デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 M&Aユニット リーダー インタビュー/「M&Aは経営変革のための手段」デロイトの総合力が生み出すEnd to Endの伴走支援

経営環境が激しく変化する現代、日本企業の競争力強化と企業価値向上のための有効な手段としてM&Aの重要性が高まっています。デロイト トーマツ コンサルティング合同会社(以下、DTC)のM&Aユニットは、単なるM&Aの取引(ディール)支援にとどまらず、戦略立案からPMI(Post Merger Integration)まで一貫した支援を提供することで、クライアント企業の経営変革を実現しています。同ユニットは、多様な専門性を持つメンバー約150名が在籍し、「日本企業をもっと元気にする」というビジョンのもと、企業のグローバル競争力強化に貢献しています。
今回は、M&Aユニットのリーダーである執行役員 汐谷俊彦様に、ユニットの組織戦略や他部門との連携体制、そして企業価値向上に向けたM&Aの戦略的活用について詳しくお話を伺いました。
※2025年2月時点での内容です
Index
経営変革ツールとしてのM&Aを追求し、より包括的な支援ができるDTCを選択
アクシス
まずは、汐谷様のご経歴についてお聞かせいただけますか。
汐谷様
新卒でコンサルティング業界に入り、総合系ファーム、戦略系ファームを経て2015年にDTCに転職しました。前職からM&A領域に携わり、気づけば20年近くになります。
アクシス
DTCを選んだ理由は何でしたか?
汐谷様
「より大規模かつグローバルにダイナミックな仕事をしたい」という思いがありました。かつては士業の延長のように捉えられることもあったM&Aですが、今では日本企業が経営変革の手段として本格的にM&Aを活用するようになり、その重要性がさらに高まっています。
ただ、前職の戦略系ファームでは個人でクライアントと相対し価値を提供する環境でした。一方、DTCはグループ全体の知見やサービスを融合し、チームとして企業変革を実現していくMDM(Multi-Disciplinary Model)戦略を掲げています。さらに、M&Aをグローバル規模で、かつEnd to Endで包括的に支援できる点にも魅力を感じ、DTCであれば自分の力を最大限に発揮できる環境だと考えて参画を決めました。
アクシス
前職の戦略系ファームでは、M&Aの中でも戦略的な側面を中心にご経験されてきたのでしょうか。
汐谷様
そうですね。主にビジネスデューデリジェンス(BDD)を担当し、M&A前の事業分析や意思決定の支援が中心でした。もちろんM&Aはトランザクション(取引)をきちんとやることも重要ですが、実はそれ以上に大事なのはその前後のプロセスです。
M&Aには「適切な戦略」と「買収後の統合(PMI)」の2つが欠かせません。戦略が間違っていれば、どんなにうまく取引を進めても成功しませんし、買収後にPMIやバリュークリエーションをしっかり進めなければ、M&Aを通じた企業価値向上にはつながりません。そういった点を俯瞰的に捉えることが、M&Aの醍醐味だと考えるようになり、DTCでさらに視野が広がりました。
アクシス
M&Aにおいて「前後のプロセスが大事」だと気づかれたきっかけがあったのでしょうか。
汐谷様
日本企業のM&Aは、特に2000年代から2015年頃にかけて海外企業の買収が増えたものの、多くの企業が減損を計上し、成功確率は決して高くありませんでした。
過去に経済産業省と共同で調査・分析を行ったことがあるのですが、うまくいった企業とうまくいかなかった企業の経営層にインタビューやアンケートを行った結果、「事前戦略の精度」 と 「買収後の統合プロセスの徹底」 が成功の要因であることが明確になりました。
M&Aは大学入試と似ています。合格(取引成立)がゴールではなく、その後に「何を学び、どう成長するか(統合プロセス)」が最も重要です。同様に、M&Aもディール成功が目的ではなく、その後の統合とバリュークリエーションこそが企業価値向上の鍵を握っています。
アクシス
こうした取り組みを通じて、DTCのM&Aユニットが目指していることを教えていただけますか。
汐谷様
私たちのビジョンは、「日本企業をもっと元気にする」です。
周知の通り、かつて日本企業は世界の時価総額ランキングの上位を占めていましたが、今ではランキングの上位はほとんどがアメリカや中国の企業で、日本企業の存在感は薄れつつあります。この現状を変え、世界のベンチマークとされるような存在になる日本企業を1社でも2社でも作っていくお手伝いをしたい、と考えています。
そのために必要なのが、企業価値の向上です。そして、企業価値を高めるための最も有効な手段の1つがM&Aです。もちろん、オーガニック成長(自律的成長)も重要ですが、それだけでは限界がある。よりスピーディーに企業の競争力を向上させるためには、M&Aという「外科手術」が不可欠です。実際、多くの経営者の方々も、M&Aの重要性を認識し始めていますね。
