株式会社グリッド 取締役 照井様 インタビュー/「熟練技術者の莫大な労力」をAIで激変。インフラ業界オペレーション最適化で「実経済効果」をたたき出す

株式会社グリッド(以下、グリッド)は、「Infrastructure + Life + Innovation」を企業理念に掲げ、AI技術で社会インフラを支える企業です。
数理最適化に特化し、電力会社の需給調整業務、製造業の生産計画、鉄道事業者の輸送計画など、「社会を支えるために不可欠な計画業務」をAIで最適化。AI業界で「PoC(概念実証)止まり」が常識とされる中、実際に数億円規模の経済効果をクライアントに提供する「実効性」で他社との圧倒的な差別化を実現しています。2023年にはグロース市場への上場を果たし、右肩上がりの成長を続けています。
今回は、大手日系SIerでのエンジニア経験、シリコンバレーでの事業開発を経て2020年にグリッドに入社し、現在はAI事業本部を統括する取締役の照井一由様に、電力会社向けの具体的なプロジェクト事例や「インフラと社会を、その先へ」というミッション実現に向けた成長戦略と求める人材像について詳しくお聞きしました。
※内容は2025年9月時点のものです。
Index
日本のAI黎明期から新規事業をけん引、決め手はグリッドの実効性
坂口
まずは、これまでのキャリアについて教えていただけますか。
照井様
大学院修了後、大手日系SIerにエンジニアとして入社しました。大阪勤務からキャリアをスタートし、直属の上司の東京転勤に伴い、私も東京へ異動。社長直下でデジタル技術を活用した新規ビジネスの創出を目指す組織が立ち上がり、新製品やサービスのビジネス開発に従事しました。
その後は、シリコンバレーへ赴任し、現地で事業開発を推進。帰国した2015年は、まさにAIの黎明期でした。シリコンバレーでの熱気を背景に「日本でもAIに取り組むべきだ」と会社に働きかけ、AI専門部署の立ち上げを実現しました。これが現在の私のキャリアの出発点ともなっています。
その頃は、国内のパートナー企業を探すため、非常に多くのAIスタートアップと接点を持っていました。そんな中で、グリッドの代表・曽我部や取締役・中村と出会い、「この会社は他と違う」と強く感じたのです。というのも、当時のAIスタートアップはPoC(概念実証)止まりのプロジェクトが多く、顧客への経済的価値の提供まで至らないケースが少なくありませんでした。
一方で、グリッドは数億円規模の経済効果を実際にクライアントへ提供している実績があり、他社とは一線を画す存在だと強く印象に残ったのを覚えています。その後、当時在籍していた会社とグリッドで業務提携を結び、ビジネスを進める中で曽我部と密にやり取りを重ねるうちにお互いの価値観や考え方に共感。これが決め手となり、2020年にグリッドにジョインすることを決めたのです。
坂口
グリッドに入社されてから、どのようなことをされてきたのでしょうか?
照井様
採用や社内の仕組みづくりまで、文字通り何でも取り組んでいましたね。というのも当時、グリッドでは機械学習を中心としたAI全般を手がけていましたが、ちょうど「最適化」の領域に本格的にシフトしていくタイミングだったのです。
当初は新規顧客の開拓のために、いわゆる“ドアノック”(初回接点づくり)を行ったり、プリセールスとして導入前の技術提案を担ったり、プロジェクトで課題があればすぐに対応に入るなど、現場に密着してあらゆる業務に携わってきました。
その後、2023年にグロース市場へ上場を果たし、会社としての仕組みも整ってきました。現在は、現場寄りの動きから一歩引いて、より中長期的な視点で事業戦略を考える立場へとシフトしてきています。
坂口
上場の準備をされてきたと伺っておりますが、その中で大変だったことはありますか?
