「コンサルから事業会社への転職」を成功させる方法とは

ここ数年、コンサルティングファームから事業会社へ転職する方や希望される方が増加しています。弊社にご相談いただく方の中でも、このままコンサルとして昇進していく選択肢と同時に、事業会社に移って1つのビジネスに深く関わりたい、事業会社で経営に近い経験を積みたいという希望を持つ方が増えています。
本記事では、なぜコンサルから事業会社を目指す方が多いのか、企業が期待するスキル、転職活動や転職後につまずきやすいポイント、そして成功のために抑えるべき観点を整理します。
Index
「コンサルから事業会社へ転職」を考える理由
まず、なぜ多くのコンサルタントが事業会社への転職を志向するのでしょうか。その背景には、キャリア観の変化とライフスタイルの志向があります。
主な理由
- 事業を自ら動かしたい
プロジェクト単位で提案して終わりではなく、自ら意思決定を行い、成果を最後まで見届けたい。コンサルでは「戦略を作って終わり」になることが多いが、事業会社ではKPI改善や新規サービスの立ち上げまで携われる。 - ライフワークバランス
コンサル特有の長時間稼働から脱却し、持続可能な働き方を求めたい。特に子育て世代では「平日夜や週末に家族と過ごせる時間を確保したい」という声が多い。 - 専門領域の深化
DX、人事、マーケティングなど、自分の強みを1つの企業で磨きたい。コンサルでは幅広い案件に触れるが、専門領域を深掘りできない不満が転職理由となる。 - 将来の経営ポジション
経営企画や新規事業で、経営により近い立場を担いたい。CxOを目指す上で「実際に事業を動かした経験」が不可欠と考える人が増えている。
事例1
元戦略コンサルの30代マネージャーは、『案件毎にテーマが変わり、幅広い学びはあったが、1つの事業に腰を据えて価値を出したい』と転職を決意。結果、外資系小売の経営企画室に入り、EC戦略を主導しています。コンサル時代の分析力と経営層へのレポーティング力を活かしつつ、事業成長に直接携わるやりがいを実感しています。
事例2
総合コンサル出身の40代女性は、長時間労働が家庭と両立しづらく、ヘルスケア企業の新規事業部に転職。週2日在宅勤務を取り入れながら、ウェルネスアプリの事業開発に携わり、働き方とキャリアの両立を実現しました。
事業会社が考える「コンサルから事業会社への転職」で活かせるスキル
企業側がなぜコンサル出身者を採用ターゲットとするのか。その理由は、即戦力としての問題解決力と経営視点にあります。
主に評価されるスキル
- 論点整理力
複雑な経営課題を分解し、優先順位をつける力。経営会議に向けて「今検討すべき3つのテーマ」を抽出できる人材は貴重です。 - 仮説検証力
限られたデータから施策を立案し、検証・改善を回す力。新規事業やマーケティング領域で特に重宝されます。 - コミュニケーション力
経営層への報告スキルや、社内外のステークホルダー調整力。大企業では部門横断での合意形成力が求められます。 - プロジェクト推進力
複数部門を巻き込み、期限内に成果を出す力。M&A後の統合や全社DXプロジェクトなどで特に必要となります。
事例1
あるメーカーのDX部門では、コンサル出身の中途採用者に新規データ基盤の導入を任せました。社内の技術部門と外部ベンダーの間をつなぎ、経営層に意思決定の材料を提示。結果、わずか半年で全社横断のデータ活用体制を構築し、経営陣から社内にいなかったタイプの人材と高い評価を得ました。
事例2
大手食品メーカーでは、元戦略コンサルタントが経営企画に転職。中期経営計画を部門横断で数値化し、経営会議の意思決定スピードを向上。役員層から意思決定が早まったと評価され、入社2年目で部長に昇進したケースもあります。
「コンサルから事業会社への転職」の活動でつまずきやすいポイント
コンサル出身者であっても、転職活動では壁に直面することがあります。特に給与・キャリア観・企業理解のギャップが大きなつまずき要因です。
主なつまずきポイント
- サラリー水準の違い
コンサル時代の給与水準より下がるケースが多い。特に外資戦略ファーム出身者は年収30〜40%減を受け入れる必要が出ることも。ご家族とのコンセンサスが不可欠となります。 - ポジションのミスマッチ
