PwCアドバイザリー合同会社 人事アドバイザリーチーム インタビュー/ M&Aのカギを握る 人事支援の専門家

円安進行とグローバル展開の加速を背景に、日本企業による国内外でのM&Aは重要な経営戦略の一つとなっており、M&Aの成功が企業の成長を左右していると言っても過言ではありません。M&Aにおいてその成否を分けるのは、事業や財務面だけではありません。「人材のリテンション」「組織文化の統合」「人事制度の再設計」――こうした「人」に関する課題への対応が、ディール成功の鍵を握る時代になっています。
PwCアドバイザリー合同会社 人事アドバイザリーチームは、M&Aにおける人事領域(HR)を専門とし、2020年の立ち上げから約5年間で国内のFAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)業界最大級の人事アドバイザリー組織に成長しており、日本企業が国内外で買主または売主として参画するさまざまなM&Aにおいて人事領域の支援を提供しています。
今回は、パートナー 宮寺宏器様、ディレクター クリス・ハラランボス様、マネージャー 滝澤洋一様より、「M&A×HR」という注目領域で支援を提供するやりがい、PwCのグローバルネットワークを生かした支援の実際、そしてこの先に描けるキャリアについてお聞きしました。
Index
M&Aを「人」の側面から支援したい。PEファンド、人事ファームを経てたどり着いた総合ファーム
アクシス
まずは、皆さまのこれまでのご経歴と、PwCアドバイザリー合同会社を選んだ理由を教えてください。
宮寺様
新卒で総合商社に入社し、その後米国の大学院に留学しました。そこで出会ったM&Aの世界に強く惹かれ、帰国後は投資銀行に入行してM&A分野のキャリアを歩み始めました。その後、実際に「買う側」の立場で事業に関わりたいと考え、プライベートエクイティ(PE)ファンドへ転職。ファンドでの経験を通じて実感したのは、買収後のバリューアップには、最終的に「組織をどうつくるか」「経営陣にどんなインセンティブを与えるか」「それをどうガバナンスするか」といった人事面の知識が非常に重要だということでした。
そうした背景から、人事コンサルティングファームのM&Aチームに転職し、組織・人事の観点からM&Aに携わるようになりました。これが想像以上に面白く、以来、約10年にわたりこの領域で経験を積んできました。その中で、M&Aにおける人事の専門性を生かしつつ、より広い視点、特にマネジメントの立場からクライアントに価値を提供したいという思いが強くなり、2020年にPwCアドバイザリー合同会社へ入社。人事以外の領域とも密に連携できる総合ファームならではの環境が、自身のキャリアをさらに広げる場になると感じたのが大きな決め手です。

ハラランボス様
英国でビジネスと数理経済学の学士号・修士号を取得し、PwC英国の新卒プログラムでアクチュアリー(保険数理)のキャリアをスタートしました。主に年金分野に携わり、企業の確定給付型退職年金制度の運用を支援していました。
アクチュアリー資格取得後は、より幅広いビジネス領域に関わりたいと考え、PwC UKのPeople in Dealsチームへ。当初は年金関連の側面を中心に手掛けていましたが、次第に「人」に関するテーマ全般へ関心を広げるうちに、M&Aの中でも人事領域の重要性を強く感じるようになりました。2018年に日本へ転勤し、PwCコンサルティング合同会社の人事チームでM&A人事支援を担当。その後一時的に他の大手コンサルティングファームで経験を積み、2023年12月にPwCアドバイザリー合同会社へ入社し、現職の人事アドバイザリーチームに加わりました。
HRの魅力は、「人への関心」と「ビジネス」を両立できることです。特にPwCでは、グローバルな環境で常に新しい人と出会い、学び続けられることが、最大の魅力だと感じています。実際、これまでに世界各地のプロジェクトに携わり、50カ国以上の人々と協働してきました。

滝澤様
新卒で不動産デベロッパーに入社しました。学生時代にバックパッカーとしてタイやマレーシアなど東南アジアを旅し、その勢いある発展ぶりに大きな刺激を受けました。「東京の街をもっと良くしたい」「国際競争力のある都市づくりに貢献したい」。不動産業界を志したのはそんな思いからでした。
入社後は情報システムや経理などを経て人事部門へ。最初は偶然の異動でしたが、取り組むうちに「人を通じて企業を動かす」ことの面白さに惹かれていきました。人が企業の原動力であり、事業に大きく貢献できることにやりがいを感じて、「人事を一生の仕事にしよう」と決意しました。
その後、より幅広い視点から人事を極めたいと考え、複数のコンサルティングファームを検討していた際に、PwCアドバイザリー合同会社で「M&A×HR」という新しい領域に出会いました。当時、この分野を専門的に扱っているファームはほとんどなく、「まだ確立されていないからこそ、自分がそのフィールドをつくっていける」という可能性に強く惹かれ、入社を決めました。

