【転職事例】”AIにフルベット”―外資系ERPで20年、メインストリームを見極めたベテランの新たな挑戦/株式会社エクサウィザーズ 執行役員 福田政史様 インタビュー

【転職事例】”AIにフルベット”―外資系ERPで20年、メインストリームを見極めたベテランの新たな挑戦/株式会社エクサウィザーズ 執行役員 福田政史様 インタビュー

今回は、外資系ERPベンダーであるSAPで20年のキャリアを築いた後、AIベンチャーの執行役員へと転身した事例をご紹介します。

株式会社エクサウィザーズ 福田政史様は、新卒でSAPに入社。最初はインフラ基盤から始まり、アプリケーション領域、そしてプロジェクトマネジメントへと、さまざまな分野を「渡り歩く」ことでキャリアを広げてきました。常に新しい領域への好奇心を持ち続け、11つの領域を経験するとさらに次へと進むスタイルで、ERP(統合基幹業務システム)という厳格な世界で確かな技術基盤を培ってきました。

しかし20年のキャリアの中で、唯一「消化不良」だったと感じていたAI領域への想い思いを胸に、エクサウィザーズへの転職を決意。現在は「exaBase Studio」というAIプラットフォームの開発に携わり、「次のメインストリーム」としてのAIに全力で取り組んでいます。

今回の記事では、従来型ITとAIという異なる2つの世界の違い、技術のメインストリームが変わる時代における技術者のキャリア選択、そして「社会課題をAIで解決する」という使命に本気で取り組む企業文化について語っていただきました。

SAPで20年。広く深く、領域を“渡り歩く”キャリアでスキルを磨く

中村
福田様のキャリアについてお伺いします。最初に入社されたのがSAPとのことですが、なぜその企業を選ばれたのでしょうか?

福田様
正直、かっこいい理由ではないのです(笑)。私は工学部の大学院に進学したのですが、研究方針を巡って教授と折り合いがつかず、大学院1年生の5月頃に中退しました。その時点で、国内の大手企業の就職活動はほとんど終わっていて、オープンになっていたのが外資系企業だったのです。

工学部出身だったこともあり、自然と外資系のソフトウエアベンダーに目が向きました。当時、情報システムを学んでいた人間であれば誰もが知っているオラクルやSAPといった有名企業を検討する中で、先に内定をもらったSAPに入社を決めました。

中村
SAPでは、どのようなキャリアを歩まれたのでしょうか?

福田様
大学では半導体や回路設計といった分野に携わっていたため、最初はエンジニア寄りのポジションからキャリアをスタートしました。具体的には、SAPのアプリケーションを支える基盤。つまり、データベースやOSといったインフラ寄りの領域を3年ほど担当していました。

その後、徐々にアプリケーション領域にも広げていきました。SAPは、会計、ロジスティクス、人事など、非常に多岐にわたる業務領域をカバーしているため、横断的にさまざまな領域を経験しました。さらに、アプリケーション領域の上流にあたるプロジェクトマネジメントにも携わるようになり、気づけば20年間、下から上まで、幅広い経験を積むキャリアを歩んできた形になります。

中村
エンジニアとしてキャリアをスタートする際、専門領域を深めるスペシャリスト志向と、ビジネスサイドに上がっていく志向と、2つの選択肢があるかと思います。当時、どのようにお考えだったのでしょうか?

福田様
エンジニアの中には、特定の領域をとことん突き詰めていく方も多いですよね。ただ、私はある程度1つの領域を経験すると、次の領域に興味が湧いてしまうタイプでした。いろいろな領域をキャッチアップしていく中で、自分ができる仕事の幅をどんどん広げていきたいと考えていました。

もともと、どの領域でも課題整理や設計といったコンサルタント的な上流工程の仕事になじめたので、一つひとつの領域を制覇しながら、新しい領域へと“色”を変えていくようなキャリアの積み方をしてきましたね。

福田様

消化不良だったAIへの未練を胸に、新たな挑戦

中村
20年という長いキャリアの中で、エクサウィザーズへの転職を考え始めたきっかけは何だったのでしょうか?