マネージャー経験があっても、事業会社では課長クラスからのスタートとなる場合も。権限範囲や影響力のギャップを理解しておく必要があります。 - 志望動機の抽象性
事業に関わりたいという漠然とした動機では不十分で、なぜその会社、その事業なのかを具体化することが求められます。
事例1
元総合系コンサルの40代シニアマネージャーは、給与水準を大幅に下げてでも転職したい意志がありましたが、家族から強い反対を受けて活動が難航しました。最終的に短期的な給与減と、中長期的なキャリアアップのバランスを家族と合意形成したことで、製造業の経営企画職に無事転職できたケースもあります。
事例2
戦略コンサル出身の30代男性は、事業会社を志望したがなぜこの企業かを説明できず、複数社で選考落ち。エージェントと面接対策を行い、その事業の将来性に共感し、具体的にどう貢献できるかを言語化することで、最終的にIT企業の新規事業部内定につながりました。
「コンサルから事業会社への転職」の後につまずきやすいポイント
無事に転職を果たしても、入社後のカルチャーギャップや働き方の違いに戸惑うケースは少なくありません。
主なつまずきポイント
- 働き方のギャップ
スピード感や意思決定プロセスが遅く見える。承認フローが長く、なぜ今すぐ決めないのかとストレスになることも。 - 成果の測り方の違い
コンサルでは「提案資料の質」や「期限遵守」で評価されるが、事業会社では「周囲を巻き込みながら合意形成できたか」が重視される。 - 企業カルチャー
オーナー企業や大企業特有の文化に馴染むのに時間がかかる。特に根回しや社内政治の要素に戸惑う方も多い。
事例1
元戦略コンサルの方が大手電機メーカーに転職。コンサル時代は3カ月で成果を出すペースだったのが、事業会社では年単位のプロジェクト進行。最初はなぜこんなに遅いのかと苛立ちを覚えたが、上司から関係部署の合意形成こそが成果と助言され、視座を切り替えたことで定着につながりました。
事例2
元総合系コンサルの女性が人材サービス企業に転職。入社直後は社内政治の多さに違和感を抱いていましたが、先輩社員のサポートを受け、社内ネットワーク構築も業務の一環と捉え直すことで順応しました。半年後には全社横断プロジェクトのリーダーを任されました。
「コンサルから事業会社への転職」をする時に抑えるべきポイント
転職を成功させるために、どのような点を事前に整理すべきでしょうか。キャリアの優先順位づけと情報収集がカギとなります。
抑えるべきポイント
- 実現したいことの明確化
なぜ今コンサルを辞めて事業会社へ行きたいのかを言語化する。 - 優先順位の設定
給与・勤務地・事業テーマなど、妥協できる点とできない点を明確にする。 - 長期的なキャリア像
5年後・10年後にどのポジションを目指したいのか。経営企画か新規事業か、事前に整理しておく。 - リアルな情報収集
エージェント経由やOB訪問等で、表に出ないカルチャーや働き方を確認。公式HPや求人票だけでは分からない「生の声」が重要となる。
事例1
弊社にご相談いただいた方の中には、転職前に経営企画か新規事業かで迷っていたケースがありました。最終的に経営陣と近いポジションで事業を俯瞰する経験を積みたいと優先順位を明確にした結果、希望通り、経営企画室への転職に成功。意思決定の場に立ち会えるポジションを得ることができました。
事例2
40代での転職希望者は、給与減を受け入れてでも専門領域で挑戦する覚悟を明確にし、ヘルスケアベンチャーのCOOに就任。入社直後から資金調達を成功させ、コンサル経験をダイレクトに活かしています。
おわりに
コンサルから事業会社への転職は、「給与水準」「働き方」「カルチャー」などでギャップが生じやすい一方、事業を動かす当事者としてのやりがいを得られる大きなチャンスでもあります。
重要なのは、転職によって何を叶えたいのかを明確にし、その優先順位を整理すること。そして事前にリアルな情報を収集することで、入社後のギャップを最小限に抑えられます。
もし現職で将来像が描きにくいと感じられている方は、転職を前提とせずともキャリアの棚卸しや情報収集から始めてみてください。私たちエージェントは、その第一歩をサポートする存在でありたいと考えております。