株式会社SIGNATE インタビュー/10万人のAI人材ネットワークを活用して企業を支援。野村総研・BCG出身COOが進める「労働集約型コンサルに代わる集合知モデル」

生成AIの本格普及が始まった2023年以降、AIの導入は進めたものの具体的な活用方法に悩む企業が続出しています。特に大規模組織では、グループ全体の業務プロセスを分析してAI活用の可能性を見極める必要がありますが、数万人規模のプロジェクトには相応の時間と予算が必要となります。
この課題に対し、株式会社SIGNATEは、AI技術を駆使した新しいアプローチで解決策を提示しています。同社の執行役員COO石原大輔様は、東京大学大学院卒業後、野村総合研究所で5年、ボストンコンサルティンググループで5年と、計10年間のコンサルティング経験を積んだ後、2023年1月に同社に入社しました。
グループ7社・3万人規模の業務分析をわずか1カ月で完了させた革新的手法から、10万人のデータサイエンティスト会員を活用した新しい企業支援の形、そして10年後のコンサルティング業界への展望まで、石原様に詳しくお話を伺いました。
Index
野村総研→BCG→スタートアップを経てジョイン。COOが見いだした”労働集約型”を超える解法
尾股
まずは、石原様のご経歴についてお聞かせいただけますか。
石原様
株式会社SIGNATEのCOOの石原と申します。よろしくお願いいたします。略歴としましては、東京大学大学院卒業後に野村総合研究所に入社いたしました。そこでコンサルティング業務を5年間担当した後、ボストン コンサルティング グループという外資系コンサルティングファームに転職し、約5年在籍いたしました。コンサルタントとして約10年間の経験を積んだ後、Web系スタートアップに1社参画、COOとして経営経験を経て、SIGNATEに入社しました。
尾股
1社目のコンサルティングファームを選択された理由や背景について教えてください。
石原様
大学院では理系専攻でしたが、様々な経緯で、研究職よりもビジネス分野への関心が高まりました。当時、コンサルティングファームは幅広い業務に携われるというイメージがあり、その魅力に惹かれて入社を決めました。明確に「この分野をやりたい」という強い動機があったわけではなく、むしろ可能性の広がりに期待していたという感じでしょうか。
尾股
その後、コンサルティングファームからスタートアップへの転身という大きな方向転換をされましたが、その決断に至った背景を教えてください。
石原様
コンサルタントとして10年間従事する中で、今後もコンサルタントとして歩み続けるか、事業会社・スタートアップなど別のビジネス領域に挑戦するかという重要な岐路に立ちました。これは多くのコンサルタントが直面する課題だと思います。私の場合、外部からの支援ではなく、自ら事業を創造し運営してみたいという強い想いがありました。事業会社の経営企画部門という選択肢もありましたが、コンサルティング経験の延長線上にあると感じたため、より大きな変化を求めてWebスタートアップへの参画を決めました。
尾股
外部からの企業支援よりも、直接的に事業に関与したいということでしょうか。
石原様
そうですね。ただし、現在もビジネスとしてはコンサルティングサービスを提供しているので、完全に異なる領域に移ったというわけではありませんが、基本的な考え方としてはその通りです。
尾股
SIGNATEへの入社を決められたきっかけをお聞かせください。
石原様
実は、最初からSIGNATEを知っていたわけではありません。採用プロセスを通じて弊社代表の齊藤と対話を重ねる中で、入社を決断いたしました。私がコンサルタント時代に自分の時間を対価として顧客に価値を提供していたアプローチに対して、SIGNATEの「コンペティション」という仕組みは全く異なる発想でした。これは、企業課題をテーマとした競技大会を開催し、市場にいる優秀なデータサイエンティストやAIエンジニアが、その解決に取り組むというアプローチで、従来の一般的なコンサルティング企業のような社員自身が直接労働力を提供するアプローチとは一線を画していました。
私は、この従来のコンサルティング企業とは全く異なる課題解決の手法に強い魅力を感じ、入社を決めました。

