フリーランスの経費はどこまでOK?必要経費になる・ならないの違い【2025年版】

フリーランスは、日々の売上や経費を会計ソフトなどに記帳し、規定の書類を税務署へ提出します。中でも必要経費に「なる」・「ならない」の判断はやや専門的になるでしょう。
会計知識が乏しいフリーランスにとっては、その判断が難しく悩みがちです。そこで、本記事ではフリーランスの経費になるものとならないものについて詳しくご紹介していきます。
いざフリーランスになり、各々得意分野で活動していく際に共通して必ず理解しておく必要があるのが、フリーランスの経費仕訳の正しい知識です。
では、そもそも経費とはどういうものなのかについて掘り下げていきましょう。
Index
【基礎知識①】そもそも経費とは?
必要経費とは?事業活動に直接関係する支出が原則
経費とは事業活動をしていくうえで発生していく費用のことを指します。たとえば以下のシーンが考えられます。
1、WEBライターとして活動する際にリサーチ活動として購入した参考図書や、取材活動の交通費
2、YouTube動画配信する際のカメラ機器や照明
3、事業を行う上で借りているオフィス代
以上は費用として計上されます。ではなぜ経費の計算が必要なのでしょうか。
経費計算の重要性 納税義務と減価償却 計算の基礎
フリーランスを言い換えれば「個人事業主」。個人事業主は事業活動するうえで必ず、事業所得を自ら計算する必要があります。所得とは、売上から必要経費を引いた金額を指します。
この所得を計算して、所轄税務署に申告する手続きを「確定申告」と言います。当然、経費がない場合は所得が大きくなり、納める所得税が多くなります。ですから、事業者は事業に費やした費用を重要視するのです。
ここで忘れてはいけないのが、領収書を保管しておくこと。領収書があって初めて経費として計上できると考えましょう。
出典:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
【基礎知識②】領収書は絶対保管!保存のポイントとは
すでに独立している方はもちろん、これからフリーランスとして活動予定の方は必読です。必ずやってほしいことは、領収書の保管です。
お店やカフェなどで購入した際に発行される領収書を必ずもらい、無くさずに保管しておきましょう。なぜなら、独立準備中も経費として計上ができるのです。事業に関わる活動であれば独立前でも計上できるので、会計ソフトに記帳しておきましょう。
開業前も経費OK!開業費 記帳方法とは
開業費とは、その名の通り、事業を始めるにあたって必要となった費用です。たとえば以下の費用が開業準備費として考えられます。
1、フリーランスとして活動するためのセミナー参加費用
2、パソコンや通信機器の購入費用
3、事業を始めるにあたっての打ち合わせ費用
4、名刺作成費用
5、ホームページ立ち上げの費用
6、広告費用
上記が主に開業費として認められる経費です。ほかにも事業に関わる必要な費用であれば、問題なく経費に計上できます。
一般的には、開業費として判断できる期間は、半年から1年ほどです。開業日がスタートではなく、開業準備の段階からフリーランスとして活動していることを覚えておきましょう。
パソコンや機材は減価償却で処理 10万円以上は要注意
パソコンやカメラといった機材のうち、10万円を超えるものは資産として計上されます。
よって、開業費ではなく「減価償却資産」として処理されるのが原則です。減価償却とは、長期間使用される資産が、時間の経過とともに劣化し、その価値が減少することを想定した会計処理です。機材は時間の経過とともに劣化し、それに伴い価値も減少します。そこで、資産の価値を毎月または毎年、段階的に減額していきます。専門的な用語で言うと、耐用年数が決められており、その年数に応じて価値を下げていくのです。この減価償却資産は計上するだけではなく、固定資産台帳に登録していきます。固定資産台帳は会計ソフトに必ず付属されていますので、それに登録することで自動的に減価償却されていきます。
ただし、開業届と一緒に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出しておくことで、30万円未満の少額減価償却資産を一括経費にすることができます。少額減価償却資産は年間300万円以下であることにも注意してください。
この特例は2026年3月31日まで延長されており、青色申告者であれば有効活用できる制度です。
出典:国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm
【実践編①】フリーランスの経費項目一覧
フリーランスとして活動していく上で、何が経費になるかはしっかり理解しておくことが重要です。では、実際の事例を踏まえて、どのようなものが経費になるのかを確認していきましょう。
勘定科目とは?仕訳の基本ルール
勘定科目とは、経費の内訳を示したものです。ただし、個々の商品名や独自の名前を書いても他者や税務署がその費用が何なのかを判別できません。従って、内訳は勘定科目というある程度決まった名前を使用していきます。
