経営戦略からM&A、チェンジマネジメントまで幅広くCEOアジェンダを支援するアビームコンサルティング株式会社 財務戦略・構造改革 戦略ユニット(以下、CF&T SU)。今回は、CF&T SUの中でもコーポレートファイナンスを担当しているチームへのインタビュー。
同チームのダイレクター 田邉俊史様にアビームコンサルティング(以下、アビーム)のM&Aコンサルティングの特徴や実際の案件事例についてお聞きしました。
※2025年2月時点での内容です
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アビームの「リアルパートナー」を期待し、M&Aの「意義」明確化から支援を依頼される
廣瀬
田邉様のご経歴をお聞かせください。
田邉様
私は、20代の後半から30代の前半にかけて4年ほど、当時所属していた事業会社からコンサルティングファームに出向するという経験をしましたが、その後証券会社の投資銀行部門で長く業務をし、それから本格的にコンサルティングの世界に戻ってきました。実はアビームは2回目の入社になるのですが1度目は2013年から3年強、その後外資系を含むいくつかのファームを経て2020年にアビームに戻りました。
現在所属しているCF&T SUでは、経営戦略や事業戦略の立案から、戦略実現のためのM&A実行支援、バリューアップのための構造改革支援を行っています。私自身は主に戦略そのものの立案とM&Aの実行(ターゲットスクリーニング、FA、ビジネスDD等)領域の支援を担当しています。
廣瀬
CF&T SUのミッションや方針について教えていただけますか。
田邉様
アビームへ相談してくださるクライアントは、証券会社やFASに依頼するクライアントとは明確な違いがあります。それは、ディールプロセスにおける交渉や社内の意志決定といったプロセスの支援に加えて、「この事業を獲得することでこういう戦略を実現できる」という仮説ベースでの戦略的意義をプロの目から客観的に検証してほしいということも併せて期待されているという違いです。昨今のコンサルはソリューション売りの色が非常に濃くなっているように感じますが、CF&T SUのベースにあるのはやはりクライアントの経営課題の解決です。
M&Aは戦略の実行手段の一つでしかありません。戦略が曖昧なままでディールを進めることは、本来あり得ないですし、それをしっかりと検証したいというクライアントの要望に応えていくのがCF&T SUのミッションです。
廣瀬
コーポレートファイナンス領域に関しては、他大手ファームと比較した際にどうしても後発の印象をクライアントから持たれるとは思いますが、その辺りはどうお考えでしょうか。
田邉様
確かに、そういった印象を持たれている部分もありますが、実際に相談してくださるクライアントがいるのは、私どものサービスが、戦略面の支援も含めたクオリティーを他のファームよりも評価いただいているからだと自負しています。
アビームは幅広いインダストリーに対し、多くのコンサルタントがクライアントと接点を持っているため、M&Aに関する潜在的なニーズも以前から存在していました。しかし、専門的にM&Aサービスを強く打ち出してこなかったために、拾いきれなかったニーズもあったと感じています。2024年4月に組織が整備され、明確なメッセージが発信されたことで、これまで拾いきれなかったクライアントのニーズと対峙する機会が増え、正のサイクルが大きくなっています。この実績が社内の意識を変えており、われわれは今後さらに多くのクライアントニーズに応えていきたいと考えています。
カーブアウト案件では「切り出す前」から携わるため、ビジネスの醍醐味を味わえる
廣瀬
コーポレートファイナンスチームが手掛ける案件のトレンドや傾向についてお聞かせいただけますか。
田邉様
当然ながらストラテジックとしての事業会社とPEファンド等のファイナンシャル両方のクライアントがいます。
事業会社からは、テック系スタートアップの買収等のご相談が増えています。投資先の会社が持っている技術を自分たちの業務にうまく活用して、自社の付加価値を向上させたいという動機によるものなので、単に「買収対象となる会社という箱を評価する」というM&Aとは目線が違います。また、近年は東南アジアのテック系ソリューションに投資し、それを持ち込んで日本で市場を作りたいという相談も増えています。
廣瀬
事業会社向けのスタートアップ投資支援案件が増えているとのことでしたが、具体的にどのような支援を行っているのでしょうか。
田邉様
基本的にはFAプラスBDDという感じでしょうか。まずはスタートアップの会社が持っているビジネスやソリューションそのものの分析です。スタンドアローンの分析だけでなく、クライアントが活用した時にどういうことができるか、将来的な期待に応えられる会社なのかどうかを見極めます。要はマネジメントのビジョン含めたビジネス面の分析です。