End to Endの支援体制でM&Aの全プロセスに関与
アクシス
改めて、M&Aユニットについて教えていただけますか。
汐谷様
私たちM&Aユニットは、M&Aプロセスのスペシャリストにとどまらず、M&Aや組織再編を活用して経営課題の解決や企業変革を成功に導くために「Board Roomアドバイザー」を目指すチームです。現在、ユニットには約150名のメンバーが在籍していますが、専門領域ごとにサブユニットを設けることなく、戦略立案からディール、PMIまで、End to Endで支援する体制を取っています。
アクシス
なぜ、サブユニットを設けていないのですか。
汐谷様
もちろん、メンバーそれぞれに専門性はありますが、経営全般を理解しないと経営者と相対できませんので、M&Aの前後を含めた広い経験が積めるよう、リソースを一元管理し、各フェーズを横断的に経験できる人材育成モデルを採用しているからです。そのため、特定のサブユニットに閉じることなく、多様なプロジェクトを経験できる仕組みになっています。
アクシス
M&Aユニットがインダストリーと統合しているのはなぜでしょうか。
汐谷様
まず大前提として、クライアントに対して業界ごとのトレンドや競争環境、KSF(成功要因)を深く理解し、それを語れなければ意味のある戦略やM&Aを描くことは不可能だからです。
たとえば、自動車業界のM&Aを考える場合、EVシフト、サプライチェーンの変化、競争環境の変化など業界全体の動向を理解し、その中で最適なM&Aのシナリオを描けるかどうか。これは消費財、化学、ライフサイエンスなどあらゆる業界で共通です。
また、インダストリー側との距離が近くなったことで、コミュニケーションの機会が増え、より早い段階から相談が寄せられるようになりました。たとえば「この業界で再編が起こりそうだが、どのように対応すべきか?」といった段階から話が始まり、それが具体的な案件へとつながるケースも増えています。実際に、こうした環境変化が実績としても反映されていると感じています。
アクシス
グローバルとの連携についても教えていただけますか。
汐谷様
最近、約1兆円規模の事業のカーブアウト売却案件を約1年かけて進めました。非常に大規模なプロジェクトで、クライアントの関係者を含めると、オンライン会議には100人以上が参加することもありました。
この案件は日本国内だけでなく、北米、欧州、中国、インド、東南アジアなど、さまざまな地域の拠点が関与し、各地のメンバーがプロジェクトに参加しました。時差の影響もあり、調整が難しい部分もありましたが、チーム全員が一丸となって取り組み、無事に完了することができました。
こうした大規模なカーブアウト案件は今後さらに増えていくと考えています。特に、今回のような極めて難しい案件を成功させられる企業は限られており、DTCならではの強みが発揮できたと感じています。
デロイトの強みは、FA・ストラテジーユニットと一体となった総合力
アクシス
同じデロイト トーマツ グループ内にはデロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社(FA)がありますが、それぞれの役割や連携の仕方について教えていただけますか。
汐谷様
FAはM&Aをファイナンスの観点から支援する組織で、財務デューデリジェンス(財務DD)、財務アドバイザリー、ネゴシエーションのサポートなど、主にトランザクションにフォーカスした業務を担当しています。
一方で、M&Aユニットは戦略立案から、PMIまで、M&Aを通じた企業変革の実現を目指し、クライアントと長期的に伴走する立場です。単なるアドバイザーではなく、クライアントのパートナーとして現場に入り込み、一緒に汗をかきながらディールのその後までを支援するのが特徴です。場合によってはクライアント先に常駐し、PMIやバリュークリエーションを支援していくケースもあります。
FAとM&Aユニットの間にはオーバーラップする部分もありますが、それぞれの強みを生かし、グループとして最大限の力を発揮できるような体制を構築しています。
アクシス
DTCのストラテジーユニットとはどのような関係なのでしょうか。
汐谷様
ストラテジーユニットは、いわゆる戦略コンサルティングを専門とするチームで、M&Aユニットとオーバーラップする部分も多いです。
M&Aユニットは、M&Aや再編を中心にビジネスを展開するポートフォリオを持っていますが、ストラテジーユニットはより幅広い戦略コンサルティングを担っています。そのため、M&Aの戦略立案やターゲット選定、BDDのフェーズでは、ストラテジーユニットと密接に連携し、最適な体制でクライアントを支援しています。
また、ストラテジーユニットとM&Aユニットは事業管理上のP/Lを共有しており、業績も一体的に管理されています。そのため「自部門の成績が良ければそれでいい」という考え方ではなく、グループ全体としての最適解を考えながら動く仕組みになっています。