照井様
外部に対して「正しい数字」を約束し、その約束を確実に守るための仕組みをつくることが非常に大変でした。特に、上場企業として求められる信頼性・透明性を担保する体制整備は、想像以上にハードだったと感じています。
一方で、良かったことも多くありました。会社として同じ目標に向かって進む一体感が生まれたことは非常に大きな価値だったと思います。
また、上場を1つの節目とすることで、その先の新たな目標が生まれたことも良かった点の1つです。グロース市場に上場した企業として、今後はさらにその先の上場(プライム市場など)を目指し、世界に通用する企業として日本を支える存在になる。そんな次のミッションを明確に描けるようになったことも、大きな意味があると感じています。

「社会を支えるために不可欠な計画業務」をAIで最適化
坂口
グリッドとはどのような会社なのか、改めて教えていただけますか。
照井様
私たちグリッドが創業以来大切にしているのは、企業理念でもある「Infrastructure + Life + Innovation」(インフラ ライフ イノベーション)という考え方です。
社会インフラは、人々の生活と直結する領域です。だからこそ、そのインフラをより良くすることで、日本、ひいては世界全体を良くしていけると私たちは信じています。つまり、テクノロジーの力で社会インフラを支え、人々の暮らしを豊かにしていきたい。それがグリッドという会社の根幹にある思いです。
ビジネスとしてはAIを主軸にしていますが、特に強みとしているのが「最適化」の領域です。おそらく、日本国内でもこの分野に特化したエンジニアの数では、私たちがトップクラスではないかと自負しています。
お客さまは、大手電力会社、石油元売り企業、化学品メーカー、製造業、鉄道事業者など、いずれも社会に欠かせないサービスを担う重厚長大産業の企業が中心。たとえば輸送計画や生産計画、電力の需給調整など、「社会を支えるために不可欠な計画業務」をAIで最適化しています。その結果、電力会社であれば発電コストが大幅に削減されるなど、目に見える経済効果を生み出しているのがグリッドの大きな特長です。
坂口
現在、照井様が率いている部門の役割やミッションを教えていただけますか?
照井様
現在は、AIビジネスを担う営業部門とエンジニア部門、合わせておよそ70〜80名が在籍する組織を統括しています。営業活動の状況を見守る一方で、エンジニアが新しいR&Dに取り組む際の方向付けや、プロジェクト従事における方針決定など、部門全体のかじ取り役を担っています。この組織には会社全体の半分以上のメンバーが在籍しており、グリッドの成長をダイレクトにけん引する存在となっています。
解けなかった複雑な大手電力会社の需給調整業務をAIで解決
坂口
実際のプロジェクト事例を教えていただけますか。
照井様
代表的な例として、大手電力会社向けの「電力需給調整業務」のプロジェクトがあります。 電力は発電すると貯めておけず、需要と供給を常に一致させなければなりません。そのため、需給調整業務では、発電計画を数分単位で更新し続ける必要があります。
また、発電量が需要を上回った場合でも、市場で売買することで利益を出すことができるため、単なるバランス調整ではなく、いかに効率よく発電するかが非常に重要になります。
一方で、電力会社は水力や火力など多様な発電機を持っており、それぞれ発電効率や起動時間が異なります。これらの特性を考慮しつつ、コストを最小化する発電計画を立てる必要がありますが、組み合わせが膨大で非常に複雑な問題です。
従来はコンピューターを用いても計算時間内に最適な計画を導き出すことができず、お客さま自身も試行錯誤を重ねていましたが解決には至りませんでした。そこでグリッドは独自の技術を用いて、この複雑な問題を解けるようにしたのです。
坂口
それはすごいですね。具体的にはどのように?
照井様
まずはPoC(概念実証)からスタートしました。試行錯誤を繰り返す中で「解けそうだ」という手応えを得て、その後は実業務で使えるAIアルゴリズムを開発し、アプリケーションとして実装しました。納品後も保守を行いながら、追加提案や改善を続けており、現在も進化を続けているプロジェクトです。

社員の「やりたい」を後押しする、グリッドが描く成長戦略
坂口
ここまで具体的なプロジェクト事例を伺いましたが、社会インフラの領域におけるニーズは現在どのように高まっているのでしょうか?
