「遊びでしょ」と言われた“ギャル式ブレスト”が大企業の社長を動かした理由/CGOドットコム 総長 バブリーさん インタビュー【前編】<PHILOSOPHY─経営者の思考とキャリア─>

変化の激しい現代において、企業や組織を率いる経営者たちは、どのような哲学を持ち、いかなる判断基準で意思決定を下しているのでしょうか。
このシリーズでは、各分野で独自のポジションを築く経営者たちの「PHILOSOPHY(哲学)」に迫ります。単なる成功事例の紹介ではなく、その根底にある思考プロセス、価値観の形成過程、そして困難な局面での判断の背景を深く掘り下げていきます。
今回は、合同会社CGOドットコムで総長を務めるバブリーさんにスポットを当てます。
大学3年生での起業当初、「そんなの遊びでしょう」と否定の言葉を浴びせられながらも、ギャルマインドをソリューションとして企業変革に挑んできたバブリーさん。三菱鉛筆、札幌市、JR貨物、日産自動車、NECなど、大企業や官公庁での実績を重ね、今や「ギャル式ブレスト」は組織の殻を破る手法として注目を集めています。
「批判が多いほど、新しいことをやっている証拠」——。そう語る彼女が掲げる「各社に1人ギャル」というビジョンには、どのような哲学が込められているのでしょうか。ギャルマインドで日本を「アゲる」、その信念と挑戦の軌跡を伺いました。
Index
ギャルマインドを呼び覚ませ。固定観念を打ち破るソリューション
アクシス
まずは、簡単な自己紹介と事業について教えていただけますか。
バブリーさん
合同会社CGOドットコムで総長をやっておりますバブリーと申します。よろしくお願いいたします。
私たちは日本社会にまだある固定観念を打ち破るべく、令和ギャルの「ギャルマインド」をソリューションとしている会社です。大きく分けて、人や組織の改革を行うコンサルティング研修と、そこからプロモーションや商品開発に生かしていくスタジオ事業の2つを展開しています。
アクシス
会社の成り立ちはどんなきっかけだったのですか。
バブリーさん
もともと大学時代に「ギャルマインドをビジネスにできるんじゃないか」と思ったのが始まりです。当時、元湘南のギャル男が友だちにいて(笑)。その彼が大手企業の中間管理職になり、ギャルマインドを失っていると言っていたんです。「部下には気を遣い、上司には忖度をし、なんだか自分らしくない毎日を暮らしている」と。
それを聞いて、これって彼だけではないと思ったんです。そして、もともとみんなの中にあるギャルマインドをもう一度引き出せたら、絶対に何かが変わるんじゃないかと考えて2020年に事業を立ち上げました。
アクシス
起業して最初は何をされたのですか?
バブリーさん
まず、「ギャルマインド」という言葉自体が世の中になかったので、そこから定義づけを始めました。ギャル50人くらいにアンケートやヒアリングをして、出てきた答えを整理していったんです。その結果、3つの共通点が見えてきました。それが、「自分軸」「直感性」「ポジティブ思考」。つまり、“自分の好きなことを貫いて、直感やひらめきを大切にしながら、どんなことも明るく乗り越えていく力”ですね。
そこから現在のサービスにつながる「ギャル式ブレスト」につながっていくんですけど、最初は本当に実験みたいなものでした。渋谷の「SHIBUYA QWS」という場所で、新規事業を探している方や、何か新しいことを始めたい人たちに声をかけて、「ギャルと会議でしゃべってみませんか?」って(笑)。
企業の方に来てもらって、ギャルの子たちにはバイト代をお渡しして、「ちょっと話してみて」という感じで始めました。それを何回も繰り返して、フィードバックをもらいながら、ルールやフォーマットを検証していって、少しずつ形になっていったんです。

「遊びでしょ」を覆した三菱鉛筆の挑戦、批判を追い風に変える
アクシス
2020年の事業開始以来、大企業からスタートアップ、官公庁まで多くの組織で成果を挙げられていますが、そこに至るまでいろいろな変遷があったと思います。その中でも大きな転換点はありましたか。
バブリーさん