10万人のデータサイエンティストが企業課題を解決。従来コンサルを上回る”集合知モデル”
尾股
改めて、会社概要と事業概要について教えてください。
石原様
株式会社SIGNATEは、企業のDX、特にAI分野における支援を専門とする「AI総合コンサルティングファーム」です。事業の特徴は、AIの業務実装と人材育成という2つの軸からアプローチしている点にあります。単にAI技術を導入するだけでなく、それを使いこなせる人材を社内で育成していく、この両面からの変革支援が私たちの事業の核となっています。
尾股
他のAI企業との差別化要因について、どのようにお考えでしょうか。
石原様
私たちが重視しているのは、企業変革に向けた包括的なアプローチです。AIの業務実装だけでなく、人材育成の観点も同様に重要視しています。AIを企業に導入しても、それを活用できる人材がいなければ真の変革は実現できません。AIを使いこなし、企業変革を推進する人材が社内に存在して初めて、持続的な成長が可能になります。従って、業務プロセスの変革と人材・組織の変革、この両軸からの支援が私たちの一貫した強みだと考えています。
尾股
現在の石原様のミッションや担当領域について教えてください。
石原様
私たちの最大の強みである10万人のSIGNATE会員の皆さまの知見を活用しながら、企業のAI関連課題をより幅広く解決することが主要なミッションです。コンペティション形式では、データの公開性やさまざまな制約により対応できない課題も存在します。そこで、コンサルティング形式で企業に直接関与し、より包括的な支援を提供することを目指しています。
600職種×3万人の業務を1カ月で体系化。生成AI時代のコンサルティング新標準
尾股
これまでのプロジェクトの中で、特に印象に残っている案件があれば教えてください。
石原様
生成AIが本格的に普及し始めた初期に手がけたプロジェクトですね。2023年頃から多くの企業で生成AI導入が始まりましたが、「導入したものの具体的な活用方法がわからない」という課題を抱える企業が多数ありました。そこで私たちが支援したのは、企業の全業務プロセスを体系的に棚卸しし、可視化した上で、どの業務に生成AIが効果的に活用できるかを分析することでした。
具体的には、グループ7社、従業員約3万人、約600職種という大規模な業務棚卸しプロジェクトを実施しました。この分析作業自体も私たちのAI技術を活用して行いました。従来であれば、コンサルタントが各企業に常駐し、ヒアリングを通じて業務を把握していくという手法ですが、これは膨大なコストと時間を要します。グループ7社で3万人規模の棚卸しは、従来の手法では現実的ではありません。
しかし、AI技術を活用することで、わずか1カ月という短期間で企業の全業務を体系化し、最終的に顧客の生成AI活用目標や計画に落とし込むことができました。これは現在の私たちの生成AIサービスの原型となっています。従来のホワイトカラー業務、特にコンサルティングファームが担っていた企画業務をAIで代替していく、これが私たちの重要な差別化要因の一つです。
尾股
内製化支援についても力を入れているとお聞きしました。
石原様
創業当初から一貫してこだわっているのは、企業変革において、AIの業務実装だけでなく、それを使いこなす人材育成も同等に重視するということです。これによって真の企業変革を実現し、最終的には私たちのような外部業者に依存することなく、企業が自律的にAIを内製化し、継続的な成長を推進できる状態を目指しています。業務改革と人材育成、この両軸からの支援と内製化の促進が私たちの基本方針です。
尾股
内製化支援を進めると、クライアントが自立してしまうという課題もあるのではないでしょうか。
石原様
私たちが目指すのは、少子高齢化が進む日本において労働生産性の向上を実現することです。労働人口が減少する中でも持続的な成長を可能にするため、個々の企業が生産性を向上させ、その成果を将来世代に継承していく、これが創業時からの理念です。
従って、私たちの使命は日本企業の内製化能力向上、つまり各企業が自律的に生産性を向上させる仕組みの構築支援にあります。AIの業務導入だけでなく、人材面からも包括的に企業を支援し、最終的に企業が自律的に改善を継続し、生産性を向上させられる状態まで伴走することが私たちの責務だと考えています。代表の齊藤が常々申し上げていますが、日本全体の生産性向上が目的であり、各企業の自立を通じて日本の生産性を向上させ、将来の子どもたちにより豊かな日本を残したいというのが私たちの願いです。