福田様
大きく分けて2つあります。1つは、SAPの中でやり切ったという実感があったことです。社内で次にチャレンジできるロールを探してはいたのですが、20年の中で面白そうな領域は一通り経験してしまった感覚がありました。時期的にも、「次のキャリアを考えるべきタイミングだな」と感じていたのです。

もう1つは、AIへの思いです。SAPでのキャリア後半には、社内のAIチームをリードするポジションを担当していました。AIを広げていきたいという思いはあったのですが、当時のSAPでは、どうしてもAI領域はメインストリームではありませんでした。そのため、予算やリソース(人や時間なども含め)が十分につかず、「もっと本格的にAIに取り組みたい」という自分の気持ちとのギャップを強く感じるようになっていました。

つまり、SAPでの20年間という長いキャリアの中で、やりたいことはある程度やり切ったという手応えがあった一方で、唯一、消化不良だったのがAI領域でした。だからこそ、「AIに真正面から取り組める別の環境に身を置きたい」と考えるようになったのが転職を意識し始めたきっかけです。

中村
現在、各ベンダー企業でもAI機能を追加していくのが主流になっていますが、その中で難しさを感じることはありますか?

福田様
難しさはあると思います。私自身、前職では長らくAIではなくERP領域を担当していました。ERPの世界では、ルールベースでの厳格な管理が求められます。たとえば、1+1=2となることが必須です。そうした正確性が最も重要とされる世界です。

一方で、AIの世界では、必ずしも1+1=2になるとは限りません。データに基づく推論や予測など、「結果に揺らぎがある」ことを前提に設計されるため、求められる発想やアプローチ自体が大きく異なります。このギャップは、実際にかなり大きなものです。

エンジニアやコンサルタントが、それまでのERP的な感覚のままAIの仕組みをクライアント環境に導入しようとすると、どうしても戸惑いが生じます。私自身も最初は、その違いに戸惑いました。もちろん、前職のSAPは素晴らしい会社で、資金力もあり、顧客基盤も非常に充実していました。 ただ、あまりにERPに最適化された組織・カルチャーであったため、AI領域をスムーズに広げるには、やはり難しさがあったのも事実です。

たとえば、AIを本格的に展開するなら、組織を切り出して子会社化したり、完全に別のチームとして立ち上げたりと大きな意思決定が必要になります。そういった抜本的な変革をしない限り、外資系ソフトウエアベンダーがAI領域で大きく伸びていくためには、社内でさまざまなハードルがあると、当時は感じていました。

AIにフルベットしている組織だからこそ、本気で社会を変えられると実感

中村
前職でAIを続けていくことの難しさを感じる中で、なぜ最終的にエクサウィザーズへの転職を決められたのですか?

福田様
エクサウィザーズを選んだ理由は、まず「完全にAI専業である」という点です。スタートアップ/ベンチャーとして、事業のすべてをAIにフルベットしている。これは他社と大きく異なる点だと思いました。

そもそも、AI専業ではないソフトウエア会社やSIerが「片手間」でAIをやろうとしても、なかなかうまくいかないと感じていて。本当にAI事業を前に進めるには、それ相応の投資や覚悟、そしてカルチャーそのものが必要なのです。そうした考えを持っていた中で、エクサウィザーズの姿勢が自分の仮説とフィットしたため参画を決意しました。

中村
AIを専門とする企業は他にもある中で、なぜエクサウィザーズだったのでしょうか?