最初に声をかけた企業のひとつが、三菱鉛筆さんでした。2022年に「ギャル式ブレスト」を実施したときに、なんと社長の数原滋彦さんが自ら参加してくださったんです。ブレスト中は敬語禁止・あだ名で呼ぶ・タメ語で話すというルールを導入していて、社長も例外ではなく、ギャルたちからは「しげP」と呼ばれていました(笑)。
その場では、普段出ないようなアイデアがどんどん飛び交って。「こんなに自由に話せる会議があるんだ」って、参加者の皆さんがすごく楽しそうだったのを覚えています。このセッションがメディアで取り上げられたことで、「三菱鉛筆さんがやっているなら、うちもお願いしたい」と他の企業さんからも声をいただくようになって、そこから一気に広がっていきました。
アクシス
それまではどうだったのですか。
バブリーさん
まず、そもそも私たちの話を聞いてもらえなかったです。周りからは「そんなの遊びでしょ」とか「絶対うまくいかないよ」みたいな言葉を、本当に大量に浴びていました。とにかく否定的な声が多かったですね。
アクシス
そうした時はどのように受け止めていたのですか。
バブリーさん
逆に「ビジネスチャンスだ」と思いました。だって、「めっちゃ面白い!共感する!」って言われたら、それってもう世の中にある価値なんですよ。でも、こんなに反対の声が多いってことは、それだけ新しいことをやってる証拠だなと思って、むしろうれしかったです。
実際に、2023年、2024年と札幌市さんと一緒にプロジェクトに取り組んだときも、いろんな声が上がりました。「税金使って何してんの?」「ギャルがなんで市役所に来るの?」みたいな感じで、すごいたたかれようでした(笑)。でも私は、それを見て「まだこういう取り組みが新しい証拠だな」と思いましたし、だからこそ、もっとギャルの価値を広めようという気持ちになったんです。札幌市役所の方たちはすごくポジティブに捉えてくださっていて、結果的に札幌市内のキー局すべてに取り上げていただきました。注目度の高さを実感しましたね。
アクシス
批判を受ける状況で、メンバーの方にはどのような声をかけていたんですか。
バブリーさん
むしろメンバーの方が私よりもポジティブで、誰も落ち込んでなんかいなかったです(笑)。「ウチら、新しいものつくってるよね!」という感じのバイブスで、エネルギー量がめちゃくちゃ高い。みんな前だけを見て突き進んでいましたね。
年功序列と沈黙を壊す、ギャル式ブレストが組織をゆるめる理由
アクシス
まさに「ギャルマインド」がチーム全体に浸透している感じですね。そうしたマインドから、実際の企画や研修などのコンセプトはどうやってつくっているのですか。
バブリーさん
私たちは「直感」をすごく大事にしています。最初に“理論的に正しいかどうか”ではなくて、自分たちがどう感じるかを起点にするんです。たとえば「これ、面白そう」「なんかやりたい!」という感覚がまずあって、そこから「なんで面白いと感じたんだろう」とか「社会にどう響くか」をリサーチして、理論を後からつけていく。つまり、“欲望→検証→理論化”の順番なんですよね。最初に頭で考えるよりも、感情やバイブスを信じて動いた方が、結果的に社会に刺さるものが生まれる気がします。
アクシス
合同会社CGOドットコムのソリューションがズバッとハマる企業はどのような課題を持っていますか。
バブリーさん
「ギャル式ブレスト」というワークショップ型プログラムでは、会議の場にギャルがファシリテーターとして入り、参加者同士の忖度のない会話からアイデアのタネを見つけていきます。なので、社内でどうしてもアイデアが出ないとか、発言が限られてしまうような企業さんからご依頼をいただくことが多いです。背景としては、年功序列の文化が根強いている組織だったり、いつも同じ人だけが発言してしまう会議体だったり。そうした状況をどうにか打破したい、という企業が多いですね。
アクシス
そこから、どのようにプロジェクトを進めていくのですか。
バブリーさん
まずはしっかりヒアリングします。「こういう悩みがあるので、一緒に取り組めませんか?」というご相談をいただいたら、「では、どんな組織になっていきたいですか?」と未来の姿をお聞きしつつ、現状も細かく伺います。
そうして理想と現状のギャップが見えてくる中で、「ここだったら私たちがご支援できるかも」と感じた部分を中心にプロジェクトをご提案しています。企画提案はすべて企業ごとにカスタマイズしているので、ヒアリングにはかなり時間をかけていますね。
