スタートアップ副業で気付いた、“業界を変える”本気の関わり方│製造業・大手コンサルファーム出身 Sさん(40代)にインタビュー

スタートアップ創業者の右腕として活躍できる副業CxOを通じてスタートアップ企業に副業として携わるSさん(40代 : 仮名)にインタビューを行いました。
一貫して製造業に従事してきたSさんが出会ったのは、同じく製造業をDXするスタートアップ企業。1つの事業領域に長年携わり、強い情熱を注いできたSさんにとって、スタートアップという事業モデルとの出会いは、自身の想いをまっすぐ伝えられる、貴重で新鮮な体験となったそう。
初めての「資金調達活動」を通じて見えてきたスタートアップの成長可能性、そして社会を変える力を感じたという副業CxOでの副業体験について伺いました。
Index
スタートアップなら、これまでの知見を活かして業界を変えられる
―― まず、これまでのキャリアについて教えてください。
これまでのキャリア軸としては、「日本の製造業を強くしたい」という想いが強くありました。
これは新卒で入社した企業で芽生えた気持ちです。自分で初めてプログラミングを組んだとき、「ITの力があればどこまでも業務を効率化できるはず」と実感できたからです。
その後も日本の製造業でキャリアを積み上げていくうちに、より広く業界のためになることをしたい、業界の根本的な課題を解決するためにコンサルファームに転職しました。ただ、私が望んでいたような「スマートファクトリー」に関する案件は、実際にはほとんどありませんでした。結果としてコンサルを退職したのちに、現在も製造業の現場に携われるような仕事に従事しています。
―― スタートアップとの接点はこれまであまり無かったと伺っています。
はい。これまでスタートアップで働きたいと考えてきたわけではありませんでした。
ただ、コンサルファームに転職した際に抱いていた「広く業界のためになることをしたい」気持ちは変わらず強く、私のこれまでの知識や経験をもって業界全体に貢献できないか、という想いを今も持っていて、中小企業の製造業で副業をしていたこともあります。副業CxOの存在を知ったとき、もし製造業向けのスタートアップに出会えるなら、私の想いや知見が活かせるのではないかと思いました。
―― 副業CxOについての印象も教えていただけますでしょうか。
これまで大企業経営の環境だったので、これからの新しい変化に自分も追いついていかなければ、とは思っていました。副業CxOを通じて、こうしたスタートアップの環境に魅力を感じるとともに、転職という大きな決断をせずともその環境に踏み出せることはありがたいと感じています。
副業でもここまで深くコミット。資金調達から見える事業理解
―― 現在副業している企業についてもお聞かせください。
最初に事業の内容を聞いたときに、将来的な成長の可能性を強く感じ、製造業界を大きく変えるゲームチェンジャーになりうると感じました。また、ファウンダーの方は、自分の想像以上に物腰が柔らかく、いい意味で予想を裏切られました。そういった意味で私とすごく相性の良い方でした。
―― これまでの知見が深いSさんだからこそ、その可能性に気付けたのですね。
そうかもしれません。
―― 実際の業務内容についてもお聞かせいただけますか。
今はとにかくユーザーを獲得していくフェーズなので、営業プロセスの効率化やWebマーケティングの改善を行っています。そして、資金調達のためのディスカッションにもリソースを割きました。
―― 日々の業務で”資金調達”は馴染みが薄いかもしれません。ぜひ資金調達に関連したエピソードがあればお聞かせください。
おっしゃる通りこれまでは馴染みが薄かったです。資金調達に関係する一番の気付きは、単にお金を工面する作業だけではないということでした。「この事業の成長の可能性はどこにあるのか」、一方で「どんなリスクがあり、それにどう向き合うのか」といった、企業経営に関するさまざまな指標を言語化し、ストーリーとして整理する重要なプロセスだと実感しました。
この工程を経て、Webページからは読み取れない事業のポテンシャルにも気付けました。副業としてここまで深く業務に入り込めたのは、非常に貴重な経験だったと思います。
―― いわゆるエクイティストーリー*の磨き込みまで深く携わったのですね。この工程にはどれくらいの工数をかけて臨んだのでしょうか。
ミーティングの時間で言えば、オンライン・オフラインを合わせて20時間ほどでしょうか。実際には、このスタートアップのユーザーの課題を深掘りしていくことから始めました。
このサービスを取り巻く人にはどのような人がいて、どのような課題を抱えているのか。その課題が解決されたとき、なぜうれしいのか——。さらに、その優先度や、異なる業界や地域への応用可能性についても、丁寧にディスカッションを重ねました。
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(編注) エクイティストーリー とは
投資家に向けて会社の特徴・成長戦略・企業価値の増大の道筋についての説明をするストーリー。投資家に自社の魅力を伝え、自社の企業価値を向上させる最も基本的な手段となる。従って、エクイティストーリーを構築し、投資家とのコミュニケーションを通じて継続的に磨き上げていくことが重要となる。 経済産業省 スタートアップの成長に向けたファイナンスに関するガイダンス(2022)
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―― ご自身の経験をフル活用し、前のめりに参加されていますね。
これは自分にとっても、そしてこのスタートアップにとっても必要で大切な業務だったと思います。これがあったからこそ、納得感を持って業務に取り組むことができました。それくらい本気で関わるためにやって良かったことだと思います。
副業から見えてきた「新しい選択肢と自信」
―― この期間を通じた変化はありましたか。
繰り返しになりますが、このサービス自体の解像度は大きく上がりました。詳細は伏せますが、このサービスが一人の課題解決だけでなく、現場の、そして業界全体を変えうるサービスなのだという気付きが大きかったです。
そして、それが外から見ているだけでは分からなかったということも貴重な気付きでした。
―― ご自身の知見を活かせるフィールドがスタートアップという地にあった、ということも大きな気付きではないでしょうか。
確かに、これまであまりスタートアップで働くこと、そしてスタートアップ企業自体を意識したことがありませんでした。これは製造業に限らず、長く同じ領域で、そして大企業で働いていると、「これなら自分でもできる」「これは難しい」という判断を、無意識にしてしまうことが多いからではないでしょうか。スタートアップにはその常識が無いのがある意味良いなと思えます。
―― 同年代の方にアドバイスをお願いいたします。
スタートアップへの転職は、ハイリスクで、すぐには難しいと思う方も多いはずです。ただ、スタートアップには社会を変えるような力が、そして社会を変えたいとまっすぐ考えている人たちがいます。
どんな領域でも良いと思います。何かを変えてみたい、社会をより良くしたいという気持ちがある人は一度スタートアップを経験してみると自分の想いを見つめ直せたり、適性に気付いたりすることができるのではないかと思います。
スタートアップを試してみて、今がタイミングではないと気付けるのもいいですし、そのまま一層のめり込むのもいいですし、まずはやってみるということが一番大事かもしれません。
大学卒業後から一貫して製造業に従事。 製造系企業から大手コンサルファームまでさまざまな企業に勤め、商品開発から生産ラインの改善、データ活用など多岐にわたるプロジェクトマネジメントに従事。 2024年11月に副業CxOを開始。製造業に関するスタートアップに副業として参画し、2025年4月現在も副業を継続。