照井様
確実に高まっていると感じています。私たちが取り組んでいるのは、大手事業者が複数存在する市場であり、類似の課題を抱える企業も多いため、横展開によって事業を広げてきました。
他方で、社会インフラは安定性や安心が求められる分野であるため、新しい仕組みの導入にはどうしても慎重にならざるを得ない側面もあります。そのような中で、特定の業界においてはグリッドの知名度が非常に高まり、先行者としてのポジションを築くことができています。現在では、既存顧客からの追加依頼や紹介による新規案件が中心となり、安定的にビジネスを拡大できるフェーズに入ってきています。
坂口
まさに成長の真っただ中だと感じますが、中長期的にどのような未来を描き、どんな戦略を取っていかれるのでしょうか。
照井様
今後も右肩上がりに継続的な成長を目指していきます。実際、上場後も着実に成果を出し続けているスタートアップ企業は決して多くはありません。その意味で、成長を続けること自体がグリッドのカルチャーであり、大切にしている価値観の1つだと思います。
一方で、私たちはデジタルスタートアップとして、新しい挑戦も常にしていきたいと考えています。もちろん会社として進むべき方向性はありますが、それ以上に「仲間一人ひとりの能力をどう最大限に生かし、会社の力につなげていけるか」を強く意識しています。
そのため採用においても、今の事業にフィットする人材だけでなく、あえてこれまでにいなかったタイプの人材を迎え入れるという両方の軸を大切にしています。そして、新しく入った方には、会社のリソースを活用しながら、自律的に新しいビジネスを生み出してほしいと考えています。これこそが、当社の経営戦略の根幹かもしれません。
坂口
なるほど。新しい仲間の力を最大限に生かしながら会社の成長につなげる、ということですね。具体的にはどのような事例がありますか?
照井様
たとえば鉄道事業者から転職してきたメンバーが、「鉄道領域をやらせてほしい」と手を挙げたケースです。
当時、鉄道領域は当社として全く手つかずで、大手企業が既に参入している中、壁の高い領域でした。ですが、本人の強い思いと挑戦心があり、私たちも支援しながらビジネスを立ち上げた結果、案件を受注することができました。彼自身がリーダーとなって周囲を巻き込み、自然とチームが形成され、今年からは鉄道領域の事業をさらに伸ばす部長に任命されています。
このように、自ら「やりたい」と声を上げてくれるメンバーがいて、その挑戦を会社として支援できる。それこそがグリッドのカルチャーですし、私自身とても誇りに感じています。
コンサルタントの基礎力 × グリッドの専門性で圧倒的な成長を
坂口
では、実際にそうしたカルチャーの中で働くメンバーには、どのようなバックグラウンドを持つ方たちが多いのでしょうか。
照井様
エンジニアについては、社会インフラ系の大手事業会社や電力会社で実務経験を積み、数理最適化の知見を持つメンバーが多いのが特徴です。
営業は非常にバラエティーに富んでいます。創業当初からの太陽光ビジネスに携わってきたメンバーをはじめ、商社出身者、県庁出身者など多様なバックグラウンドの人材が集まっています。
また営業組織の中には「コンサルタント集団」と呼ばれるグループがあり、ここには大きく2つのタイプがいます。1つは、電力会社で需給調整業務を担当していたような業務知識に長けた人材。もう1つは、コンサルティングファーム出身で、論理的思考や企画力に強みを持つ人材です。
坂口
今後はコンサルティングファーム出身者を増やしていきたいと伺っておりますが、それはなぜでしょうか。
照井様
特にコンサルティングファーム出身者は、仕事の進め方やメンタリティ、お客さまへの接し方まで高い水準のスキルや習慣が身付いているため、実際に当社でも大きな成果を挙げ、活躍しています。
一方で、コンサルタントの仕事は幅広い課題を扱うため、どうしても専門性が育ちにくい局面もあるのではないかと思います。当社には、最適化やAI技術、業界ごとのドメイン知識といった専門性を徹底的に深められる環境があります。
そのため、コンサルタントとして培った基礎力と、当社で磨ける専門性が合わさることで、驚くほど大きな力を発揮できるのです。実際にそうした事例をいくつも目の当たりにしてきましたし、私自身とても驚かされました。
コンサルタントの中にも「もっと専門性を発揮してキャリアを磨きたい」という方や、「一度こうした環境で挑戦してみたい」という方がいると思います。そういう方にとって、グリッドはまさにフィットする場所だと感じています。
坂口
では、どのような方に参画していただきたいとお考えですか?