グローバル案件が豊富。国内FAS業界最大級の人事アドバイザリーチーム
アクシス
では続いて、チームの概要をお聞かせください。
宮寺様
私たちは、グループ再編なども含めた広義のM&Aにおける人事領域の支援を専門とするチームです。2020年の立ち上げ以来、国内FAS業界で最大級の人事アドバイザリーチームとなっています。メンバーにはコンサルティングファーム出身者も多く在籍していますが、事業会社で人事やM&Aに携わっていたメンバーもおり、それぞれの強みを生かしながら「One Team」で仕事をしています。
また、ハラランボスをはじめ外国籍のメンバーも活躍しており、非常に多様性のあるチームです。さらに特徴的なのは、女性メンバーの比率が他チームよりも高いこと。私たちのチームは約半数が女性で、多様な視点が存在することにより、柔軟でバランスの取れたカルチャーが醸成されていると思います。

アクシス
チームの特徴を教えていただけますか。
滝澤様
人事アドバイザリーチームの案件には、大きく2つの特徴があります。
1つ目は、支援内容の幅の広さです。FASの人事チームというと「デューデリジェンス(DD)ばかりやっているのでは」と思われることもありますが、実際にはそれだけではありません。M&Aの戦略立案の初期段階から、Day1(統合初日)に向けた準備、さらにはPMI(統合後の経営統合)による企業価値最大化まで幅広く対応しています。私たちは、ディールにおけるあらゆる「人」に関する課題を解決することをミッションにしています。
2つ目は、クロスボーダー案件の多さです。PwCの強みであるグローバルネットワークを最大限に生かし、海外チームと連携しながらプロジェクトを進めています。これまでの支援で培ってきたクライアントからの信頼も背景に、現在では案件全体の約半数がクロスボーダー案件となっています。「グローバルな案件に携わりたい」という方にとっては、非常に魅力的なフィールドだと思いますね。
こうした多様な支援領域を通じて、単なる人事支援にとどまらず、経営や組織そのものに深く関われるのが、このチームの面白さだと思います。
アクシス
他のコンサルティングファームとの違いを感じますか?
ハラランボス様
PwCアドバイザリーに入社して以来、他のファームやチームと比べて特に印象的だった点が2つあります。
1つ目は、グローバルネットワークとしての一体感です。PwCのネットワークは非常に緊密で、クロスボーダー案件においても、複数のチームがOne Teamとしてプロジェクトを進めています。国やオフィスを超えて同じ目的に向かう協働体制が整っており、日常的にグローバルな意識で働く文化が根づいていると感じます。
例えば、海外チームと仕事をしていても、いわゆる「外部のパートナー」という距離感は全くありません。クライアントのために、時差の影響のあるミーティングにも柔軟に対応し、必要に応じて想定外のサポートまで主体的に行う。国境を越えても、互いを同じチームの一員として信頼し合い、クライアントの成功に向けて動けるこの一体感こそがPwCならではだと思います。
2つ目は、組織文化のフラットさです。役職や年次に関係なく、誰とでも気軽に意見を交わし、サポートし合う文化があります。グローバルでありながら上下関係が硬直していない、オープンで協調的な雰囲気が、PwCアドバイザリーの働きやすさにつながっていると感じます。
カーブアウト案件急増と人的資本経営で「人」への関心が加速
アクシス
市場環境についてお伺いします。現在、クライアントの皆さまからはどのようなご相談が多いのでしょうか。
ハラランボス様
ここ数年、円安の進行や日本企業のグローバル展開への意欲の高まりを背景に、「海外企業の買収」と「海外への事業売却」の双方でM&Aが非常に活発になっています。中でも近年増えているのが、会社のコア事業ではない事業の売却を目的としたカーブアウト案件です。私たちが支援している案件の中には、数十カ国にまたがる大規模で複雑なプロジェクトもあり、そうしたケースでは「人」に関わる課題が非常に多く発生します。
特に最近では、経営陣やキー人材のリテンションプランニング(離職防止策)やカルチャーの評価・統合に対する関心が高まっています。これらはクライアントにとって、M&Aの成功を左右する最重要テーマの1つになっていると感じますね。
アクシス
そうした市場の変化を踏まえて、実際にどのような案件が増えているのか教えていただけますか。
滝澤様
今のお話にもあったとおり、直近ではカーブアウト案件が非常に増えているという印象が強いですが、そこでは、人事領域の課題が必ずといっていいほど発生します。同じ会社の中で1つの事業体として働いていた従業員が、買収や売却を機に複数の組織に分かれていく。その際、「人」や「組織」をどのように分けるのか、その後の制度や機能をどう設計していくのか。こうした複雑なプロセスを丁寧に支援していくのが私たちの役割です。
クライアント側でも、こうしたプロセスをより丁寧に進める意識が高まっていると感じます。事業の分離だけでなく、従業員や労働組合への対応も慎重に行うことが、M&Aの成否を左右する時代になっています。そのためプロジェクトには、クライアントに寄り添い、伴走しながら課題を解決していくべきものが確実に増えています。
また、これまでのM&Aは「成立して終わり」というイメージが強かったかもしれませんが、近年では統合後のシナジー創出までを見据えて支援するケースが主流になっています。人材・組織の両面でシナジーを最大化する「人事PMI」の重要性は、これまで以上に高まっているわけです。
私たちが支援する案件は、種類もテーマも多岐にわたり、同じカーブアウト案件でもクライアントや業界によって課題は全く異なります。そうした多様性があるからこそ、私たちにとっても常に新しい発見と学びがあり、刺激的な仕事だと感じています。
アクシス
では、こうした環境変化の中で、チームとしてどのような役割を担っていきたいとお考えですか。
ハラランボス様
人事領域では、クライアント人事部門のご担当者自身がM&Aプロジェクトの経験を全く持たないケースも少なくありません。さらに、現在は取引の規模や複雑さが格段に増しており、そうした中でクライアント内の主体となるチームが通常業務と並行してプロジェクトを進めなければならない状況に置かれることもあります。秘密裏に進める必要があるため、限られたメンバーだけで判断を求められることも多く、非常にストレスのかかる局面も少なくありません。
そうしたときに私たちは、クライアントチームの目線に立ち共に伴走する存在として、これまで多数のM&Aプロジェクトをリードしてきた経験を生かし、専門知識と市場インサイトを提供しています。クライアントのそばで壁打ち相手となり、そのとき支援スコープが明確でなかったとしても柔軟に対応しながら、安心して意思決定できる環境を整えていくことが、私たちの使命だと考えています。