アクシス
FAやストラテジーユニットと連携することで、M&Aユニットの支援の幅も広がるのですね。
汐谷様
そうですね。そもそもデロイトには「Collaborate for measurable impact」というシェアードバリュー(共有価値)が根付いているのです。そのためストラテジーやFA、その他の専門部門と連携しながら、プロジェクトごとに最適なチームを編成することが可能になっています。つまり、困った時にお互いに助け合うカルチャーが浸透しており、「自分たちのユニットだけで仕事を取る」といった考え方ではなく、常に「クライアントにとっての最適解は何か?」を優先して考える組織になっています。
M&Aの最終目標はディール成立ではなく、企業価値向上にある
アクシス
M&Aの領域の中で、特に案件として多い領域はどちらになるのでしょうか。
汐谷様
「このステージが特に多いです」というわけではなく、戦略立案・ディール・PMIのそれぞれが3分の1ずつくらいのボリューム感だと思っていただければいいですね。
プロジェクトの進行に伴う規模変化について言うと、戦略フェーズは比較的少人数で進め、ディールフェーズに入ると関与する人が増え、PMIフェーズになるとさらに規模が大きくなる傾向があります。
ただ、PMIに関しては、これは経営そのものなので、すべてをコンサルティングファームに委ねるのではなく、企業が主体的に進めるケースもあり、「ここは外部の専門家の知見が必要」という重要なポイントに絞ってコンサルティングファームを活用する、というスタンスを取るケースもありさまざまです。
アクシス
今までのお話を伺っていると、M&Aを突き詰めたい方にとっては御チームが最適な環境だということが伝わってきますね。
汐谷様
そうですね。ただ、私たちは「M&Aをやること」自体が目的ではなく、最終的には企業価値を高めることがゴールだと考えています。その中でM&Aは最も有効な手段であり、クライアントの成長に大きく寄与するからこそ、この領域に注力しています。
たとえば、経済産業省が進めている「価値創造経営の推進に向けて」の検討の中で、ROE(自己資本利益率)やPBR(株価純資産倍率)の改善に向けた分析を行っています。その結果、PBRやROEを向上させている企業の多くが、収益性の低い事業やノンコアアセットを適切に売却し、経営資源を最適化していることが明らかになりました。つまり、企業価値を高めるためにM&Aが有効であることは、データとしても裏付けられています。
とはいえ、繰り返しになりますが、M&Aの実行だけがすべてではなく、企業価値向上には、M&A成功の前提となる事業ポートフォリオのあるべき姿の検討や、見直し、トランスフォーメーションを粘り強く実行する地道な取り組みが必要になります。実際に、M&Aを含まない中期経営計画は、もはやほとんど存在しないと言っても過言ではありません。どの企業も、今後3年間でどのようにインオーガニック(非自律的)な成長を遂げるかを真剣に考えています。
このように、戦略とM&Aは切り離せない関係にあります。そのため、M&AユニットではM&A戦略の立案、ターゲット選定、事業の取捨選択、投資方針の決定まで幅広く支援しています。M&Aを通じた企業変革を推進する立場として、クライアントと最適な成長戦略を共に考え、実行をサポートすることが私たちの役割です。
アクシス
他のコンサルティングファームと競合した際に、DTCが特にクライアントから評価されているポイントや、総合力が生かされた事例について教えていただけますか。
汐谷様
ディールが完了した後、通常はPMIや企業変革のフェーズで別のコンサルティングファームやアドバイザーを選ぶケースも少なくありません。しかし、DTCはM&Aのトランザクションを支援するだけでなく、その後の統合や経営変革まで一貫して伴走できる体制が整っているため、クライアントが引き続き私たちをパートナーとして選んでくださるケースが多いのです。
たとえば、以前支援した案件の1つに、ある日本企業が海外企業を買収したケースがありました。その買収先は赤字事業を抱えており、統合後の成長が課題でした。そこで、約2年かけて「コスト構造改革」「プライシング戦略の見直し」「プロダクトポートフォリオの最適化」「営業改革」「管理会計の強化」などに取り組んできました。
その結果、買収先企業の営業利益率は10%改善し、大幅な業績向上につながりました。さらにその成果が認められ、支援当時のプロジェクトリーダーが後にアジアパシフィックのCEOに昇進するなど、企業価値向上だけでなく、経営層の成長にも貢献した点も印象的でしたね。
このようにDTCの強みは、ディール成立後も継続して伴走し、M&Aを単なる取引ではなく、企業変革のツールとして活用する点にあります。ディール完了後も継続的に支援できる体制こそがDTCの最大の価値だと考えています。