アクシス
一方で、過去にお問い合わせをお断りしたケースもありますか。
バブリーさん
ありますね。実は、業界的にギャルと近すぎるところはあえてお断りしているんです。たとえば「ギャルがコスメをプロデュース」や「カラコンのタイアップ」などは、もう既にギャルがたくさんいる領域なので。だからこそ、「そこにギャルいる?」というような、ギャルがまだ進出していない業界とコラボする方が面白いし、私たちらしいと思っています。

“あえて”空気を読まない。ギャルの繊細かつ大胆なファシリテーション力
アクシス
そんな挑戦的なスタンスを貫く中で、CGOドットコムの強みはどんなところにあると思いますか。
バブリーさん
お客さまからよくいっていただくのは、「とにかく超楽しい!」という言葉です。笑う瞬間が増えるし、自分で発言すること自体が楽しくなる。なぜかというと、ギャル式ブレストには“否定されない空気”があるからなんです。
どんな意見が出ても、ギャルたちはまず「いいじゃん!」と全肯定で受け止めてくれる。そうすると、普段会議で黙っている人も「話していいんだ」って自然に思えるようになるんですよ。そうして笑いながら学び、そこから本当に企業の変革が起きていく。それが私たちのいちばんの強みですね。
アクシス
弊社の取材陣も、CGOドットコムが提供されている研修の現場を見させていただきました。本当に楽しい空間でした。でも一方で、そうした場の空気は相手企業によっても違うのではないでしょうか。どのように対応しているのですか。
バブリーさん
ギャルの子たちに、「こういうふうに振る舞ってね」と特別な指示を出すことはないんです。けれど、現場に入る前の準備はかなり丁寧にやっています。相手企業がどんな会社なのか、どんな目的で私たちに声をかけてくれたのか、どんな人たちが参加するのか。そうした情報を必ずチーム全体で共有するようにしています。
そのうえで、「どんなアイデアが出そうか」「どうすれば社員の皆さんの発想を広げられるか」をみんなで考えて、実際にロープレをしてシミュレーションするんです。だから現場ではすごく自然に見えるけれど、実は裏でかなり綿密に設計しているんですよ(笑)。
アクシス
なるほど、設計をされていたわけですね。では、現場で“うまくいったな”と感じる瞬間はどんな感じですか。
バブリーさん
たとえば会議の初めに下を向いていた方や、物静かな方が、後半になるにつれて楽しくなってきてどんどん話している姿や、アイデアを出されている姿を見るとうれしくなりますね。
アクシス
では逆に、「うまく進んでないな…」と思ったときはどのように軌道修正をされるのでしょう。
バブリーさん
ありますね。たとえば、全員楽しくなりすぎてテンションが“わっ”とアガりすぎちゃうときもあるんですよ(笑)。そういうときは、ギャルの子たちが今、この場がどういうテンションなのかをちゃんと読んでいるので、運営側と意思疎通を取りながら、少しずつクールダウンをしていくんです。そうやって場のバイブス(空気のエネルギー)の調整をしながら、全体のテンションを一定に保つようにしています。発散するとき、しっかり考えるとき、みんなで話すとき、そうした緩急は意識してつくっている感じですね。
アクシス
「この空気感はよくないな」とギャルの方たちが感じ取れるのは、なぜでしょうか。
バブリーさん
それは、もしかしたらギャルの特性かもしれません。ギャルって、一見「空気を読まない」ように見えるけど、実はめちゃくちゃ“読んでる”んです。あえて読まないように振る舞うことで、場の流れを変えたり、逆にバイブスをつくり出したりするのがすごく上手なんですよ。
たとえば、ある企業でのギャル式ブレストのとき、ギャルの隣に座っていた参加者の方が、すごく緊張していたんです。 するとそのギャルの子が、開口一番こういったんです。「ウチら今、気まずくね?」って(笑)。まだ開始前にもかかわらず、その一言で場が一気に和んで。“気まずい空気”って、実は自分たちでつくり出してるんだよ、って。そうやって気持ちを共にして輪に入っていくのが、ギャルのすごさだなと思いました。