「M&A×HR」という未開拓領域を、自ら切り拓ける人へ
アクシス
今後、チームとしてはどのようにしていきたいとお考えですか。
宮寺様
チーム設立以来規模を拡大してきましたが、キャパシティーの観点ではクライアントのニーズにまだ十分には応え切れていない状況です。ありがたいことに多くのご相談をいただいており、より深く一つ一つの案件に関わっていくためにも、体制の拡充が必要だと感じています。そのためには、M&Aや人事という領域で何らかの強みを持つ方にぜひ加わっていただき、チーム全体をさらに成長させていきたいと考えています。
アクシス
今後、チームとしてどのくらいの規模を目指していらっしゃるのでしょうか。
宮寺様
目標としては、現在の倍規模までは十分に拡大できると思っています。とはいえ、M&Aの人事領域を専門的に担える人材は社外にもまだ多くないのが現実です。だからこそ、志を持ってこの領域に挑戦したい方と一緒にチームをつくっていきたいですね。
アクシス
では、実際にどういった方にご入社いただきたいか、求める人物像についても教えてください。
宮寺様
まずモチベーションとしては、M&Aにおける人事領域の支援を通じて、世の中にインパクトを与えたいという思いを持っている方に来ていただきたいですね。厳しい局面もある仕事ですが、その分、社会や企業の変化を肌で感じながら、成果を形として見ることのできるところにやりがいがあります。
また、周囲から学びつつ、自らも貢献していく姿勢を持てる方にぜひ加わってほしいと思います。人事領域の課題は非常に多岐にわたります。私自身もまだ学ぶことが多いと感じていますし、常に知見を深めながら、自分の強みを発揮してチームに貢献できる方と一緒に働きたいですね。
アクシス
このチームで働く魅力ややりがいについても教えていただけますか。
滝澤様
PwCの扱う案件は規模が非常に大きく、社会的なインパクトのあるディールに携わることのできる機会が多いのが魅力です。その中で、「M&A×HR」という専門性を磨きながら、経営に近い視座で仕事ができる点は、このチームならではだと思います。また、学びの機会の幅が非常に広いことも特徴です。チームには国内外のM&Aや年金、人事制度など、それぞれの分野で専門性を持つメンバーが集まっており、互いに刺激を受けながら成長できます。
チームは今まさに発展の途上にあります。立ち上げから約5年ですが、今後の成長余地は非常に大きい。既存の仕組みにとらわれず、自分たちでチームをつくり上げていくフェーズに関われることも、間違いなくやりがいだと思いますね。

