務設計にまで落とし込むブリッジ役として活躍。従来であれば戦略部隊と実行部隊が分断されていた部分を統合的に推進したことで、クライアントから高い評価を受けました。
このように、戦略×実行の両面を理解するハイブリッド人材は、DXをはじめとした変革テーマで市場価値が非常に高くなっています。
総合コンサル → 戦略コンサル
実行経験を評価されるケースもありますが、戦略ファームの選考では何よりも論点設定力と仮説思考力が重視されます。単に「ERP導入を経験しました」「業務改革を担当しました」という経歴だけでは不十分で、「なぜその施策が必要だったのか」「経営にどうインパクトを与えたのか」を短時間で論理的に説明できる力が問われます。
ある外資系戦略ファームのパートナーは、採用基準について次のように語っています。
「我々が見ているのは、特定分野に深い知識を持っているかどうかよりも、未知のテーマに直面したときにどれだけ早く論点を整理し、仮説を立てられるか。要は“なんでもこなせる汎用力”です。」
イメージとしては、経験・能力のレーダーチャートでどこか一点が尖っている人材よりも、すべての項目が一定水準でバランスよくまとまっている人材が求められます。たとえば「デジタル領域に特化しているが、財務や組織課題には弱い」というよりも、「デジタルにも一定理解があり、財務・組織も含め経営課題全般を扱える」という総合力が評価されるのです。
実際に弊社にご相談いただいた総合ファーム出身の方で、戦略ファームに転職されたケースでは、面接でこれまで担当したシステム導入案件を、経営層の意思決定という視点でどう論点整理するか徹底的に問われました。単に「システム導入を成功させた経験」ではなく、その導入によって経営層にどんな選択肢を提示し、どんなリスクを排除したかまで語れることが合格の決め手となったのです。
このように、総合から戦略へとキャリアシフトを目指す場合には、自分の実行経験を経営アジェンダに引き直し、普遍的に応用できる形で語れるかどうかが重要になります。
キャリアシフトのメリット
戦略コンサル → 総合コンサル
短期集中で培った論点設定力や仮説思考をベースに、総合コンサルで長期伴走型のプロジェクト経験を積むことで、戦略立案も実行支援もできるハイブリッド人材として評価されます。実際に、M&A戦略策定の経験を持つ方が総合コンサルに転職後、買収後のPMIプロジェクトでブリッジ役を担い、市場価値を高めたケースもあります。
総合コンサル → 戦略コンサル
現場実行を理解している点を強みに、戦略ファームで差別化が可能です。特にDXやシステム投資に関する案件では、実装リスクを語れる戦略人材は貴重とされています。その結果、スタートアップのCXOや大手事業会社の経営企画・DX責任者など、経営に近いキャリアポジションへの道が拓けるケースが見られます。
おわりに
戦略コンサルと総合コンサルは、「戦略か実行か」という役割の違いに加え、プロジェクトの進め方・求められるスキル・キャリアの方向性においても大きな差があります。
どちらを選ぶかは、将来どのようなキャリアを歩みたいのか、どのスキルを軸に市場価値を築きたいのかに直結します。現職で得られる経験が自身のキャリア像に合致しているか悩まれている方は、ぜひ早めにご相談いただければと思います。私たちエージェントは、転職を前提とせずとも、キャリア棚卸しや情報収集の段階からご支援しております。