“大人ベンチャー”が生む理想の職場環境。年齢を忘れるほど自然なリスペクト文化
尾股
社内のカルチャーや雰囲気について、SIGNATEらしさという観点から教えてください。
石原様
「大人ベンチャー」という表現が最も適切かもしれません。創業者の齊藤をはじめ、40代のメンバーも多く、私自身もその世代です。一方で、20代から40代まで幅広い年齢層が活躍しており、年齢に関係なく実力を発揮できる環境が整っています。
尾股
年齢に関係なく活躍できる環境ということですが、具体的にはどのような雰囲気でしょうか。
石原様
年齢を意識するということがほとんどありません。時々年齢の話題になった際に「あの人は20代だったのか」と驚くことがあるほどです。年上の方についても同様で、年齢に関係なく相互にリスペクトし合える関係性が構築されています。
尾股
リモートワークが中心かと思いますが、コミュニケーション面での工夫があれば教えてください。
石原様
コンサルティング業界の特性上、プロジェクトベースの業務となるため、横のつながりが希薄になりがちです。特にスタートアップでは、この横の連携が弱くなると組織の成長にも影響するため、意識的に対策を講じています。
基本的にはオンラインでの業務が中心ですが、オフィスで自然に得られる他のプロジェクトの情報や相互作用を補完するために、毎朝オンラインでの全体会議を実施しています。30分という短時間ですが、全員が顔を合わせて当日の業務内容を共有する仕組みを継続しています。
この取り組みにより、業務で困っている人の状況を把握できたり、プロジェクト間での情報交換が促進されたりと、非常に効果的だと感じています。
尾股
リアルでの交流機会はあるのでしょうか。
石原様
現在、毎月新しいメンバーが私たちの部門に加わっているため、入社月には必ず歓迎会を開催しています。これにより、月1回はリアルで顔を合わせる機会を設けています。もちろん参加は任意ですが。
尾股
殺伐とした雰囲気はないということですね。
石原様
むしろファミリー的な雰囲気があると思います。大手ファームでよくある「あの人は何をやっているのかわからない」「話したことがない人がいる」といったことはありません。組織規模と毎朝の顔合わせの効果で、全員が互いの役割や人となりを把握できています。
尾股
若手や経験の浅い方の育成について、どのような取り組みをされていますか。
石原様
現在、育成制度の充実を急ピッチで進めています。基本的には他のコンサルティングファーム同様、OJTが中心となりますが、それに加えて一定の型やフレームワークの整備を行っています。
研修面では、企業向けに提供している研修プログラムを社内向けにアレンジして実施しています。また、自社で開発しているSIGNATECloudというeラーニングシステムを全従業員に展開し、基礎的なDX教育はそちらで完結できる仕組みを構築しています。
実務面では、プロジェクトマネジャーによる教育指導を重視していることに加え、プロジェクト外のメンバーをメンターとして配置し、気軽に相談できる体制を整えています。
尾股
孤立感を感じることなく成長できる環境ということですね。
石原様
その通りです。

