KPMGコンサルティング 代表取締役 関様、田口様 インタビュー【後編】/年平均20%成長の秘密と「3代表制」の真意—次の成長を支える「アカウントフォーカス」戦略

KPMGコンサルティング 代表取締役 関様、田口様 インタビュー【後編】/年平均20%成長の秘密と「3代表制」の真意—次の成長を支える「アカウントフォーカス」戦略

KPMGコンサルティング株式会社は、2014年の設立以来約10年間にわたり年平均20%という高い成長率を維持し、コンサルティング業界でも際立った成果を上げ続けています。
同社の特徴は、事業変革(マネジメントコンサルティング)・リスク・テクノロジーという3領域を統合した複合的なサービス提供により、「攻めと守り」を両立させたコンサルティングを実現している点です。
現在は「アカウントフォーカス」を成長戦略の中核に据え、個社ごとのニーズに深く踏み込んだ支援体制を構築しています。また、2025年1月からは業界でも珍しい「3代表制」を採用し、迅速な意思決定と多角的な視点による経営を目指しています。
前編では、これまでの成長の歩みや複合的サービス提供の強み、「アカウントフォーカス」戦略についてお聞きしましたが、後編では3代表制、変化する環境を踏まえ、コンサルタントに求められる本質について詳しくお聞きします。
※2025年7月時点での内容です

3代表制で「オペレーション迅速化×重要判断の多様視点×グループ連携強化」を実現

伊藤
続いて、現在の経営体制について伺います。御社の「3代表制」は、他ではあまり見られないユニークな体制だと感じています。このような経営体制を採用された背景や、その狙いについてお聞かせいただけますか。

田口様
今回、私たちが「3代表制」を採用したのには、主に3つの目的があります。

まず1つ目は、オペレーションの迅速化です。組織の規模が拡大する中でも、経営においてスピードは欠かせません。業務判断や意思決定をよりスムーズに進められるよう、日々のオペレーションについては、それぞれの担当代表の承認で完結できる体制としています。

2つ目は、重要な意思決定における多様な視点の確保です。普段の経営オペレーションは分担制で進めつつ、会社としての重要な案件については複数の視点を持ち寄って議論し、さまざまな角度から検討した上で最適な判断ができるようにしています。

そして3点目は、グループ間の連携強化です。もう1人の代表である知野は、KPMGジャパン全体の共同チェアマンを務めており、他のエンティティにおいても要職を担っています。その立場を生かし、KPMGジャパン内のエンティティ各社との連携をより深めていくことも、今回の経営体制の重要な狙いの1つです。

伊藤
ちなみに、代表が3人だと意見が2対1に分かれることはありませんか。

田口様・関様
それはむしろ良いことだと思います。

関様
会社として重要な課題については、意見が分かれるのは当然であり、むしろ健全なことですから。だからこそ、そうしたテーマについては、時間をかけて丁寧に議論し、時には喧々諤々と意見をぶつけ合いながら進めています。

伊藤
「3代表制」となって半年ほどたちますが、これまでの手応えはいかがでしょうか。

関様
休みが取りやすくなりましたね(笑)。という冗談はさておき、経営の重要課題について3人で議論する機会は確実に増えています。

最近のテーマとして、KPMGコンサルティングが持続的に成長していくためには、マーケットでの存在感をさらに高めていくことが重要だと考えています。ビジネスの成長は人材に支えられるものですから、現在は採用の強化を通じて、組織の拡大を進めているところです。

一方で、昨今の生成AI技術の台頭により、コンサルティングビジネスの一部は将来的にAIに代替されるのではないか、という見方も出てきています。そうした環境変化の中で人員を拡大し続けることが、将来的にコスト面でのリスクにつながる可能性もあり、これが今の経営議論の大きなテーマの1つになっています。

私は、現在のレガシーなコンサルティングビジネスモデルは当面継続するという見立てから、従来以上に積極的な規模拡大が必要だと考えています。

生成AIに関しては、まさに今後を左右する重要テーマの1つですが、短期的に正解を出すべきものではないとも思っています。だからこそ、多様な視点を持つ3人の代表が意見をぶつけ合いながら議論できること自体が、非常に有意義だと感じています。

関様

「調べる・考える・書く・伝える」はAIに代替される。コンサルタントの本質価値は「人を動かす」

伊藤
私たちサービス業においても、生成AIの登場により、今後の市場の変化や、人が担うべき役割について社内で議論を重ねており、意思決定のあり方も大きく変わっていくと感じています。そうした中で、御社のコンサルティングビジネスは今後どのように変化していくとお考えでしょうか。採用や事業方針のお話もありましたが、生成AIの影響を踏まえた方向性についてお聞かせください。