もう一つは、いわゆるファイナンシャルの部分ですが、優先株で出資する場合の適正な価値などを含めFAとしてディールプロセスをしっかり支援するのが通常のスコープです。
廣瀬
ファンドからの案件はいかがでしょうか。
田邉様
ファンド経由の案件もよく相談いただいており、こちらはビジネスDDのご支援が多いです。
廣瀬
カーブアウト案件もあるのでしょうか。
田邉様
あります。FASが支援しているカーブアウトは、もう切り出すことが決まった後での実行がほとんどだと思うのですが、われわれはもっと手前から支援します。
たとえば、本社でほそぼそと運営している事業があったとして、その事業強化のため、責任を明確化するためや意思決定を迅速化するために適切な組織形態を考えたい、といったレベルの段階でご相談が来ます。つまり、「切り出すことありき」ではなく、「その事業にとって一番いい組織形態は何か」から検討するケースが多いです。
また、いざ切り出すことになっても、親会社と子会社の関係性について検討すべきものはたくさんあり、時には検討の段階で社内の抵抗にあって実行に至らないケースもあります。社内政治的な部分も含めた意思決定プロセスに深くかかわることも含めビジネスの醍醐味を味わえます。
廣瀬
M&A支援において、外部パートナーや社内の他チームと連携するケースもあるのでしょうか。
田邉様
はい。外部パートナーとのネットワークも広がっています。協働して投資家を見つけ特定アセットの売却を支援するケースもあります。今後はこうした外部のネットワークも活用しながら、単に負債の減免にとどまらない事業再生系の案件にも携わっていこうと考えています。
また、社内でのコラボレーションも盛んです。ソフトウエア業の買収や投資におけるプロジェクトではITのDDとしてデジタルテクノロジーBUと連携しています。インシュアテック系海外ベンダーへ出資する案件では、ビジネス面はインシュアランスチームにリードしていただき、ファイナンス面はCF&T SUが担当する座組になりました。むしろ、CF&T SUだけで完結するケースは少ないです。
M&Aを会社の売買ではなく、「事業の売買」として捉えられる方を求めている
廣瀬
現在、コーポレートファイナンスチームが求める人材について教えていただけますか。
田邉様
ビジネスかファイナンス、どちらかに強みを持っている方を求めています。たとえば、これまでFASで経験を積んできたけれど、もっとビジネス面に食い込んでいきたい方や、逆にファイナンスのナレッジを強化してもっとコンサルティングの幅を広げていきたい方に来ていただきたいです。
廣瀬
CF&T SUでは、ビジネスとファイナンス、双方の経験を積めることが大きな魅力ですね。
田邉様
先ほどもお話ししましたが、当社にご相談に来てくださるクライアントは、ディールプロセスに加えてビジネスの検証もしっかり支援してほしいというケースがほとんどです。「アビームのM&A」はそういうブランドを目指したいと思っています。
廣瀬
パーソナル面で求めていることも教えていただけますか。
田邉様
覚悟がある方ですね。新しいチャレンジをしてくださる方を前提にしていることもあり、専門外の領域をキャッチアップしていく強い覚悟があるかどうかを面接で見ています。
与えられたことだけではなく、常に自身の成長に必要なことを自分の頭で考えて行動できる方を求めています。
廣瀬
入社後はどのようにキャッチアップされるのでしょうか。
田邉様
CF&T SUに必要な知識は、アカウンティングというより、アカウンティングをコーポレートファイナンスとして使うための要素であって、ビジネス抜きでは語れません。OJTとしてプロジェクトワークを通じて学んでいただくのが、メンバーにとって一番いい経験だと思うので、それを最も重視しています。特に現在は、キャッチアップ中のメンバーも多いので、チーム内で知識や経験をシェアしていこうという意識が強いと思います。「この本に書いてあることが非常に分かりやすかった」とか、立場に関係なく共有し合えるコミュニティーがアビーム全体のカルチャーとして根付いています。
廣瀬
最後に、コーポレートファイナンスチームに興味をお持ちの方にメッセージをお願いいたします。
田邉様
M&Aを会社の売買ではなく、「事業の売買」と捉えられる方に来ていただきたいです。結果として会社という箱を売買することは多いですが、あくまで対象は事業と捉え、その事業がクライアントをどう成長、変革させるのかという視点が大切なのです。
そして、CF&T SUは「出来上がった組織」ではなく「これから作っていく組織」です。そこに面白さを感じていただける方、そして、自分自身も成長していこうという覚悟のある方と一緒に働きたいです。