コンサル業界激変の10年をチャンスに変える。SIGNATEが描く人材戦略と成長機会
尾股
AI市場が活況を呈している中で、COOとして目指している組織像があれば教えてください。
石原様
メンバーには常に伝えていることですが、今後10年間でコンサルティング業界を含む多くの職種が大きく変化する、あるいは消失すると言われています。実際にそのような変化は起こると考えています。
重要なのは、この10年間をどのように過ごすかということです。私たちとしては、生成AIをはじめとする新技術の最前線で実践を重ね、最も多くの知見を蓄積し、変化の最前線に位置し続けたいと考えています。その結果として、次の時代においても活躍できる新しい人材像を体現できるのではないかと思っています。現在は、企業の生成AI活用やAI導入の最前線でしっかりと向き合うことが最重要だと認識しています。
尾股
コンサルタントの方でAI領域への転職を検討している方が多いのですが、キャリア形成の観点からメッセージをいただけますか。
石原様
私自身の経験からも、どのマーケットに身を置くかは極めて重要だと考えています。前職のWebスタートアップでの経験でも感じましたが、市場の成長性がなければ、個人がどれだけ努力しても成長機会の限界があります。
現在の時代において、そのマーケットは間違いなく生成AIです。実際に当社に入社いただく方も、生成AIやAIの時代にどれだけ深く関与できるかを重視されている方が多いです。SIGNATEにおいて、その点についてはコミットできると思いますし、個人の価値向上戦略として現在最も重要な選択だと考えています。
尾股
とはいえ、生成AIの重要性やチャンスの大きさが、まだ十分に理解されていない部分もあるようです。
石原様
これまでのDXは、ITを含めて技術的な敷居が高いという印象がありました。コンサルタントの多くは非デジタル、非テクノロジー人材であることが多く、そこに対する心理的障壁があることは理解できます。
しかし、生成AIは私たちがよく表現するように、非常に民主化された技術です。エンジニアでない方でも、自然言語でインタラクションできる技術なのです。むしろコンサルタントの皆さんにとって、大きなチャンスの拡大と言えるでしょう。言語を扱う技術である以上、コンサルティング業務と生成AIのシナジーは非常に高いと考えています。
早期にこの技術を活用できる人材になることが重要で、逆にそこから距離を置くことの方がリスクだと思います。恐れる理由はなく、むしろチャンスに満ちた領域だと認識しています。
尾股
会社として人材面での強みがある一方で、採用を強化されている領域もあるとお聞きしましたが。
石原様
データサイエンティストやAI技術に精通した人材については、SIGNATE会員の皆さまを含めて豊富な知見とネットワークを有しており、これは他社にない強みです。特に、ニッチな技術領域やDXの観点において、ほぼすべての案件にアプローチできると考えています。一方で、企業への具体的なソリューション提供においては、まだリソースが不足している状況です。そこで、ビジネスコンサルタント出身の方々による企業とのインターフェース機能を強化するため、そちらの分野での採用を積極的に進めています。
尾股
SIGNATEが求めるのはどのような方なのでしょうか。
石原様
AIや生成AIを活用してビジネスや企業変革の最前線に立ちたいという強い意欲をお持ちの方に来ていただきたいと思います。個人にとっても最もダイナミックな成長機会になりますし、それが会社としての成長機会にもつながります。その領域に関心をお持ちの方には、ぜひ私たちと一緒に挑戦していただきたいと考えています。

東京大学大学院修士課程修了後、野村総合研究所、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)にて10年ほど経営コンサルティング業務に従事。大企業の経営戦略立案・新規事業立ち上げ、官公庁事業、その他調査・リサーチ業務などに従事。その後Webスタートアップの取締役COOを経て、2023年1月よりSIGNATEに入社。

SIGNATEは、社会と企業のDX推進・AI実装の内製化を支援し、日本の成長に貢献することを目指すAI総合コンサルティング企業です。
国内最大10万人超のAI・データ人材会員ネットワークを通じて、様々な産業領域におけるDX推進や生成AIプロジェクトを支援。
テクノロジーによる事業変革(BX)と人材育成・採用による人材変革(HX)を通じて企業・行政のDXを支援し、労働生産性の改善に取り組んでいます。

アクシスコンサルティングは、コンサル業界に精通した転職エージェント。戦略コンサルやITコンサル。コンサルタントになりたい人や卒業したい人。多数サポートしてきました。信念は、”生涯のキャリアパートナー”。転職のその次まで見据えたキャリアプランをご提案します。
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