クロスボーダーでも柔軟に働ける。成長と挑戦を両立できる環境
アクシス
では最後に、このチームで描けるキャリアや働き方についてもお聞かせください。
ハラランボス様
従来の財務アドバイザリー領域に比べると、M&A x HRはまだ新しい分野です。しかし近年では、M&Aの成否を左右する重要な要素として注目が高まっています。私たちのチームは立ち上げ以来、非常に速いスピードで成長を遂げています。このグローバルなネットワークの中で働くことは、M&A x HRに関心のある方にとって、専門性を磨き、キャリアを大きく広げる絶好の機会になると思いますね。
宮寺様
よく「コンサルティング」と「FAS」を比較して、FASの方が関われる領域が限定的だと思われることがありますが、先ほど滝澤からも話があったとおり実際はそうではありません。私たちはM&Aを軸にしつつ、コンサルティング要素が含まれる案件にも多く関わっています。むしろ、「プラスαとしてM&Aの視点を持てる」というのが、このチームの強みです。経営者目線でHRの支援をしていきたい方にとって、非常にやりがいのある環境だと思います。
アクシス
働き方の面ではいかがでしょうか。
宮寺様
確かに、仕事の難易度は高く、クロスボーダー案件では時差を意識した対応が必要になることもあります。だからこそ、働き方はできる限り柔軟にすることを大切にしています。メンバーそれぞれが最もパフォーマンスを発揮できる場所・時間で働くことを尊重しています。
ライフステージにおける事情などで一時的にプロジェクトを離れる必要がある場合も、チーム全体でサポートし合う体制を取っています。最近では、男性マネージャーが半年間の育児休暇を取得し、復帰後も活躍しています。ケアの必要なご家族の事情などで働く時間帯が限られる際には、プロジェクトチームが連携して業務を支えるなど、柔軟な運営を心掛けています。
人事アドバイザリーチームの業務は専門性が求められる分、学びも多く、日々成長を感じられる仕事です。ぜひ私たちと一緒に、M&Aの現場から「人」の力で企業の未来をつくっていきましょう。

新卒で総合商社に入社し、米系証券会社の投資銀行部門、アジア系PEファンド、米系人事コンサルティング会社を経て2020年9月にPwCアドバイザリー合同会社へ入社。M&Aや企業変革期における組織人事面の支援を専門とする。
これまでに主に日系企業による国内外のM&A案件において、HRデューデリジェンス、キー人材のリテンション、従業員の移管、スタンドアロンイシューへの対応、従業員コミュニケーション、PMIなど、組織人事領域で幅広い支援を提供。前職ではシンガポールにてアジアの日系企業を支援するチームを立ち上げ、現地の日系企業マネジメントに対して人事制度改革、域内組織再編、地域統括拠点の設立に関するコンサルティングサービスを提供した経験も持つ。

PwC英国で年金アクチュアリーとしてキャリアをスタートし、2018年に日本のPwCコンサルティング合同会社に入社。
クロスボーダーでのM&Aにおける人事関連のクライアント支援を専門としており、契約締結前の人事デューデリジェンス、M&A契約検討における従業員福利厚生に関する支援、クロージング後やDay1準備の人事支援を提供。

総合不動産デベロッパーにてIT部門、経理部門を経て、人事部門のマネージャーを務めたのち、PwCアドバイザリー合同会社に入社。M&Aやグループ内組織再編などの企業の変革局面における人事領域の支援を専門とし、人事デューデリジェンス、人材移管支援、従業員コミュニケーション、Day1に向けた人事オペレーション構築、人事PMIなどのコンサルティングサービスを主に提供している。

M&A、事業再生・再編、インフラ関連の高い専門性をもって、変化する企業の成長戦略の実現を支援。PwCグローバルネットワークと連携しながら、クライアントがグローバル市場で競争優位性をより強固に確立できるよう、最適なサービスを提供している。

アクシスコンサルティングは、コンサル業界に精通した転職エージェント。戦略コンサルやITコンサル。コンサルタントになりたい人や卒業したい人。多数サポートしてきました。信念は、”生涯のキャリアパートナー”。転職のその次まで見据えたキャリアプランをご提案します。
PwCアドバイザリー合同会社 人事アドバイザリーチームの求人情報
| 募集職種 | 人事コンサルタント(M&A・事業再生等の変革支援) |
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