起業に必要なのは“スキル”よりも資本設計──【元ITコンサル起業家】宮田和也氏が語る独立成功の条件

起業に必要なのは“スキル”よりも資本設計──【元ITコンサル起業家】宮田和也氏が語る独立成功の条件
元ITコンサルタントとしてキャリアをスタートし、現在はCOUNTER株式会社を率いる宮田和也さん。TCSやキャップジェミニで培ったエンジニア・コンサル経験を土台に、SEOを軸としたデジタルマーケティング事業を展開しています。

本インタビューでは、起業に向けた「人的資本・社会資本・金融資本」の考え方、SNSを活用した社会資本の築き方、そして「地方×SEO」という独自のブランド戦略に至るまで、そのリアルな経験を語っていただきました。

コンサルからの独立を考える方や、キャリアの次の一歩に悩む方にとって、多くの学びとヒントが詰まった内容です。

ゲスト:宮田 和也(COUNTER株式会社 代表取締役 CEO) 
青山学院大学経済学部卒業後に外資系ITコンサルティングファーム2社にてエンジニア・ITコンサルタントとして複数のERPシステム導入・運用プロジェクトを経験。 
その後、株式会社CINCにてWebマーケティングアナリスト、株式会社バンケッツにてメディア事業責任者を経験し独立。提案・プロジェクトマネジメントスキルを活かし、ニュートラルワークスで執行役員、SEOコンサルティング部門責任者を経験。 
2024年1月、COUNTER株式会社を創業。事業貢献するSEOコンサルティングを得意とする。  

モデレーター :藤澤専之介 
RPA業務を自動化するテクノロジーの会社を2018年に立ち上げ、2022年にクラウドワークスにM&Aでイグジット。その後、子会社の社長やスタートアップの支援などを行い、現在はM&A支援に従事。 


 

起業成功のカギは“3つの資本”──コンサル出身者が直面する現実と備えるべき力

藤澤
コンサル出身者の中には「自分も起業したい」と考える方も多いと思いますが、宮田さんはどうお考えでしょうか?

宮田さん
キャリアを考える際には、「人的資本・社会資本・金融資本」のバランスをどう取るかが重要です。これは最近よく使われる言葉ですが、私自身も熟考してきました。たとえば「売上をどこまでつくりたいのか」「M&AやIPOを目指すのか」によって、必要となる資本の組み合わせは変わります。

実際に相談を受けた際には、スキルの棚卸しを一緒に行います。「自分にはこういうフォロワーや業界内での知名度がある」「こういうスキルを持っている」といった人的資本や、「これくらいの資金がある」といった金融資本を明確にしていくのです。

藤澤
なるほど。ご自身の経験に基づいて、アドバイスをされているのですね。

宮田さん
はい。私が独立した時は、業界ではどの程度の知名度があり、フォロワーがどのぐらいだったか、という社会資本、そしてこのぐらいのスキルを持っていた、という人的資本、そして、金融資本としてはこのぐらいのお金をもっていた、だからここまで行けたのだというお話をします。相談を受けた際には、その話を踏まえて「今は難しいからまずは社内で経験を積みましょう」とか、「起業を目指すなら、この資本を伸ばす必要がある」といった具体的な助言をしています。実際に、そうしたやりとりを経て独立された方も数名いらっしゃいます。

藤澤
つまり、ご自身の資本状況を宮田さんに客観的に見てもらいながら、起業に向けた現実的な道筋を考えるということですね。

宮田さん
その通りです。特にBtoBの法人向け事業では、人的資本と社会資本が極めて重要です。デジタルマーケティングの中でも検索エンジンのマーケティング領域では、その傾向がより顕著です。最終的にどの領域に挑戦するかによって、必要な資本の配分は変わってきます。ですので、コンサル出身者の方が起業を考える際には、自分の持つ資本を冷静に見極めることが成功のカギになると思います。

BtoB事業で差を生むのは“社会資本”──SNS活用と人脈構築が顧客獲得のカギ

藤澤
BtoB事業において、人的資本や社会資本の重要性についてどのように考えていらっしゃいますか?

宮田さん
SEO業界全体を見ても、顧客獲得の基本は「問い合わせ」や「資料ダウンロード」といったマーケティング活動になります。多くの企業が自社でオウンドメディアをつくり、ホワイトペーパーを用いて流入を図るのが一般的です。

ただ、SNSの領域に関しては、これまで十分に活用されていませんでした。ところが、実際にはX(旧Twitter)やYouTubeで目立つことができれば、それ自体がプロモーション上の大きな差別化ポイントになる。つまり顧客獲得においては、社会資本をどれだけ持っているかが極めて有利に働くのです。

藤澤
なるほど。SEOの世界ならではの特徴もあるのですね。

宮田さん
そうですね。検索エンジンの世界観は、もともとブログをやっていた人たちがつくった文化です。そのため、当初はあまり高学歴の人が多い業界ではありませんでした。そんな中で、外資系のITコンサルファーム出身ということで、業界における評価が大きく変わり、それが権威性につながることもあります。

私自身はエンジニアとして統計や数学を学んできたタイプでしたので、検索エンジンに対する深いインサイトを持っていました。こうした裏付けがあると、業界内での強みがより際立つのです。

法人向けのサービスを考える際には、「どの領域で・誰と・いつやるか」をしっかりと紐解き、説明できることが重要です。

藤澤
大手ファームにいると社会資本がつくりづらく、特にSNSでの発信がしづらいと感じる方も多いと思うのですが、SNS発信の重要性について、どのようにお考えでしょうか?