また日々発生する経費は、自分自身で科目ごとに入力していきます。ではどのようなシーンで、どの勘定科目を使えば良いのでしょうか。
物品を購入した場合の勘定科目
パソコンや文房具、さらには雑誌など、さまざまな物品を購入する機会があるでしょう。そこで、物品ごとに勘定科目に振り分けていきます。
たとえば、ペンや定規などの文房具を購入した場合には、「消耗品費」になります。ほかにも雑誌や書籍を購入した場合には、「新聞図書費」という科目名に振り分けられます。
詳細な科目名については以下をご覧ください。
購入した物品名 | 分類 | 勘定科目 |
パソコン | 10万円以上 | 器具・備品(資産) |
パソコン | 10万円未満 | 消耗品費(費用) |
サーバー | 10万円以上 | 器具・備品(資産) |
サーバー | 10万円未満 | 消耗品費(費用) |
ソフトウエア | 10万円以上 | ソフトウエア(資産) |
ソフトウエア | 10万円未満 | 消耗品費(費用) |
文房具 | 事務用の文房具 | 事務用品費(費用) |
ガソリン代 | ― | 車両関連費(費用) |
チラシ代 | 宣伝のため | 広告宣伝費(費用) |
雑誌 | 業界情報誌 | 新聞図書費(費用) |
ポスター | 宣伝のため | 広告宣伝費(費用) |
※青色事業者でないことを想定
表をご覧にいただくとお気づきのとおり、勘定科目は10万円を基準に振り分けられています。備品の場合、特にパソコンやソフトウエアなどに関しては減価償却を行っていくので、固定資産台帳に登録が必須です。
固定資産台帳への登録も忘れずに行っていきましょう。会計ソフトでは自動的に行ってくれるものもありますので、事前に確認することをおすすめします。
出典:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
レンタル品や外注した場合の勘定科目
事業活動の際に、すべてを資産として持つのではなく他社のサービスを利用することもあります。その場合には、資産ではなく費用として計上されていきます。
たとえば、機材や機器をレンタルで借りた場合には、貸借料もしくはリース料として費用計上されていきます。また、事業に関する勉強を目的に、セミナーや研修に参加した場合には、それぞれ採用教育費、あるいは研修費として計上されます。
具体的な費用に関する勘定科目の振り分けは次のとおりです。
購入したサービス |
勘定科目 |
備考 |
ネット広告掲載 |
広告宣伝費 |
|
セミナー受講 |
研修費 |
支払手数料でも可 |
会計ソフト利用料 |
支払手数料 |
通信費、情報処理費でも可(利用実態により判断) |
調査費用 |
支払手数料 |
|
保守料 |
雑費 |
|
機械・機材レンタル |
賃借料 |
|
リース料 |
リース料 |
ファイナンスリースの場合は資産・負債として計上する必要あり |
点検整備料 |
修繕費 |
|
人材派遣料 |
外注費 |
|
研修費用・セミナー代 |
研修費 |
支払手数料でも可能 |
郵便 |
通信費 |
|
出典:freee会計「フリーランス(個人事業主)が支払う税金の種類と節税対策を解説」
https://www.freee.co.jp/kb/kb-kaigyou/freeelance-tax/
上記表の勘定科目は、参考程度にお考えください。絶対にこの勘定科目にしなければいけないという決まりはなく、企業(個人事業主や法人)ごとのルールや、使っている会計ソフトによっても勘定科目が異なるので神経質になる必要はありません。
ただし、個人事業主特有の注意点として:
- 「採用教育費」は法人向けの勘定科目のため、個人事業主では「研修費」や「支払手数料」を使用
- 会計ソフト利用料は実態に応じて「支払手数料」「通信費」「情報処理費」などから選択
- ファイナンスリースの場合、単なる賃借料ではなく資産・負債として計上する必要があります
また、リースに関しては長期で利用する場合には債務として扱うこともあります。ただしその判断はケースバイケースになりますので、お近くの税理士や税務署へお問合せください。
出典:freee会計「フリーランス(個人事業主)が支払う税金の種類と節税対策を解説」
https://www.freee.co.jp/kb/kb-kaigyou/freeelance-tax/
【実践編②】主な経費の勘定科目と仕訳方法
フリーランスの場合には、基本的に経費に計上されるものは共通のものがあります。ここでは、ここでは、多くのフリーランスが実際に経費として扱っている項目を紹介します。
まずは主に計上されるフリーランス 経費 一覧について表を見ていきましょう。
勘定科目 |
内容 |
地代家賃 |
事務所の家賃 |
水道光熱費 |
電気・水道・ガス代など |
広告宣伝費 |
名刺やホームページなど |
支払手数料 |
振り込み手数料やサービス手数料 |
旅費交通費 |
電車、タクシー代など |
新聞図書費 |
書籍や雑誌など |
通信費 |
インターネット、電話代、切手代など |
接待交際費 |
取引先との食事や接待など |
外注工賃 |
外注にかかった費用 |
租税公課 |
収入印紙や自動車税など |
