「スタートアップで求められる“人材力”とは」スタートアップ企業に社外COOとして携わるNさん(30代)にインタビュー

スタートアップ創業者の右腕として活躍できる副業CxOを通じてスタートアップ企業に社外COOとして携わるNさん(30代 : 仮名)にインタビューを行いました。
これまで多数のスタートアップ企業でCxO、COO、CHRO、CMOとして支援してきた実績を持つNさん。
数多くのスタートアップ、そして数多くの起業家、キャリアパーソンを見てきたNさんに、副業 取り組むべき課題や活躍するためのマインドセットについて伺いました。
Index
起業家のビジョンから事業戦略を具現化する
――Nさんが取り組んでいる業務内容について聞かせていただけますか。
今は○○ラウンド(※秘匿情報のため情報開示を伏せております)の資金調達の最中なので、その戦略立案やピッチ資料のアウトプットを監修しています。ようやく一通りフィックスしてこれから投資家を回るところですが、むしろここからが始まりだと感じています。
―― おっしゃる通り、加筆・修正を重ねて戦略が磨かれるものですよね。
その最中にメンバーと会話しながら事業計画を考えるのですが、「5年で !時価総額○○億円を目指そう! (※秘匿情報のため情報開示を伏せております)」というようにスケールが大きい話になって。
そこで採用戦略の立案が必要になってきて、「このフェーズにはこういう組織図になっていて、このポジションにこんなペルソナの人材が必要で……」ということを考えて採用ツールの担当者と会話をしています。
―― 採用戦略は事業計画に紐づくので表裏一体かと思います。
そうなのですが、私は先に事業計画を描く方が大事だと思っています。計画を実現するための手段が人材採用だと思っているので。
―― 実際の稼働スケジュールはどのようになっているのでしょうか。
今は25%の稼働率で働いていますが、だいたい定例MTGは週に3時間ほど。私は日中を空けられるのでその時間にやっていて、それ以外はSlackでのコミュニケーションを取っています。
ほかにも、資料作成で日によっては夜に2時間くらい一気に時間を取ってやっています。これで週に10時間くらいです。
―― 今までのご経験がアウトプットの質・速さの両方に影響を与えているように感じました。
確かにそうだと思います。私のこれまでの経験をどのようにこのスタートアップにフィットさせるかを意識させながら日々関わっています。言ってしまえば、ジョインしたDay1から戸惑うことも正直なかったです。
仕事を待つのではなく創る、それがスタートアップに求められるマインド
―― なるほど。どうしたらNさんのようにすぐにスタートアップで活躍できるのでしょうか。
スタートアップで働くということは、仕事が降ってくるわけではなく、常に仕事をつくっていくということでもあります。常に何かしらが欠けて不足している、スタートアップではそれが当然だと思います。
――これから新たにスタートアップキャリアを検討される方に向けてアドバイスをいただけますでしょうか。
スタートアップ、特に起業家と一緒に働く上で、大きく分けて4つ意識すべきことがあると思います。
1つ目は、自分と住んできた世界が違う、働いてきた環境が違うということ。これまで体験してこなかった環境文化の適応はとても大事で、そこを飛ばして「とにかく活躍したい」と思うと、後になって期待値がズレてくることもあります。
2つ目は、その事業領域に特化してきた第一人者であるファウンダーに最大限にリスペクトを持つこと、そしてその領域を深く学ぶ努力をすることです。
―― どちらも、郷に入っては郷に従う、といったイメージですね。
そうですね。これらを踏まえてようやくスタートラインに立つことができ、3つ目に意識すべきことはメンバーから認めてもらえる圧倒的な成果を出すことです。
私の今回の副業の場合は、最初に取り組んだ業務が資金調達にあたってのリードVC * 候補のアタックリスト作成だったので、素早く作成して共有しました。
(編注) リードVC … スタートアップがVC(ベンチャーキャピタル)複数社から資金調達を実施する際に、最初に投資の意思決定をし、投資家の中で中心的役割を担うVCのこと。
そして最後の4つ目は、組織変革にインパクトを与えられるダイナミックな仕事に果敢にチャレンジしていく姿勢です。
―― どれをとっても、CxOに求められる本質ですね。
これらの要素を総括して言えば、一般企業での業務と全く異なるはずです。
上の立場から助言するアドバイザリー的な関係はあまり意味がなく、対等、あるいは下から行くくらいの気持ちでコミュニケーションしていく必要があると思います。
そして、スタートアップで活躍するということは、何も分からない状況で最善策をなんとか見出す、それを信じて突き進む戦いなのだと思います。これがエンタープライズやコンサルファームと最も異なる点であり、最も面白い点なのではないかと感じています。
大手IT企業で営業から新規事業開発まで担当。社内ベンチャー立ち上げも経験。自身の経験を踏まえてスタートアップ支援事業で独立。COO、CHRO、CMOなど多岐にわたる職務で経営支援を行っている。