PEファンドの選考内容(面接・モデリング)【コンサル/投資銀行の出身者が対策すべき点】

プライベートエクイティファンド(以下 PEファンド)の選考内容は表に出る事が少ない一方で、選考対策なしでオファーをもらえるケースは稀でしょう。
そこで、今回はPEファンドの主に投資チームにおける選考試験の概要、面接内容などをご紹介します。また、コンサルティングファームおよび投資銀行出身者それぞれついて、選考で気を付けるべき点もお伝えします。
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PEファンドにおける選考試験の概要
選考試験は基本的にシニアメンバー全員との面接をします。ファンドによっては投資提案のテスト、LBOモデルの作成テストが課される事が多いです。投資提案や財務スキルのチェックテスト以外にも、一部のコンサルティングファーム出身者が多いファンド(某日系大手PEファンド)では、外資系投資銀行や外資系コンサルティングファームの新卒採用等で行われる論理テスト・SPIのようなものが行われます。このようなSPIのような試験は面接プロセスの前に行われるため、この試験に落ちてしまうと、そもそも面接を受ける事ができません。
実際にPEファンドに転職された方からは、「このようなSPIのような筆記試験はマークシート方式であり、グロービスが出している経営学に関する試験が良い対策になりました」という声もありました。
面接に関してはシニアメンバーから面接が始まるか、アソシエイトクラスからの面接開始になるかはファンドによりますが、多くの場合はシニアメンバーから開始されます。最初はファンドの紹介を行う場合もあり、なぜPEファンドなのか、という点を中心に質問される事が多いです。
面接ではパーソナリティも重視されます。ファンドによっては最終の選考局面においてシニアメンバーとのディナーが実施されるケースもあります。実際にどこのPEファンドがこのような類型の選考を行うかは、転職エージェントやヘッドハンターに確認した方が良いでしょう。
他にも、PEファンドの選考で特徴的なのが、エクセルを用いたLBOモデル作成です。こちらも後ほど解説しますが、PEファンドではレバレッジドバイアウトという手法を基礎にして投資を行うため、その手法を用いた投資リターンの計算をどれだけ丁寧に行えるのかが評価のポイントになります。特に投資銀行でもファンドカバレッジチームや、M&AアドバイザリーのチームでPEファンド関連の案件の経験がないと、中々触れる機会がありませんので、LBOモデルの作成については簡単なモデル作成からスタートし、実務使えるモデルの作成ができるように、日ごろからLBOモデルを作成してみる事が肝要でしょうか。
また、周りにPEファンドで働いている友人や先輩がいる場合は、アドバイスや、志望動機・実際のモデルテストの懸念点を確認してもらう事をおすすめします。
PEファンドの面接・テクニカルチェックの内容
ファンドにもよりますが、多くはシニアメンバー全員との面接+アソシエイト・シニアアソシエイトとの面接が行われます。シニアメンバーとの面接ではテクニカルチェックが行われる場合もありますが、多くは「なぜPEファンドなのか」、「なぜうちのファンドなのか」、「現職でどのような役割を担う事が多かったか」、「自分の強みは何か」、「投資するセクターに関してアイデアや投資仮説はあるか」等、さまざまな観点での質問があります。
テクニカルチェックについては、簡単な数値例からリターンを試算させる場合もありますし、ファンドによっては四季報を渡されて、投資したい会社をその理由と共に選び、エントリー時にどの程度エクイティが必要か、デットは結果としてどの程度銀行から引っ張れるか、目標のリターンを達成するためにEBITDAはどの程度伸ばす必要があるかという事を簡単に口頭試問するケースもあります。
特にLBOにより買収するケースは、事業承継なのか、ノンコアアセットのカーブアウトに伴う買収か、株主構成から考えてどのようなストラクチャーが望ましいかという点を投資アングルとして述べる事ができるとより印象がより良くなるでしょう。
ストラクチャーについても、税制適格のストラクチャー、TOB(株式公開買い付け)により買収した場合はどのようなスケジュール・論点があるかという事も頭に入れておく必要があるでしょう。金融の専門的な知識は投資銀行出身者の方がよく知っており有利ではある一方、コンサルティングファーム出身者はバリューアップや経営戦略の面でインサイトを面接で伝える事で有利になるになるでしょう。
コンサル出身者がすべき対策:財務三表モデリングは勿論、「なぜPEか」の理由説明
コンサル出身者は現職を通じて経営戦略や業務改善、PMIに関する業務に慣れていますので、投資仮説を作成する際のバリューアップを含めた施策や、事業の戦略に関しては一定の対策をしていれば問題はないかと思いますが、財務的なスキルに関しては触れる機会が多くないため、財務三表モデルを通じて、PLだけでなくBSやキャッシュフロー計算書の予測を行う必要があります。
最近では海外のウェブサイトで財務モデリング対策やスキルアップ支援のプラットフォームもあるため、多少のお金はかかりますが、そういったプラットフォームを用いて練習する事も重要です。
PEファンドでは、投資した後のリターンの分析等が肝要になるため、投資するセクター、投資対象となりうる企業を選択して、その理由をしっかりと回答できるかどうかも面接や選考試験での重要な判断基準になります。
IRRとキャッシュマルチプル(MOIC)の計算方法などの投資採算の簡単な計算が即座に行えるようにすると好印象でしょうか。
また、コンサルティングファーム出身者が陥りやすい失敗として、経営に携わりたいという点を強調しすぎるケースがあります。「経営に深く関与したいのであれば、事業会社の経営企画か、総合商社にでも行ったらどうか?」と返されてしまう方も中にはいるため、「なぜPEファンドなのか」という点は具体的に説明できるように準備しておく事をおすすめします。
事業会社とは異なりPEファンドは金融業であり、ファンドに出資しているLP(Limited Partner)に対して期待されるリターンを実現する事が第一義的な目標になります。コンサルティングファームで培った業務改善や経営戦略の策定をいかしながら、投資先の選定、投資後に企業価値を向上するためのバリューアップを外部の専門家と協働しながら実現するという役割があるという事を認識しておくべきでしょう。
投資銀行出身者がすべき対策:LBOモデルはスクラッチで最初から作成できるようにするなど、油断は大敵
投資銀行出身者は、財務スキルに関しては、あまり懸念する点はないと言えますが、LBOモデルの作成テスト等、現職で作り慣れていない場合は注意する必要があります。モデルテストに関しても、投資銀行出身者でも油断すると落ちてしまうケースもあるため、地道に練習をする事をおすすめします。
LBOモデルのテンプレートは海外のウェブサイトにも参考となるものがあります。PEファンドの選考においては基礎的なものを把握し、それらをスクラッチで作成できるようにする事が重要です。投資銀行の実務で何度かLBOモデルを作成した経験がある場合でも油断せず、モデルテストでの質疑応答に対応できるように準備した方が安心でしょう。
他にも、テクニカルチェックでは、今まで関与したM&Aや資金調達の案件における「自分の役割」、バリュエーションや財務モデリングのスキルや案件を執行する際に「何に留意したか」、なぜアドバイザリー業務ではなく「プリンシパル投資であるPEファンドなのか」という点を聞かれます。
ファンドによっても投資の大義や、投資アングルも異なりますので、実際に面接を受ける際には自分が選考を受けるファンドの過去の投資実績、投資実績が少ない場合は逆質問リストを作成し、シニアメンバーに確認したい点を明確にしておく事をおすすめします。
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今回はPEファンドにおける選考内容についてお伝えしました。
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