福田様
エクサウィザーズが手がけようとしているのは、非常に難易度の高いAIプラットフォームビジネスです。私が入社以来担当している『exaBase Studio』もその1つですが、こうしたプラットフォーム型の事業は、普通のAI企業ではなかなか手を出さない。なぜなら、プラットフォームビジネスはとにかく難しく、時間もリソースもかかるからです。

それにもかかわらず、あえてリソースをしっかり投入して挑戦している。これは、本当にAIで社会を変えていこうとしている会社でないとできないのではないかと。さらに、エクサウィザーズは特定の業界や用途に絞るのではなく、「社会課題をAIで解決する」というミッションのもと、非常に幅広い領域にチャレンジしています。

WebサイトやIRを見ても、「ミッションを掲げているだけではなく、実際に本気でやっているのだな」と感じられた。そこも大きかったですね。

中村
その「本気度」を具体的に感じたのはどのような部分ですか?

福田様
たとえば、介護や認知症といったテーマは、簡単にマネタイズできるような領域ではありません。しかし、そこに困っている人たちが確実にいるからこそ、エクサウィザーズはその領域に対しても投資をし、優秀な人材を集め、本気で課題解決に取り組もうとしています。

つまり、「課題があるところには、お金も、人も、時間も捧げる」。そういう姿勢が会社として自然に根付いているのです。これは、単なるビジネスとしてではなく、社会に対する責任感を持って取り組んでいる証拠だと思いましたし、純粋に「素晴らしい会社だな」と感じましたね。

福田様

次の主流はAI。キャリアを賭けてメインストリームに飛び込むという選択

中村
事業の起点を「社会課題」にフォーカスし、それに思いを持った人たちが集まり、AIを活用して課題解決を目指し事業をつくられているということですね。改めて、今、エクサウィザーズでAIに携わる魅力を教えてください。

福田様
私自身、20年間SAPに在籍していて、もしかしたらそのまま定年まで勤め上げることもできたかもしれません。しかし、2年前に思い切ってキャリアチェンジをして、本当によかったと思っています。

たとえば今、SIerやソフトウエアベンダーで長くキャリアを積んできた方が、「このまま進むのか、それともAIのキャリアに進むのか」を迷われているとしたら。私は迷わず、「AIの道に行くしかない」と言いますね。

なぜなら、従来型のITの仕組みを追求していくことは、これからの時代においては、かなりリスクが高いと感じているからです。AIによってシステム開発そのもののフェーズも変わり始めています。そんな中で、今このタイミングでAIの領域に一切タッチしないというのは、キャリアの上でも非常にリスクが高い選択だと思っています。

中村
従来のままでいるとリスクがある、ということですね。

福田様
そうですね。IT業界では、時代とともに「主流となるアーキテクチャ」や「求められる技術」が絶えず変化してきました。たとえば、かつてはホストコンピューターからクライアントサーバー型へ、さらにクラウドやモバイルへと、技術の主流は大きくシフトしてきています。

つまり、昔ながらの仕組みにとどまり続けていると、徐々に需要が減ってしまうということなのです。技術の領域で生き残るには、常に次のメインストリームをキャッチアップしていく必要がある。

そして今、AIが次のメインストリームになると考えている人が急激に増えていると感じています。高い確率でAIが中心になる時代が来るはずです。だからこそ、今このタイミングで、AIというテクノロジー領域に挑戦してほしい。そして、エクサウィザーズは本気で社会課題と向き合い、AIが本当に人のために使われる未来をつくっていけると、私自身は確信しています。

福田政史 様 株式会社エクサウィザーズ 部門執行役員 エンタープライズソリューション事業ユニット ユニット長

新卒でSAP社に入社し、ITコンサルタントとして20年の経験を積む。データベースやOSなどのインフラレイヤーから、アプリケーション、ロジスティックス、会計のコンサルタントチームのマネージャーやプロジェクトマネージャーなど、さまざまな役割を務めた後、2023年にエクサウィザーズへ入社。
現在はエンタープライズソリューション事業ユニットの部門執行役員として、営業組織及びプロフェッショナルサービス組織を管掌。

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