照井様
まずは自律性のある方ですね。会社として強い推進力で方向性を定め、一気に進むスタイルも素晴らしいと思いますが、その場合はどうしても組織の一部機能としての動きにとどまってしまうことがあります。グリッドではそのようなマネジメントは基本的にしておらず、個々の意思を尊重しながら自由度高く挑戦できるカルチャーを大切にしています。
また、自分がやりたいことを持ち、人を巻き込みながら仕事を進めるのが好きな方。そうした方であれば必ず活躍できますし、私たちも全力で背中を押す文化があります。
一方で、AI技術や最適化、ドメイン知識などについては、当社に教育プログラムがあるため、入社後に十分キャッチアップしていただけます。ですので、必要なのは知識よりもマインドと姿勢だと考えています。

社会貢献を実感できる、その手触り感が最大の魅力
坂口
ここまでお話を伺って「自分も挑戦してみたい」と感じた方も多いと思います。改めて、グリッドに参画する魅力を教えていただけますか。
照井様
私たちは「Infrastructure + Life + Innovation」を企業理念の中心に据えていますが、その理念を実感できる場面が本当に多いのです。自分たちがつくったAIが社会の裏側で稼働し、人々の生活を支え、良くしているという手応えを感じられるのは大きな喜びです。家族に「これはパパの会社でつくったシステムなんだよ」と誇らしく伝えられるのも、なかなか得難い魅力だと思います。
また、社会インフラ系の企業で働く方々も「社会を良くしたい」という強い思いを持っておられます。そのため、お互いにリスペクトし合いながら長く信頼関係を築いていける。そうしたお客さまが多いフィールドで仕事ができることも、グリッドで働く大きな魅力の1つだと感じています。
坂口
そうした魅力的な環境の中で、実際に入社したらどのような働き方をされているのでしょうか。
照井様
基本はフルリモートで、勤務時間についても会社から細かい指示をすることはありません。チームや個人で「どうすれば最も成果を出せるか」を考え、自律的に働くスタイルです。
たとえば営業の場合、出社率は個人差がありますが、全体としては週の40〜50%程度。一方でエンジニアは、毎日出社する人もいれば、完全にリモートで働く人もいます。平均すると出社率は20%ほどでしょうか。いずれも柔軟に選べるため、働きやすさを感じていただけると思います。
坂口
最後に、このインタビューをご覧になっている方へメッセージをお願いします。
照井様
今後も事業を伸ばしていくためには、新しく仲間に加わっていただく方の力が不可欠です。チャレンジを楽しめる方と一緒に、楽しくビジネスをつくり上げていきたい。そしてそれが実際に社会貢献につながっていく状況を共に築いていきたいと考えています。ぜひ一緒に、新しい挑戦を楽しみながら社会を変える未来をつくっていきましょう。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社入社後、新規製品・サービスのビジネス開発に従事しその後、ITOCHU Techno-Solutions America, Inc. Vice Presidentに就任。帰国後、AI黎明期より、幅広い分野でのビジネス活用推進に貢献。2020年より、社会インフラ領域でのAIビジネス拡張を目指し、グリッドに入社。取締役AI事業本部長として、世界に先駆けてIndustrial AI市場の拡大をリード。

「Infrastructure + Life + Innovation」を企業理念に掲げ、AI技術による社会インフラの最適化を推進し、電力、製造・運輸、都市・交通、エネルギーマネジメントの4分野を中心に、社会の基盤を支える現場オペレーションを最適化するAIソリューションを提供しています。

アクシスコンサルティングは、コンサル業界に精通した転職エージェント。戦略コンサルやITコンサル。コンサルタントになりたい人や卒業したい人。多数サポートしてきました。信念は、”生涯のキャリアパートナー”。転職のその次まで見据えたキャリアプランをご提案します。
株式会社グリッドの求人情報
| 募集職種 | 社会インフラ×AIで課題を解決 | 提案型コンサルタントを募集/上場AIスタートアップ |
|---|---|
| 職務内容 | ◆募集背景・仕事内容 グリッドでは、エネルギープラント、道路・鉄道、物流、建設、製薬などのお客様に、AI最適化技術を用いて業務変革を起こすプロジェクトを行っております。産業現場におけるDX化は、日々その重要性が高まってきており、主にエンタープライズ企業をお客様とした多数のプロジェクトが動いております。次世代の社会インフラを実現するソリューション創出を更に加速するため、コンサルティングとプリセールスを軸としてビジネスを推進できる人材の採用を強化しております。 <具体的な業務内容> <プロジェクト例> 【主なクライアント】 ◆この仕事で得られること ◆社員の声 |
| 応募要件 | 学歴:大学院(博士);大学院(修士);大学 【必要業務経験】 【歓迎のスキル・経験】 ◆人材像 |