給料賃金 |
従業員に支払った給料 |
諸会費 |
自治体や団体への会費 |
消耗品費 |
文房具費やプリンターのインク代など |
減価償却費 |
パソコンや車などの10万円以上のもの |
出典:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm
上記の中で特に地代家賃や水道光熱費については、自宅を仕事場として利用されているフリーランスも多いはずです。いわゆる自宅兼事務所という形式になりますが、仕事とプライベートについてはしっかり費用を分けなければいけません。
この業務と私的で費用を分ける家事按分についてご紹介していきます。
家事按分を正しく行う方法
地代家賃でご紹介しているとおり、自宅兼事務所でお仕事をしている場合には、家賃や光熱費をプライベートと仕事で分けていく必要があります。
完全に分け切ることは不可能ですので、合理的な基準に基づいて仕事で使用している割合を算出して、仕事部分のみを費用計上していきましょう。
家事按分の合理的な基準例:
- 面積割合:自宅の総面積に対する仕事スペースの面積
- 時間割合:1日24時間のうち仕事で使用している時間
- 使用頻度:週7日のうち仕事で使用している日数
税務署に説明できるよう、図面や使用記録などの根拠資料を保管しておくことをおすすめします。会計ソフトによっては、「家事按分」機能があり自動的に振り分けてくれるものもありますので、気になる方はチェックしてみてください。
出典:弥生株式会社「白色申告で利用できる控除の種類と控除額青色申告との違いも解説」
https://www.freee.co.jp/kb/kb-shiroiroshinkoku/white-return-deduction/
経費補足 領収がないものは出金伝票に記入
自動販売機での飲料購入や、お葬式の香典は領収書が発行されることはありません。その際には出金伝票を利用して、明記しそれを費用計上していきます。また、やむを得ない事情により領収書を無くしてしまった場合には、出金伝票を費用計上できますので活用していきましょう。
出典:マネーフォワード クラウド確定申告「少額減価償却資産の特例が個人事業主にもたらすメリットは?」https://biz.moneyforward.com/tax_return/basic/17171/
【2025年最新】税制改正の重要ポイント
2025年から適用される税制改正により、フリーランスに影響する主要な変更点があります。インボイス制度によりフリーランスの経費の取り扱いにも変化があります。
基礎控除の引き上げ
基礎控除が48万円から58万円に引き上げられました。これにより、合計所得金額が2,350万円以下の個人事業主・フリーランスの税負担が軽減されます。所得が58万円以下であれば所得税は発生しません。
出典:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm
インボイス制度の2割特例
インボイス制度に登録して新たに課税事業者となったフリーランスには、消費税の納税負担を軽減する「2割特例」が適用されます。本来の消費税率(約5%)から約2%に軽減される措置で、2026年まで適用されます。
出典:フリーランス協会「【速報】インボイス登録事業者の納税負担は1.8%!フリーランスなら必ず知っておきたい「2割特例」措置」
https://blog.freelance-jp.org/20221223-16905/
少額減価償却資産の特例延長
30万円未満の資産を一括で経費計上できる特例が2026年3月31日まで延長されています。青色申告者は年間300万円を上限として活用できます。
出典:中小企業庁「少額減価償却資産の特例」
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/tokurei/syougaku_shisan.html
まとめ|経費を正しく理解して節税対策を
フリーランスの経費について理解は深められたでしょうか。
✅ 本記事のポイント総まとめ
📋 経費の基本原則
- 経費は「事業に直接関係する支出」が原則
- 売上から経費を差し引いた金額が所得となり、税金計算の基礎になる
📋 領収書管理のポイント
- 領収書は必ず保管!出金伝票で代替も可能
- 開業前の支出も「開業費」として計上できる
- 保存期間は原則7年間(青色申告の場合)
📋 減価償却のルール
- 10万円以上の物品は減価償却で処理
- 青色申告者は30万円未満まで一括経費計上可能(年間300万円限度)
📋 家事按分の注意点
- 家賃・光熱費などは「フリーランス 家事按分」で分けて管理
- 面積割合、時間割合など合理的な基準で算出
- 根拠資料(図面、使用記録など)を必ず保管
📋 2025年の税制優遇措置
- 基礎控除が48万円→58万円にアップ
- 少額減価償却特例が2026年まで延長
- インボイス制度の2割特例で消費税負担軽減
記帳や申告に不安がある場合は、税理士への相談や、会計ソフトの活用も検討してみてはいかがでしょうか。正しい経費管理と賢い節税対策で、フリーランスとしての事業を成功させていきましょう。