関様
生成AIの影響については、「短期から中期」と「中長期」の視点で捉える必要があると考えています。

まず短期から中期では、新しい技術が次々と登場する中で、それを企業が経営や事業運営にどう取り入れるかが大きなテーマになります。ここはまさにコンサルティングファームとしてのオポチュニティであり、私たちのビジネスも当面は拡大していくと見ています。

一方で、中長期的には、私たちの提供するサービスそのものがAIに置き換わる可能性も十分あると考えています。

私は普段、コンサルタントの仕事を「調べる」「考える」「書く」「伝える」「動かす」という5つのステップに分けて若手に説明していますが、このうちの4つはAIによって代替される可能性が高い領域です。特に「調べる」「考える」はすでにAIの能力が人間に迫っており、「書く」「伝える」もかなりの精度になってきました。

ただし最後の「動かす」、つまり相手の行動変容を促す部分だけは、どんなに技術が進んでも人にしかできない領域だと感じています。コンサルタントとしての本質的な価値もまさにここにあると思います。

今後はこの「動かす力」にいかにフォーカスしていくかが鍵になります。一方で、その他の4つのステップがAIに代替される時代になった場合、私たちの組織体制をどう設計していくかは、まだ模索している段階ですね。

伊藤
生成AIを活用すれば、多様な情報や解が得られる一方で、結局「どれが正解なのか」を判断するという部分は、まだ人の役割が大きいのではと感じています。

関様
おっしゃるとおりですが、それも“現時点では”という話かもしれません。今後、AIがより高い精度で正解に近い判断を導けるようになれば、その「ジャッジ」ですらAIに委ねられる時代が来る可能性もあると思います。

伊藤
なるほど、確かにそうですね。

関様
そこが、AIの進化における1つのターニングポイントになるかもしれません。

田口様
私も基本的な考え方は関と同じで、生成AIの時代においても「変わるもの」と「変わらないもの」があると思っています。

私はリスクコンサルティングに30年ほど携わってきましたが、当時扱っていたテーマや仕事の進め方は、今とはまったく異なります。テクノロジーや社会の変化に合わせて、扱うリスクやアプローチは常に進化してきました。生成AIも、やがて「AIだから」という意識すら持たなくなるほど、当たり前の存在になっていくでしょう。そうなれば、私たちの仕事の手法やテーマも、当然大きく変わっていくはずです。

ただ一方で、企業や人が「変わりたい」「課題を解決したい」と願う気持ちは、これからも変わらない。その時に私たちコンサルタントが果たすべき役割も、形を変えながら存在し続けるのではないかと思っています。

つまり、コンサルティングの「あり方」は柔軟に変わっていくべきですが、「存在意義」そのものは、これからも普遍であり続けるのではないでしょうか。

田口様

グローバル・日系ファーム3社経験の関様とセキュリティー一筋26年の田口様

伊藤
ではここからは、お二方のこれまでのキャリアについても伺えればと思います。これまでどのようなご経歴を歩まれてきたのでしょうか。

関様
私は1991年に某グローバルコンサルティングファームに入社し、約15年間勤務しました。その後は日系コンサルティングファームの立ち上げに参画して10年間在籍し、2016年にKPMGコンサルティングに加わり、現在に至ります。

これまで主に官公庁を中心とした、いわゆるガバメント領域のコンサルティングに携わってきました。中でも特に長く関わってきたのが、大学を対象としたエデュケーション領域です。

1社目では、大学の事務改革の支援からスタートしましたが、次第に教育のあり方そのものに踏み込むようになりました。前述のとおり、コンサルティングにおける5つのステップは、まさに社会が人材に求める力でもあります。この視点を教育現場に持ち込むことで、より実践的な人材育成につなげられるのではないかと考えたのです。

2社目では官公庁案件に加え、最後の3年間は「社会イノベーション」をテーマとした部門のリードを務めました。コンサルタントの知見とグループ会社の技術を掛け合わせ、社会課題の解決に向き合うという取り組みでした。時期的にやや早すぎた部分もあり、すべてが成功したとは言えませんが、コンサルタントとしての視野を広げる機会にもなりました。

伊藤
これまでさまざまなコンサルティングファームでご経験を積まれてきた中で、KPMGコンサルティングならではの特徴はありますか。

関様
3社を経験してきた中で、KPMGコンサルティングは「完全なマルチカルチャー」の会社だと感じますね。

1社目は新卒入社の社員中心で構成されたモノカルチャーで、全員が同じ方向を向いて動くような組織でした。2社目は、親会社出身者と外部人材が混ざるマルチカルチャーではありましたが、カルチャーが3つくらいに分かれていて、方向性をそろえるのがやや難しい組織でした。ただそのぶん、新しい発想や視点に触れることができたのは大きな学びでした。

KPMGコンサルティングでは、それ以上に多様なバックグラウンドを持つ人材が集まっています。前代表の宮原がパーパスや価値観を丁寧に整えてきたおかげで、今は皆が共通の方向性を持ちながら、それぞれの強みを生かして働ける環境ができていると感じています。