それができるのは、自分という軸がしっかりあるからこそなんですよね。自分を大切にできるから、相手へのリスペクトもすごく高い。相手がどう感じているかを細かく察して、場に合わせて動ける子が本当に多い印象です。
ギャルを経営の中枢に。CxOに並ぶ新たな肩書「CGO」に込めた思い
アクシス
一度の研修やブレストで空気が変わる瞬間はあっても、それを組織に根づかせるのは難しい部分もあります。CGOドットコムでは、研修後の定着のためのフォローはどのようにされているのでしょうか。
バブリーさん
最近、新しくリリースしたのが『ギャル式1on1』というサービスです。やはり研修では一気にバイブスが盛り上がって変革の芽が出てくるんですが、日常に戻るとどうしても元の空気に引き戻されてしまうんですよね。そこで現在は、ギャル式ブレストに参加された企業さんを対象に、6カ月間の伴走型プログラムとして個別フォローを行う仕組みをつくりました。
ギャルと一対一で話すという形式のコーチングプログラムなんですが、対面的なコミュニケーションを通じて、本人の中にある「やりたい」という内発的なモチベーションを言葉として引き出していくんです。それをキャリアイメージに乗せていくサポートをしています。
アクシス
お話を聞いていると、ギャルマインドが日本の発展の一助になっていくように感じます。
バブリーさん
それは本当に思います。見た目は何でもいいと思うんです。大切なのは、心の中に少しでもギャルマインドを持つこと。それだけで日本はもっとアガると思います。なぜそれができないのかというと、やっぱり大人のしがらみなんですよね。
肩書や役職に囲まれて、「その役を演じないといけない」というプレッシャーがある。でも、本来はその手前に“やりたい”という気持ちや、自分らしさがあるはず。そこにふたをしてしまっている状態が、今いろんな場所で露呈していると思うんです。
アクシス
確かに、しがらみはどこにでもありますね。そうなると、いっそ“ギャル採用枠”をつくった方がいいかもしれませんね(笑)。
バブリーさん
おっしゃる通りです(笑)。だから、うちの社名は「CGO(Chief Gal Officer/チーフ・ギャル・オフィサー)」なんです。各社にCEOやCOOがいるように、ギャルを経営の中枢に置いてほしいという願いを込めて名づけました。
堅い業界の企業の役員ページにギャルが1人いたら、めっちゃ面白いじゃないですか。でも、それぐらいの遊び心と自由さこそ、組織を元気にするエネルギーになると思っています。
後編に続く:「ギャルはAIに代替されない」。ギャル人材1,000人で40億円経済圏を目指し、”評価のものさし”を変える


人生で3回学校を中退。家出先の大阪で出会ったギャルマインドに感銘を受ける。✨🌈ギャルマインド🌈✨で「世の中のバイブスをアゲる↑」ことを目指し、合同会社CGOドットコムを設立。企業や団体にギャルを送り込む『ギャル式ブレスト®︎』、そこから生まれたアイデアを商品や事業に反映する「ギャル式スタジオ」などを展開する。2023年「Forbes Japan 世界を救う希望100人」に選出。2025年「IVS LAUNCHPAD2025」にてインベスターZ賞を受賞。バブリーという名前は、本名の竹野理香子の「竹(バンブー)」と「理香子」に由来。

合同会社CGOドットコムは、総長バブリーさんが2019年に創業した組織開発企業です。「自分軸」「直感性」「ポジティブ思考」で定義される「ギャルマインド」を武器に、企業の固定観念を打ち破ります。
三菱鉛筆、スズキ、日産自動車、札幌市など大企業・官公庁で導入実績がある主力サービス「ギャル式ブレスト®︎」は、ギャルがファシリテーターとなり、敬語禁止・あだ名呼びで心理的安全性の高い場をつくり、自由な発想を引き出します。
社名の「CGO」は「Chief Gal Officer」の略で、CEO・COOと並びギャルを経営の中枢に置くべきという信念を表現。「各社に1人ギャル」をビジョンに掲げ、型にはまらない才能が活躍できる社会の実現を追求しています。

アクシスコンサルティングは、コンサル業界に精通した転職エージェント。戦略コンサルやITコンサル。コンサルタントになりたい人や卒業したい人。多数サポートしてきました。信念は、”生涯のキャリアパートナー”。転職のその次まで見据えたキャリアプランをご提案します。