日本企業の変革を支え、グローバルな環境で挑戦したい人材を求めている
アクシス
採用についてお伺いできればと思います。どのような経験やマインドを持った方が採用ターゲットになるのでしょうか。
汐谷様
コンサルティングファームとして基本的なコンサルティングスキルは重要です。すでにコンサルティング業界にいる方であれば、こうしたスキルは一定レベルで身についていると思いますが、事業会社出身の方の場合は、「ロジカルシンキング」や「仮説思考」といった思考法に慣れているかどうかがポイントになります。ただし、今すぐに完璧である必要はなく、将来的にそうしたスキルを伸ばしていけるポテンシャルがあるかを見ています。
また、事業会社のご経験者であれば、経営企画やM&A、財務など経営に近い領域での経験があると親和性が高いですね。ただ、それ以上に大切なのは、過去の経験や成功体験に固執せず、新しい環境に柔軟に適応する姿勢です。
特に事業会社で成功してきた方ほど、自分のやり方に自信やプライドがあるものですが、コンサルタントとして成長するためには、それを一度アンラーン(学び直し)し、謙虚に学ぶ姿勢が求められます。この「柔軟性」と「謙虚さ」は人間力の部分ですが、最終的にはクライアントの経営層から信頼される人材になるための重要な素養です。
すでにコンサルティング経験をお持ちの方には、より大きな舞台で社会にインパクトを与える仕事がしたい、グローバルな環境で挑戦したいという志を持った方に来ていただきたいと思います。
アクシス
最後に、ユニットに興味をお持ちの方にメッセージをお願いいたします。
汐谷様
「世の中に影響を与える仕事がしたい」という強い意欲を持つ方に、ぜひ仲間になってほしいですね。コンサルティングは決して楽な仕事ではありませんが、だからこそ、厳しい環境に飛び込む勇気や、成長し続ける覚悟が求められます。
個人としてクライアントから指名される、この厳しい世界で私たちは戦っています。「今の自分を超えて成長したい」と思える方なら、私たちは全力でサポートします。共に、日本企業をグローバルでリスペクトされる存在にしていきましょう。

外資系コンサルティング会社等を経て現職。製造業/エネルギー/化学/ヘルスケア/商社/プライベートエクイティなど幅広い業界に対して成長戦略策定、事業ポートフォリオ見直しといった戦略立案や、デューデリジェンス、PMI計画策定および実行支援・買収後のオペレーション改善といったM&Aライフサイクル全領域において幅広い経験。東京大学工学部卒。

DTCは国際的なビジネスプロフェッショナルのネットワークであるDeloitte(デロイト)のメンバーで、日本ではデロイト トーマツ グループに属しています。DTCはデロイトの一員として日本のコンサルティングサービスを担い、デロイトおよびデロイト トーマツ グループで有する監査・税務・法務・コンサルティング・ファイナンシャルアドバイザリーの総合力と国際力を活かし、あらゆる組織・機能に対応したサービスとあらゆるセクターに対応したサービスで、提言と戦略立案から実行まで一貫して支援するファームです。4,000名規模のコンサルタントが、デロイトの各国現地事務所と連携して、世界中のリージョン、エリアに最適なサービスを提供できる体制を有しています。

アクシスコンサルティングは、コンサル業界に精通した転職エージェント。戦略コンサルやITコンサル。コンサルタントになりたい人や卒業したい人。多数サポートしてきました。信念は、”生涯のキャリアパートナー”。転職のその次まで見据えたキャリアプランをご提案します。
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社の求人情報
募集職種 | M&Aコンサルタント |
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職務内容 | M&Aユニットでは5つのオファリングを展開しており、様々な経営課題解決・企業変革プロジェクトに従事頂くことが可能です。 1.M&A Strategy 2.Strategic-Centric M&A Deal Execution 3.Merger for Growth 4.Strategic Reorganization 5.Technology-based M&A |
必要業務経験 | <ランク共通> ■マインドセット <Manager-up> ■求めるスキル ■求める経験(下記のいずれか) ・以下例示のようなコンサルティングファーム外の実務経験・マネジメント経験 (下記領域における経験をお持ちであれば尚良) ・M&A領域に関するコンサルティング経験・マネジメント経験 ・組織再編領域に関するコンサルティング経験・マネジメント経験 <Consultant / Senior Consultant> ■求めるスキル ■求める経験(下記のいずれか) |