伊藤
田口様のこれまでのご経歴についても、お聞かせいただけますか。

田口様
私は新卒でシンクタンクに入社し、そこで約5年間、情報セキュリティーに関する業務に携わっていました。その後、2000年にKPMGに移り、気がつけば26年目になります。一貫してセキュリティーやテクノロジーに関するリスク領域に取り組んでこられたのは、ある意味、運にも恵まれていたのかもしれませんね。

伊藤
セキュリティーやリスク分野において、御社は長年の実績をお持ちだという印象があります。20年以上この領域に携わってこられた田口様だからこそ見えている、セキュリティーコンサルティングの特徴はありますか。

田口様
KPMGは、何よりも「信頼=トラスト」を重視する組織です。これは監査や税務の分野に限らず、私たちリスクやセキュリティーのコンサルティングにおいても同様です。

私たちの仕事は、企業がリスクを適切に管理し、社会から信頼される経営を継続できるよう支援することにあります。そうした意味でも、「信頼を軸とする」というKPMGの根本的な価値観と、この領域のコンサルティングは非常に相性が良いと感じますね。

田口様・関様

「尖った強み」「成し遂げたい強い意志」を持った挑戦者を歓迎

伊藤
最後に、これからコンサルティング業界を目指す方や、現在コンサルティングファームで活躍されている方々に向けてメッセージをいただけますか。

関様
私たちは、お客さまの変革を実現する上で、「人を動かす力」こそが、コンサルタントに求められる本質的な価値だと考えています。だからこそ、そこに1番フォーカスしています。その思いに共感し、共に成長してくださる方と、一緒に未来をつくっていけたらうれしいです。ぜひチャレンジしてください。

田口様
これまでのご経歴やバックグラウンドは問いません。コンサルティング経験のある方はもちろん、未経験でも「これから挑戦したい」という意欲をお持ちの方を歓迎します。

「これだけは誰にも負けない」という強みを持つ方や、「この場所で何かを成し遂げたい」という熱い思いをお持ちの方と、楽しく、強く、しなやかに、新たなKPMGを一緒につくっていけることを楽しみにしています。

3名

関穣 様 KPMGコンサルティング 代表取締役 執行役員 セクター統轄パートナー

外資系コンサルティングファーム、日系コンサルティングファームを経て、2016年にKPMGコンサルティングに入社。一貫して公的機関(中央省庁、地方自治体、独立行政法人、文教・医療など)に対するコンサルティングに従事しており、特に学校法人に対するコンサルティングは15年以上の経験がある。業務改革やシステム構想策定などに加え、大規模・マルチベンダーでのシステム導入案件でのPMOなどの経験が豊富。近年では、AIなどのデジタル関連の案件も手掛ける。
2025年1月より代表取締役に就任。

田口篤 様 代表取締役 執行役員 テクノロジーリスクサービス統轄パートナー

大手シンクタンクを経て、2000年にKPMGビジネスアシュアランス(現KPMGコンサルティング)に入社。入社以来、一貫してリスクコンサルティングサービスを手掛ける。特にIT関連のリスクコンサルティングを得意とし、サイバーセキュリティ、セキュリティ監査、個人情報保護、PKI(Public Key Infrastructure)、BCP(Business Continuity Plan)など多岐に渡るサービスを金融、官公庁、製造、通信、サービスなど、幅広い業種のクライアントに提供している。KPMGコンサルティングの設立に際し、KPMGジャパンサイバーアドバイザリーグループ統括パートナーとして、サイバーセキュリティビジネスの立上げに従事する。
テクノロジーリスクサービス統轄パートナー、HLM(Human Resources & Labor Management)ユニット長、KPMGコンサルティング経営会議メンバーを経て、2025年1月より代表取締役に就任。

KPMGコンサルティング株式会社

グローバル規模での事業モデルの変革や、経営管理全般の改善をサポートするコンサルティングファーム。具体的には、事業戦略策定、業務効率の改善、収益管理能力の向上、ガバナンス強化やリスク管理、IT戦略策定やIT導入支援、組織人事マネジメント変革などを提供しています。世界142ヵ国のメンバーファームに約275,000人以上のパートナーと従業員が在籍。
参考URL:http://recruit.kpmg-consulting.jp/

アクシスコンサルティング

アクシスコンサルティングは、コンサル業界に精通した転職エージェント。戦略コンサルやITコンサル。コンサルタントになりたい人や卒業したい人。多数サポートしてきました。信念は、”生涯のキャリアパートナー”。転職のその次まで見据えたキャリアプランをご提案します。

Brand ブランド紹介

アクシスコンサルティングでは、多様化するハイクラス人材のキャリアをワンストップでサポートしています。
あなたの理想のキャリアに向けて、20年以上の実績と知見でご支援いたします。