宮田さん
ITコンサルファームにいると、情報発信はガバナンスの観点から非常に難しい側面があります。ただ、人脈を築くこと自体は可能です。今では週末や平日の夜遅くにもスタートアップの交流会が開かれていますし、当時はVCの活動は盛んではなかったのですが、メガベンチャーの交流イベントには積極的に参加していました。

また、私は学生時代にNPO活動に携わっていたので、そこで多くの経営者の方とつながり、情報を得る機会がありました。情報取得や社会資本の構築につながる前段階は、誰にでも実行可能なことだと思います。

論理力から調整力へ──ITコンサル転職で直面したコミュニケーションの壁

藤澤
ITコンサルタントに転職された際、どのような課題がありましたか?

宮田さん
エンジニアの方は全員がそうではありませんが、論理的思考が非常に強い方が多いと感じています。コンサルタントになると、論理だけでなく「調整業務」や「コミュニケーション力」が重要になります。

私自身はどちらかというと「ドバーッ」と話してしまい、相手の要望に沿った形で情報を渡せない場面が多かったのです。ドキュメント作成は得意だったのですが、コミュニケーションに課題を感じました。

藤澤
その課題は入社後に改善されていったのでしょうか?

宮田さん
在籍期間は短かったのですが、かなり指摘を受けました。結局その後Webマーケティング業界に進むことになったのですが、Webも基本的には「Webコンサル」の仕事です。そこでもコミュニケーションについて多く指摘されましたね。

藤澤
コンサル時代はどのような経験をされたのですか?

宮田さん
最初に携わったのは「統合プロジェクト」です。M&A後のPMIPost Merger Integration)として、既存のSAP設定を統合し、運用に必要なプログラムを開発するという案件でした。

藤澤
エンジニアからコンサルへ転職されましたが、その際にエンジニア時代の経験はどう生きましたか?

宮田さん
コンサルファームではExcel力が非常に重要です。私はエンジニア時代からショートカットを駆使していたので、Excelやドキュメント作成のスピードは誰にも負けませんでした。設計図をつくるスキルもエンジニア時代に培った強みで、転職後も大きなアドバンテージになったと思います。

「地方×SEO」で差別化──プロダクトとプロモーションを掛け合わせた独自戦略

藤澤
起業後の事業成長の経歴について教えていただけますか?

宮田さん
事業をつくる際には「プロダクト」と「プロモーション」のバランスが非常に重要だと考えています。SEO業界には多くの会社がありますが、差別化が難しいのが実情です。そのため、私たちはまず「選ばれる存在になる」ことを意識しました。

たとえば、「カテゴリーエントリーポイント」という、自社を想起させるポイントをいかに多く持つかがマーケティングにおいて重要です。一般的なSEO会社はアルゴリズムの説明に重点を置きますが、私は事業開発の経験を活かし「事業開発に強いSEO会社」というポジションで支援を行っています。あとはローカル支援。私共は埼玉県で事業を行っているので、「ローカルの支援に強い」または「ベンチャーに強い」など。

ベンチャーにおいても、資金調達においてはシリーズABと進むにつれて具体的な数値が求められます。そのため、他社が手をつけていないカテゴリーをつくり、プロダクトとプロモーションを掛け合わせて独自のパッケージを開発してきました。

藤澤
たとえば「地方×SEO」といった形でポジショニングしているのですね。

宮田さん
まさにそうです。「地方×SEOといえば弊社」と想起されるように、明確な差別化を打ち出しています。

藤澤
「地方×SEO」における御社のブランド戦略について教えてください。

宮田さん
起業前に所属していたのは、湘南にあるデジタルマーケティング企業でした。もともと、ローカルでデジタルマーケティングに強い会社を伸ばした経験があったため、「ローカルに強い人」というタグが自然とついたのです。そのおかげで弊社はローカル文脈において目立つ存在となり、その強みをどう派生させて他分野に転換できるかを設計しました。

また、XYouTubeなど様々なチャンネルへの出演を通じて認知拡大にも取り組んでいます。

藤澤
起業家に必要な力のひとつに「メタ認知」がありますが、宮田さんはどのように高めてこられたのでしょうか?

宮田さん
マーケティング支援をしていることもありますが、私は基本的に「世界最強のNo.2になる」というテーマを掲げています。最強のCOOを目指す意識が自分の中に常にあるのです。

一般的に、時価総額を100億円や1,000億円規模にまで伸ばす起業家の方々は、強いWill(やりたいこと)をベースに行動していることが多いと思います。もちろん彼らもメタ認知力が高いのですが、どちらかというと「仕組み」より「自分のやりたいこと」に軸足があります。

一方、私はWill型ではなく、No.2タイプとしての成熟度が強みです。仕組みづくりや全体を俯瞰して考えることに長けているのが、自分の特長だと考えています。

 

獲得領域でスキルを磨く、コンサル出身者に開かれた新たなキャリア

藤澤
御社では、コンサル出身者の方々も在籍されていると伺いました。どのような方が多いのでしょうか?

宮田さん
弊社でもCRMなどのツール導入を進めていますが、コンサル出身の方々は「SEOや広告、SNSといった新規獲得領域に携わりたい」という希望を持っているケースが多いです。CRMはリテンション領域ですが、獲得領域のスキルを磨きたい方には、副業や業務委託、さらにはフリーランスを目指す形でも弊社に関わっていただけます。実際にそうした方が複数いらっしゃいます。

弊社の話を聞いてくださる方の中には、コンサルファーム出身者が多いと思います。弊社はSEOを軸にしながら、UXデザインやPRなども組み合わせたデジタルマーケティングの支援を行っています。もし「SEO×何か」に関心がある方や、地方からでも全国的に勝負できるマーケティングを考えている方がいれば、ぜひ一緒に挑戦していきたいです。

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